南砂町「やきとり大一」 街一番と評判高い焼鳥に、独自配合のレモンハイ

南砂町「やきとり大一」 街一番と評判高い焼鳥に、独自配合のレモンハイ

地下鉄が網羅し進化を続ける東京・下町には、実はまだまだ昭和の町並みを残す独立型の商店街が存在します。砂町銀座が知られていますが、その周辺にも近隣に暮らす人たちとともに歩むひっそりとした商店は多い。スピードの早い都心に疲れたら、そんな商店街をゆっくり散策してみるのもおもしろいです。

地下鉄東西線の南砂町駅から徒歩20分ほど北に位置しする東砂・末広通り商店街。八百屋や魚屋が並ぶ中に大衆酒場が点在し、鉄道アクセスとは関係なく大勢のお客さんで賑わっています。

この末広通りでおよそ半世紀愛されてるやきとり・うなぎの店「大一」がおすすめ。夕方になると炭火で焦げる醤油と味醂の香りが漂い、思わず吸い込まれてしまいます。

 

ご夫婦で切り盛りされていたお店ですが、現在は女将さんがご主人の暖簾をお一人で守っています。

5人がけのカウンターとちょっとしたテーブル席が2卓のコンパクトな造り。そこを目指して5時頃の開店にあわせて多くの常連さんが集まってきます。

料理は煮込み、焼鳥、そして鰻の3種類。小鉢が少しありますが、”焼鳥摘んでちゃちゃっと飲んでいく”そんなお店です。

 

店の看板にあるサッポロビールのロゴは昭和の頃のデザイン。昔からずっとサッポロビールで、いまも古典的な樽冷式の冷蔵ディスペンサーから黒ラベルが注がれます。開栓一杯目、老舗の店に星が美しい。では乾杯!

 

白味噌ベースで生姜・にんにくが効いた煮込み。これが素晴らしく美味しい。クサミなく、コクが強い。しょっぱくして誤魔化さずに丁寧に作るのが秘訣だそうです。

 

持ち帰りも店内の飲み客も、そして焼き台もすべて一人でこなしている女将さん。持ち帰りの予約も次々飛び込んできて大忙し。それでも、「なんてことないわよ」という感じでチャキチャキと切り盛りされる様子は、見ていてとても心地良い。ガス台ではなく、大将の頃からのこだわりの炭火で丁寧に焼き上げていきます。

 

大将は鰻の修行をした職人で、店内で鰻を捌いて新鮮な蒲焼きを下町価格で提供していたそう。今も引き継いだ女将さんは焼鳥、もつ焼きの下ごしらえ・串打ちを昼間からされています。

一本130円(2本単位)。大ぶりで新鮮。とろみのあるタレもあと引く美味しさです。

銭湯帰りに立ち寄ったと話すお隣のご隠居さんは、この界隈で焼鳥なら大一が一番だよ、と太鼓判。

 

下町といえば店ごとに調合が異なる酎ハイも魅力。こちらのレモンハイは、名前こそレモンハイでも、味はかなり独特です。生姜のような風味があり、やや濁っています。これがクセになってクイクイと飲めてしまうのですが、焼酎が濃いから気をつけて。

 

鶏だけでなくタン、ハツ、シロなどの豚モツもあり、こちらも大ぶりで肉汁あふれるもの。昔からの職工さんや近隣のご隠居さんに加え、テイクアウトで買っていく若い夫婦の姿も多く、なかなかの賑わいです。

 

美味しい焼鳥、強くて優しい女将さん、そしてそれを求めて集まる常連さん。居心地がよくて、気がつけば4杯目。

 

いい感じに出来上がって、お会計。二千円ちょっとで、美味しく楽しい時間でした。地元密着のよき酒場。商店街めぐりの一献、いかがでしょうか。

帰りは都バスに乗って、もう一軒どこかの街に梯子しようかな。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

やきとり大一
03-3644-5315
東京都江東区東砂5-4-16
17:00~21:00(水定休)
予算2,000円