神奈川県には何軒か「満州焼」という串焼きを提供するお店があります。その名から想像される通り、どのお店も戦後すぐから昭和中期に開業しています。
JR桜木町駅近く、横浜市を代表する巨大飲み屋街「野毛」エリアに店を構えて70余年になる老舗「庄兵衛」の看板料理も「満州焼」です。
桜木町寄りの本店と、同じく野毛界隈で京急電鉄日ノ出町駅近くにも支店があります。どちらも老舗の風格たっぷり。職人さんとベテランお姉さんがテキパキと切り盛りされるパリっとした酒場です。今回は本店の暖簾をくぐります。
焼き台を中心に広く取られた厨房に向けL字で囲んだカウンターと、4人テーブルが数卓という配置。厨房はピカピカ。早い時間から常連さんで満席近い賑わいになる人気店です。おすすめの席はやはりカウンター。長いカウンターに添わせて、こちらも長く配されたネタケースにずらりと並ぶ食材を眺めて、どれを食べようかと悩む時間が楽しいです。
老舗の酒場に、昔ながらの加熱処理ビールが似合います。昭和40年代の味わいでつくるキリンの定番ブランド唯一の加熱処理ビール(生ビールではない)であるキリンクラシックラガー(大びん640円)。それでは乾杯!
日本酒は玉乃光オンリーだったり、酎ハイ・サワー類が渋い顔ぶれなど、飲み物メニューに安定感たっぷり。ビールがキリン中心ながら、酎ハイ類のベース焼酎には合同酒精の甲類千石というのが渋い!酎ハイ類でのおすすめは緑茶割りで、濃い目のにごり抹茶風のお茶が使われています。
お酒同様、おつまみも昔から変わらない顔ぶれです。名物の満州焼(140円)を筆頭に、串は130円から。豚、鶏、野菜。その日の分だけを用意していて、打ち立てフレッシュな串は、遅い時間になると品切多数となります。海鮮でホタテと大海老、そして11月から3月にかけては牡蠣串も登場し、これもファンが多い一品です。
串もの以外は、お新香(350円)、やっこ(300円)、もろキュウ(300円)、とまと(~400円)、馬刺し(700円)の定番5種類のみ。串が焼けるのに少し時間がかかります。お通しはありませんから、前菜としてどれかひとつ選びたいところ。
おまちどうさま。満州焼ととり肉みそ焼です。串の味噌焼きはいまでこそ、多くのやきとん屋で食べることができますが、野毛まで足を伸ばしてでも食べたくなるのが、庄兵衛の満州焼です。味噌はそれほど強くなく、甘さとコクが深いのが特長。柔らかくジューシーで、噛むほどに染み出す旨味は、お酒を猛烈に誘います。
玉乃光(京都・伏見)の紙パック入「純米吟醸冷蔵酒」は、とっても美味しいお酒。香り高くなめらかな味わいです。
パック酒だからと侮ってはいけません。低温貯蔵しているお酒を低温のままパック詰めし、店頭においても冷蔵ケースで保管しているのがこだわりです。同蔵は、全国でも珍しい純米吟醸蔵です。
昔ながらの渋さを保つ良いお店、庄兵衛。野毛でやきとり・やきとんを食べさせてくれるお店は数多ありますが、少人数で落ち着いてつまみたいときには庄兵衛がおすすめです。
ごちそうさま。
市民酒場について
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
庄兵衛 本店
045-231-7117
神奈川県横浜市中区野毛町1-9
16:30~22:00(日祝定休)※串が売り切れると19時でも暖簾が下がります。
予算2,300円