松本「太助」 土地の味に出会う旅。信州うまいものづくし。

松本「太助」 土地の味に出会う旅。信州うまいものづくし。

2019年8月11日

松本の繁華街は、JR松本駅と国宝・松本城の間にあります。大手や中央といった地名が並び、城下町の風格漂う立派な街並みが広がっています。商業施設に居酒屋、多くのホテルや企業が市中心部に集中していて、旅や出張で立ち寄るような場所が徒歩圏内。コンパクトな松本は街歩きが楽しめます。

そしてもうひとつ、松本の繁華街は老舗の酒場が非常に多く、新しく開いた若い人の飲み屋も個性豊かで魅力的。ぜひはしご酒をお楽しみください。

カウンターのある大衆酒場で地元の味を楽しみたい。そんなときは「太助」はいかがでしょう。筆者も仕事関係の人とも飲みに行く定番処です。

黄昏の松本駅。家路を急ぐ地元の方に逆流して、目指すは中心街。

駅から徒歩3分ほど。渋い店構えの「太助」は、なかなかの重力を感じます。ふと気づけば吸い込まれていて暖簾の内側です。

カウンターに今日のおすすめ、そして信州の地酒が並ぶ短冊メニューという素敵な空間。若いスタッフが多くて、渋くとも活気があります。老若男女、地元の人々に評判の店で、噂を聞きつけ出張で訪れた方もやってくる人気の酒場。

アルプス正宗か、岩波か、やっぱり登山家に人気の大雪渓か。でもその前に、まずはビールで喉と心を居酒屋モードに切り替えて。樽生一番搾り(600円)で乾杯!

瓶ビール(大瓶800円)はキリンラガーとアサヒスーパードライが選べます。酎ハイ、焼酎もいろいろありますが、太助では、やはり信州の日本酒を頼みたい。常時40種類ほど、県下のお酒が揃っています。

そんな地酒にあわせるおつまみも、地のものがよりどりみどり。これだけ里、山、沢の幸が揃えば品書きを見ているだけでも楽しくなります。鹿肉料理もあって、幅広い内容です。

加えてホワイトボードには、数量限定のお酒や料理が売り切れ御免で紹介されています。

キノコおろし(370円)。椎茸ほどに肉厚なしめじや、立派ななめこ、舞茸などを甘めのつゆでまとめたもの。素朴な味にほっとします。

「トロリとろける美味さ」がキャッチコピー。安曇野市・明科にある水産試験場が開発した「信州サーモン」(刺身680円)は、いま長野県内の多くの居酒屋で提供されているブランドサーモンです。ニジマスとブラウントラウトをかけあわせた新品種で、脂のノリが段違い。

野沢菜のお新香(350円)はたっぷり盛られています。きのこ、サーモン、野沢菜と揃ったら、そろそろ日本酒がほしい頃合い。

大信州酒造(長野・松本)の代表銘柄「大信州洗練辛口 本醸造」。北アルプスの伏流水で仕込み、酒米もまた県内うまれの酒造好適米「ひとごこち」を使った、まさにオール信州の銘酒です。香り華やかで軽快なニュアンス。少し冷やしたくらいで飲むとすっと馴染んでいくような印象を受けます。

山間部や渓谷で暮らしてきた信州は、物流手段として馬が活躍し、同時に馬肉の食文化がありました。その名残は、いまもこうして続いています。馬肉料理の専門店だけでなく居酒屋でも定番として置いてあることが多いです。

太助では分厚くとろとろの馬刺し霜降り(980円)や、定番のタテガミ刺しだけでなく、煮込みも馬モツが使われています。

あわせるお酒は池田町の造り酒屋「福源酒造」の定番、安曇野「上撰」。甘口で厚みのある味わいです。

人気の長芋ステーキ(580円)はボリューム満点。粘度が高く、スプーンで持ち上げると、グラタンのチーズのようにとろっと伸びてきます。

山芋は磯辺揚げ(550円)でも提供されています。もともと繊細な味の山芋ですが、太助のものはたいへん濃厚でコクがあります。

太助の山賊焼はにんにくが控えめで生姜を効かせた軽い味、山賊焼(780円)。

松本のソウルフードで、市内のほとんどの居酒屋でみかけます。鶏モモ肉をにんにくや生姜といっしょに醤油味のタレに漬けて少しねかせ、片栗粉をまぶして揚げたもの。

人気の大衆酒場「太助」へ、松本の土地の味を求めて訪ねてみてはいかがでしょう。駅に近いため、帰りの特急列車までの小一時間にも利用可能。使い勝手の良さもおすすめの理由です。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

太助
0263-36-4976
長野県松本市中央1-4-4
17:00~24:00(日祝定休)
予算4,000円