なんだか朝から魚が食べたくなって、今日は湘南か房総かと悩んでいたときに、ふと思い出したお店がありました。向かった先は、水郷の地、小見川(千葉県)。
利根川下流域に位置する小見川は、雄大な利根川本流に加え、霞ヶ浦や北浦と太平洋を結ぶ常陸利根川など多くの河川がある水の町です。
ここに「魚平」という、それはそれは盛り付けが豪快な大衆食堂があります。食堂ですからお昼からやっていますし、「魚平」は日本酒の品揃えもよく、いわゆる”飲める食堂”です。『早めに東京を発てば、お昼すぎには小見川につける』ということで、今日は小見川で魚三昧です。
東京駅からJR総武快速線とJR成田線を乗り継いで約2時間の旅。JR成田線は昔ながらの風情が残るローカル線です。
1時間に1本電車がやってくる他は、鳥のさえずりが聞こえる静かな駅です。
ピーナツ饅頭で知られる老舗和菓子店があるほか、昭和風情そのままのちょっとした商店街などがある小見川駅前。時間の流れがゆっくりしているように感じます。
明治4年まで小見川藩があったこの町は歴史があり、商店街には老舗の暖簾が多いです。
やってきました、魚平。午前11時から夜まで通しで営業しているため、多少旅程の都合でランチタイムを外してしまっても大丈夫。土日も営業。地方の町では通し営業しているお店がなく、昼酒ができず途方に暮れることも多いですが、ここは安心です。
向かって左側が鮮魚店。右側が食堂となっています。鮮魚店に併設された食堂というわけで、それは魚も一層期待できるというものです。
食堂で提供する刺身の魚種も多く、何を食べようか目移りしてしまいます。
外観は今風にリニューアルされていますが、店内の様子をみればここが老舗の食堂ということがよくわかります。駅前旅館のような板張り廊下に、お座敷がいくつも並んでいます。
長旅で喉がかわきました。乾いた喉には美味しいビールを。ということで、瓶ビール(アサヒスーパードライ大ビン650円)をもらって、さあ乾杯。
銚子も近いですし、お通しに鰯がでてくるというのは土地柄を感じます。
樽生(中500円)、ビンともにアサヒスーパードライ、酎ハイ(450円から)、普通酒(1合350円)など食堂というより飲み屋の顔ぶれが揃っています。
日本酒の品揃えが豊富で、酒販店さんの提案も多いのだそう。埼玉・羽生の酒「花陽浴」など結構珍しい銘柄があるのが楽しいです。場所柄、自家用車で訪ねる人も多いようですが、ここは飲まないともったいないです。
定食や海鮮丼でごはんを少なめにしておつまみにするもよし、単品も刺身、焼き物(特大さば焼750円など)、揚げ物(白海老唐揚800円など)、煮物(メバル900円など)と一通り揃っています。
とくにお刺身は値段も手頃です。二人、三人で飲みに来たら、メインにお刺身を一皿追加して色々楽しみたいものです。
一人でしたら、ちょっと値ははりますが、特大岩牡蠣(1,000円程度)はいかがでしょう。一人飲みの贅沢、シェアをせずに独り占め。一口では食べ切れないほどの大きさで、それはもう『うんうん!』とうなずくしかない美味しさです。
大洗から鹿島、銚子にかけては天然岩牡蠣の産地で、手のひらをこえる大きさの牡蠣に出会うことができます。
飲み比べセットは自由に選べるほか、お店の方におまかせで珍しい銘柄を出してもらうことも可能です。加茂錦(新潟県 加茂)、尾瀬の雪どけ(群馬県 館林)、族(和歌山県 紀の川)の3種。とくに気になる尾瀬の雪どけは、「純米大吟醸生酒 桃色にごり」というお酒。酵母がつくる色と、桃色になる米、麹でつくることで桃色になっているとのこと。
さてさて、お待たせしました。ボリュームありの海鮮丼(1,600円)。ごはんは少なめにしたのに、それがまったくわからないほどに山盛りです。撮影用?いえいえ、皆さんこの大きさを食べています。
まぐろ、かつお、ひらまさ、コショウダイ、イカなどが、二重、三重に盛り付けられています。
そのままではご飯にたどり着くまで大変ということもあり、取皿が一緒に出てきます。角がピンとした刺身は鮮度がよく、山ほどあっても箸が進みます。
ビール、日本酒をもらって、お刺身を楽しむ昼下がり。以前、一度魚平で飲んだことがあり、そのときからここの盛りつけがよいという話が記憶に残っていました。今回改めて、その豪快さを体験。相変わらず凄いです。
鮮魚店が営む食堂へ、ご近所へお出かけの際は立ち寄られてみてはいかがでしょう。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
魚平食堂
0478-82-2137
千葉県香取市小見川1275-1
11:00~20:30(水定休)
予算3,500円