フィラデルフィアには創業160年を迎えた歴史あるパブ「McGillin’s Olde Ale House」があります。1860年の創業で、この年、エイブラハム・リンカーンが大統領に選ばれています。
独立戦争の勝利と、アメリカ国民の自由を表す合衆国を象徴するアイコンのひとつ「リバティ・ベル(自由の鐘)」が店の近くにあり、アメリカの歴史を見て感じて”飲める”場所です。
今回は、禁酒法のときを超えて、現在まで続いてきた伝統的なパブの様子をご紹介します。
フィラデルフィアは、ワシントンDC、ニューヨークの2大都市のほぼ中間に位置し、両都市からのアクセスはアムトラック(全米鉄道旅客公社)北東回廊線が便利。ニューヨークからおよそ1時間30分でフィラデルフィア駅に到着。大都市が連なるこの一帯はアメリカで最も列車の本数が多く、日帰りで気軽に訪ねることができます。
鉄道黄金時代の名残を残す荘厳なつくりの駅舎。まるで博物館のようです。
駅はダウンタウンに隣接しており、バスや徒歩で簡単に自由の鐘や独立記念館へ行くことが可能。フィラデルフィアを舞台にした人気映画「ロッキー」で主人公が駆け上がったフィラデルフィア美術館の正面階段も近くにあります。
ニューヨークやワシントンDCと比べると落ち着いた雰囲気で、のんびりと散策が楽しめます。
軽く観光をしたあとは、そろそろビール時間。「マクソリーズ・オールド・エール・ハウス」は、独立記念館近くの小さなレンガ造りの建物です。取材時はハロウィン前日だったため蜘蛛の巣がはっています。
外観からは想像がつかないほど、店内は奥に長く、日中にも関わらず店内は暗くムーディーな印象です。年季のはいった天井やカウンターのディープカラーが重たさをより引き立てています。
時刻は正午過ぎ。カウンターにはすでに常連さんの姿が。深夜2時まで通しで営業しており、時間帯によっていろんな常連さんがいるわよ、とウェイトレスさん。親子3代で通う人は、カウンターはほぼ指定席状態なのだとか。
さてさて、店名にある「エール」の通り、ここはビアパブです。30種類ものドラフトビールが用意されていて、そのほとんどがペンシルバニア州東部の醸造所によるもの。どれも魅力的なのですが、ここでは一杯目なら「McGillin’s 1860 IPA」を飲まなくてはなりません。
創業時から続く店名を冠したIPAで、複数のホップを秘密の配合でつくる伝統の味だそう。では乾杯!
モルトが効いた深い味わいはちびりちびりと飲むのにぴったりです。
おつまみは、海に近いこともあってムール貝をつかったケープメイシーフードシチュー(12.29ドル)や、メリーランドクラブケーキ(9.99ドル)などの海鮮料理が充実しています。
選んだ料理は、トラウトサーモンとチリビーンズの大皿料理。デラウエア川ではマス漁が盛んで、フィリーの家庭の味のひとつなのだそう。
バターが効いていてコクがあり、日本人の味覚にもあう料理といえます。
バケットがのっていますが、ターメリックライスが敷き詰められているのも特長です。これを地元のお父さんたちはブランチとして頬張りながら、早いピッチで次々とお酒を空けていきます。
甘さ控えめ、ランカスターミルクスタウト。ローストした麦芽の香りはおつまみ要らず。まろやかな味が心地よく、1パイントもするすると飲んでしまいます。※お酒は適量で。
街の中心で、いつでも飲めるアットホームな空間。伝統だけでなく、いまこの時間もフィリーの皆さんが楽しく乾杯している、生きた名所として非常に魅力的でした。
フィラデルフィアを訪れた際は、歴史散歩の合間に立ち寄られてみては。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
McGillin’s Olde Ale House
+1 215-735-5562
1310 Drury St, Philadelphia, PA 19107 アメリカ合衆国
11:00~26:00(基本無休)
予算$25
※2020年1月26日 店名の誤記を修正しました。