鶴見市場「正木屋」 京急をBGMにして、老舗の味に舌鼓を打つ。 

鶴見市場「正木屋」 京急をBGMにして、老舗の味に舌鼓を打つ。 

2019年10月24日

京急電鉄の沿線には名酒場がたくさん。普通しか停車しない駅の周辺だって、一軒くらいは創業から半世紀を越えている酒場があるくらい。京急は快特でびゅーんと横浜・横須賀を目指すだけでなく、ぜひ途中の町を訪ね、飲み歩いてみることをおすすめします。

京急川崎駅から2駅。鶴見市場駅の周辺には昔懐かしい雰囲気の商店街が広がり、食堂、町中華、そして大衆酒場の暖簾がたなびいています。

町を代表する老舗酒場といえば「大衆酒席正木屋」でしょう。1953年創業、三代目が守る老舗酒場です。

お店の裏は京急電鉄の線路があり、頻繁に列車が通過していきます。踏切警報機と電車の走行音は、昭和の記憶を呼び起こします。そんな町と鉄道の音をBGMにして、今宵は一杯ひっかけます。

老舗酒場ながら、店舗はビルになっており、一階が厨房と通常の客席で、二階は宴会が可能な広間という構造です。割烹のような店構えなのも特長です。

テーブル席のみの店内。大きく清潔感ある厨房は、客席との間に開口部があり、その様子を眺めつつ飲むことができます。掲げられた短冊や黒板メニューが整列していて、実にぴしっとした感じ。これぞ大衆割烹というつくりです。

同じ京急沿線の横浜市鶴見区には、横浜生まれのビール会社、キリンビールの横浜工場があります。その関係もあってか、この界隈はキリンが多く、こちらも長年キリン一筋と聞きます。樽生キリン一番搾り(490円・以下税別)で乾杯!

生ビールは一番搾り、瓶ビールはキリンクラシックラガー(大瓶550円)を置いています。日本酒は定番に大関、その他、全国の地酒が黒板メニューとして入れ替わりながら提供されています。

チューハイ類は330円。

お通しから魚料理が出てくるお店は期待が高まります。今日はいわしのうま煮。

鶴見市場の地名の由来となった市場はいまはありませんが、それでも市場は京急沿線。市場に並ぶ旬の魚介類は、刺身や天ぷらで提供されています。500円~1,000円程度の手頃な価格なのも嬉しいところ。

黒板メニューは今日のイチオシ。新さんま刺し、青やぎ、ほっき貝。定番メニューでも相当の品揃えなのに、黒板メニューでさらに選択肢が増えています。

周囲に貼られた短冊も見逃せません。

定番のやきとり、煮込みは創業始めの頃からのロングセラーと聞きます。砂肝、ねぎ肉、カシラなど、鶏と豚モツの串は一本なんと80円から。

何をおつまみにするか相当に悩む正木屋。今回は「地ダコ」の文字に誘われてたこ刺し(800円)を。鶴見は現役漁師もいる地域で、穴子やマダコが昔からの名物。

ぷりっぷりの食感と、爽やかな磯の香りがお酒を誘います。

玉露ハイ(330円)は、業務用の玉露茶ではなくお店でだしたお茶をつかったもの。しっかりとした甘さですが、その奥には濃い目の甲類焼酎が隠れています。

箸休めにセロリ(200円)。こういう小皿がとてもリーズナブルで、ついつい一皿、二皿多めに頼んで長居したくなります。

メインディッシュは、穴子の天ぷら(900円)。きれいなエッジのある衣が素敵です。メインの穴子を一匹と、かぼちゃ、大葉などを盛り合わさっています。

身の分厚い穴子より、天ぷらはこのくらい締まったほうが好きなのですが、読者の方はいかがでしょう。揚げ具合が抜群でサクサクとした衣は、天つゆにつけてもパリっとしています。

売り切れごとに新しい銘柄がでてくるお店の地酒ラインナップ。1合650円ほどで、常に数種から選べます。秋田の蔵元「天寿酒造」の天寿ひやおろし。秋田県産美山錦をつかった純米酒です。旨口で余韻は穏やか。天ぷらの油分をすっと包んでくれるようなお酒です。

せっかくですから、チューハイ(330円)も。チューハイタンブラーいっぱいに、氷控えめでつくられていて、たっぷり飲みごたえがあります。

赤味噌でつくる濃い口のつみれ汁(350円)。いわしのつみれから旨味が溶け出して、お椀そのものが液体おつまみのよう。どうしましょう、もう一杯お酒を飲みたくなってきました。

「大衆酒席正木屋」の名の通り、日常的に飲める価格で、しっかり酒の席を楽しませてくれる充実したお酒や料理たち。お店の女将さんや皆さんの御人柄が感じられる優しいムードの店内で、じっくりお酒を楽しむひととき。とてもいい時間になりました

ごちそうさま。

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市民酒場について

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

正木屋
045-511-0573
神奈川県横浜市鶴見区市場大和町3-17
16:00~23:00(日定休)
予算3,000円