1868年の開港以来、西洋の文化が流れ込んだハイカラな街、神戸。さらに近代に入りアジア各地のテイストも入り交じるようになり、横浜と並び、日本有数の多国籍タウンとなりました。食事やお酒にもそんな背景が色濃く反映され、他の地域とは異なる独特な雰囲気の酒場も多いです。
終戦直後から営業しているJR東海道線(JR神戸線)の高架下の店「丸玉食堂」もそんな神戸らしい食のスポットです。台湾料理を出す中華食堂で、ラーメンや焼きそばを食べる人だけでなく、明るい時間からビールや紹興酒を楽しむ常連さんの姿も多くみられます。
台湾の食堂で飲んだことがある人には、この雰囲気がものすごく現地っぽく見えるはず。タイルの壁に蛍光灯の光、打ちっぱなしの床。東南アジアの大衆食堂の雰囲気そのものです。カウンターが長く、一人飲みには丁度いいです。口開けと同時に入りましたが、同じタイミングで入った地元のご隠居さん風のお父さんは、早速紹興酒を飲みだしました。
まずは、なにはともあれビールから。樽生はキリン(中ジョッキ500円)、瓶(中瓶450円)はアサヒスーパードライとキリンラガーから選べます。
トプトプと音を立て、勢いよくビアタンを満たし、さあ乾杯!
チューハイ(樽詰キリンレモンハイ・400円)、ハイボール(400円)、焼酎に日本酒(白鶴)と種類は多く、まるで「中華屋ですが、どうぞしっかりお飲みください」と書いてあるような安心感。もちろん紹興酒もあり、600mlのボトル(1,500円)も飲みきりで用意されています。
料理はこれだけ。中華といえば品数が多いものですが、麺飯以外のおつまみのほうが充実しています。胃袋やタン、きも、心ぞうなどのモツ皿や揚げ物も特徴的です。
台湾料理といえば、やはり腸詰め(600円)をおつまみに一献やらないと。豚肉サラミ風と書かれていますが、台湾の「香腸」そのものです。ウーシャンフェンの香りがたまりません。
甘辛の味噌タレをちょんとつけていただきます。ねっとり濃厚な豚の脂と旨味が溶けるように広がり、余韻が強烈にビールを誘います。
いや、ここは紹興酒かな?めずらしいTTL(台湾)ブランドの紹興酒を扱っていますね。180mlのほうは、キリングループの永昌源が販売する古越龍山です。
炭水化物ではあまり飲まないのですが、ここのローメン(550円)はお酒のおつまみにもぴったり。あんかけ卵とじ麺という解説の通り、深めのお皿にたっぷりと餡がかかっていて、濃厚な中華スープ風の味がたまりません。
予め野菜と一緒に炒めたような平麺が餡の下に隠れています。のどごしよくスルスルと食べられ、見た目通りのちょい濃い味がお酒のお供としてちょうどいいです。
こちらは豚足(600円)。とろっとろに煮込まれ、よく見る豚足のカタチはもうしていません。塩味とちょっとした香辛料が入っているようですが、とてもシンプルな味。豚のケモノっぽさがあるので好みがわかれそうですが、アジアの食堂飯が好きな方にはぜひ。
こちらは生腸。もちもちした食感と、思いの外薄味にびっくり。特製のタレをつけて噛んでいると旨味がでてきて、それがまた紹興酒によく合います。
飲んで満足。ローメンで満腹に。
ふらふらとお外に出てみれば美しいハーバービュー。神戸は山、飲み屋街、海がぎゅっと凝縮しているので、飲んで食べて観光して、一日がとっても充実します。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
丸玉食堂
078-331-5385
兵庫県神戸市中央区元町高架通1-124
11:00~20:50(月定休)
予算1,800円