酒田「七つ半」 ローカルな酒場のカウンターで楽しむ土地の肴。

酒田「七つ半」 ローカルな酒場のカウンターで楽しむ土地の肴。

2019年10月25日

酒田市は、山形県で水揚げされる魚介類の3割以上を誇る県内有数の港町です。とくにイカとタイ類の漁獲高は全国に誇る量で、酒田の居酒屋の名物になっています。

太平洋側ではあまり出会わない魚や料理も豊富で、何度訪ねても素敵な体験をしていす。今回ご紹介する居酒屋は、そんな酒田の海の幸を十二分に楽しませてくれる老舗「七つ半」です。庄内の海の今をそのまま反映したような食材が揃う店として、地元の飲兵衛さんたちが贔屓にしているお店です。

冬の酒田は雪深い。日本海から吹く風は積もった雪を巻き上げ、体に容赦なくあたってきます。そんな環境でハシゴするから、より一層、暖簾の向こう側を天国に想うものです。

大将と店を手伝う方の2名で切り盛りする小さなお店。カウンターと奥に小さな座敷という配置で、大将の前となるカウンターは砂かぶりの特等席。ネタケースに並ぶタイ、ヒラメ、ねざし鰈、ソイ、メバルなどピチピチの魚が並びます。地魚にこだわりるため、シケの日は品数がぐんと減るそうです。※取材の日がまさにシケ。

フードに積もった粉雪を払い落として、急ぎ暖簾をくぐり店内へ。カウンターに数席の余裕はあるものの、座敷まで満員の店内。外は人一人歩いていないような静まり返った世界なのに、このギャップ。

加湿されポカポカの店内に入ったならば、ぴんと張った緊張をほぐすビールが飲みたい。ちょっと贅沢なビール(ヱビス500円・以下税別)で乾杯!

ビールは長年ヱビスだそう。瓶ビールでアサヒとキリンも取り扱い。注目すべきところは、やはり地元の「月山ワイン」でしょう。数人で飲むならばぜひ1本頼みたいです。

裏面は、驚くほど充実した日本酒メニュー。店名を冠した七つ半純米や、地元酒田や山形県の日本酒が充実しています。定番酒は酒田を代表する酒蔵のひとつ東北銘醸の「初孫」か、新潟の白梅です。

あいにくのシケの日に取材をしてしまいましたが、それでも、そい、やりいか、真ふぐ、たら白子など、魅力的な地ものが並ぶお品書き。冬の酒田郷土料理の代名詞、どんから汁もあります。タラを身、アラ、内蔵も全部入れた味噌汁です。

お通しから飲兵衛心を擽る内容です。刺身にたらこをまぶした小鉢料理。いいじゃないです、とっても。

ねぎとろ山かけ(450円)。日本海でも近海本マグロはとれるのだと、お隣さん。

天ぷらが美味しいという話で、おすすめから行者にんにく(300円)を揚げてもらいました。ちなみに、天ぷらの項目にある「きもど」とは、あさつきのこと。かき揚げにしていただきます。

たら白子の天ぷら(810円)。秋から冬にかけてが旬の白子。そのまま揚げずに、ひとつは大葉にくるんで、もうひとつは海苔で巻いて揚げています。天つゆにはつけず、塩だけでいただきます。白子の味が驚くほどに濃厚でコク深い味わいです。

サクサクのころもと、とろっと旨味ある白子天には燗酒(初孫)をあわせたい。雪で静まりかえった酒田の町中で、ここはポカポカでまるで天国です。きゅっと燗酒を口に含みます。

酒田のいい店「七つ半」。地元のお父さんたちが土地の言葉でわいわい笑って過ごしているお店は、旅情を感じるにもぴったり。このあともすっかり長居してしまい、お店の皆さんと魚談義で盛り上がる夜でした。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

七ッ半
0234-22-8101
山形県酒田市中町3-7-9
17:00~(日定休)
予算3,000円