厚岸「東京炉ばた」 女将さんの笑顔に癒やされる。牡蠣の町で楽しむ牡蠣づくし。

厚岸「東京炉ばた」 女将さんの笑顔に癒やされる。牡蠣の町で楽しむ牡蠣づくし。

皆さん、牡蠣はお好きですか。世界の牡蠣の漁獲高順位は、中国、韓国、米国の順で、日本は第4位にランクインしています。各国食べ方はそれぞれですが、いずれも酒の肴として重宝されていることに違いはありません。日本ならば、牡蠣はフライにしてビールと合わせても良いですし、蒸し牡蠣に日本酒も格別です。

真牡蠣は冬のものと言われていますが、実は国内で唯一、北海道の厚岸(あっけし)だけが一年を通じて真牡蠣の食べることができます。夏だって食べたい真牡蠣を求めて、今日は厚岸から町で人気の酒場「東京炉ばた」を尋ねます。

 

厚岸は道東の太平洋に面した漁師町。道東の拠点都市・釧路からJR根室本線(花咲線)に乗車し約50分でアクセス。1両編成の列車が未開の山裾を縫うように走り、ときに蝦夷鹿などの野生動物に遭遇しながら旅情たっぷりの車窓が楽しめます。

 

厚岸駅手前で山間を抜け、太平洋厚岸湾沿岸に抜け出た列車。車窓から島のようにみえるのが厚岸町です。

海につながる湾のようになった厚岸湖を囲むように町があり、もともとは列車から対岸に見える場所が町の中心だったそうですが、鉄道の開通の内陸部側に街が広がったのだそう。

 

東京から鉄道で約1,470キロ、花咲線で唯一の駅員さんがいる途中駅、厚岸。駅前には路線バスのターミナルやホテルなどがあり、旅の拠点となる場所です。

 

駅前通りから真栄町一条通りにかけてが街の中心街。建物ひとつ挟んだ先には海があり、磯の香りと潮の音が聞こえます。

 

夜営業しているお店は意外と多く、結構賑わっているものです。今回ご紹介する「炉ばた東京」もそんな一軒。創業は1996年(平成8年)。近くには役場や漁協、水産加工会社、金融機関などがあり、界隈で働く人が”いつもの店でどう?”という感じで集合されているようです。

 

「いらっしゃい」と、女将さんがあったかい表情で迎えてくれます。調理場に向いた6席ほどのカウンターと畳敷きの小上がりというつくり。二重扉と石油ストーブ、ぬくもりある内装にほっとします。厚岸の夜は冷えますから。

 

店内はあったか。湿度もあって心も体もポカポカ。となれば、飲みたくなるのがここでもビール。キリンビール 北海道千歳工場でつくられた道産の樽生キリンラガー(600円)で、乾杯!

 

さてさてどうしましょう。つぶ刺し、〆さば、いか刺し、一夜干しイカ、柳鰈、ほっけ、塩サバ、身欠きにしん、そして牡蠣各種。地域性のある品書きに、あれもこれも食べたくなります。

 

ここは牡蠣を…と、品書きに夢中になっていたところに、女将さんがお通しを用意してくれました。煮付けと、なんと最初から蒸し牡蠣。生牡蠣が好物ですが、蒸すと味がより引き締まります。落ち着いて飲む「酒の肴」としてぴったり。

 

つぎはやっぱり生牡蠣で!厚岸で生まれ育った「カキえもん」という種類で、こぶりながら旨味がぎゅっと詰まっています。厚岸は海水温が低いことから成長が遅く、それが一年中牡蠣を食べられる理由なのだそう。牡蠣の専門家が酒場にいる厚岸、皆さんが解説してくれます。

 

牡蠣にあわせるお酒は、釧路の「福司」か根室の「北の勝」。どちらも北海道の海産物と相性の良いしゅっとした淡麗のお酒です。

 

女将さん(皆さんからはママと呼ばれています。)てづくりの浅漬などをいただきながら、地域のお話を伺います。旅先の酒場はこういう時間もまた最高に楽しいものです。

 

常連さんおすすめのレモンサワー(550円)。カキフライにあわせてチョイス。

 

地元の人が絶賛する東京炉ばたのカキフライ。大粒の牡蠣を選んでいるそうで、この通りぷっくりとしています。

 

“サク”、それからじんわりと牡蠣の旨味が溶けてきます。揚げ具合が絶妙で、衣の中は驚くほど”たぷたぷ”としています。

 

アイヌ語で「アッケケシ」は、牡蠣のとれる場所を意味するそうで、それが厚岸の由来になったという説もあります。名産品ではあるものの、観光用だけでなく、こうして地域の飲食店で当たり前のように食べられているのが印象的でした。

あさりや蝦夷ばふんうに、ほっきに鮭と他にも海産物が豊富な厚岸。魚介類好きの方におすすめの漁師町です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ ※外出自粛要請以前に取材)

 

東京炉ばた
0153-52-0175
北海道厚岸郡厚岸町真栄2-139
18:00~23:00(月定休)
予算3,000円