水戸「てんまさ」この街の大衆酒場の代名詞。昼から郷土料理で一献傾けよう

水戸「てんまさ」この街の大衆酒場の代名詞。昼から郷土料理で一献傾けよう

2017年10月22日

今日は茨城から、水戸駅前の大衆酒場「てんまさ」をご紹介します。創業から55年、お昼から通しで営業する老舗の昼酒処です。

てんまさに入る前に、ちょっとだけ水戸の飲み屋街話を。

東京から水戸までは、JR常磐線の特急ひたちで約70分。遠く思えていても実は日帰りで「ちょっとあんこう食べに行く」と言える街です。名物は茨城を代表する郷土の食材「あんこう」の他にも、山の幸、海の幸、里の幸はいずれも他の地方都市に負けない顔ぶれです。

歴史のある街には名酒場あり。水戸の御老公のお膝元は言うまでもなく歴史あり。といっても、蕎麦や納豆、干し芋などややおとなしい名物ですが。

JR水戸駅前のペデストリアンデッキ。水戸黄門様と助さん格さんが見守る駅前から真正面のビルに「てんまさ」はあります。

水戸の繁華街も地方都市のそれと同じように駅からやや離れていて、バスで数分の距離。大工町と呼ばれるあたりが飲み屋街でその昔は花街だった場所。水戸駅を発着する多くのバスが大工町を経由しますので、数分間隔で次々発着するバスでストレスなく移動可能。時間があれば大工町まで飲みに行ってみてください。古き良き北関東の夜の街が残っています。

さて「てんまさ」に戻ります。駅に近い方の二階の店舗と、その少し先にある地階の店舗のふたつがあり、地階のほうが本店です。最初に飲むならば、やはり地階の本店がおすすめ。北国に多い地下飲食店街の中にあり、「てんまさ」の他にも渋くて味のある酒場が入っています。

あんこう・魚貝類の文字に誘われます。午前11時から酒場メニューが勢揃い。昼からあんこう鍋、いっちゃう?(笑)

外観からは想像できないほど店内は広く、そしていい具合にレトロ。長年飲まれてきた酒場には、魂がやどっているように思うのは私だけですか。霊的な意味でなくて、酒場の付喪神的な。

早い時間から飲んでいるご隠居さんたちと軽く会釈して、お姉さんに勧められるままテーブル席へ。カウンターはなく大広間とテーブル席だけなのですが、広い店内なので一人飲みをテーブルで楽しんでも違和感はありません。

お通しから穴子の卵巻きとおろし大根たらこ添えが登場。もうこれで中びんはあっという間じゃない。それでは、アサヒスーパードライをもらって、トトトと注いで乾杯です。

ビールはアサヒ専売。茨城県守谷市にアサヒ茨城工場があり、ここのドライも茨城生まれ。中びんが450円、樽生も中ジョッキ450円。生ビールの品質がよいのでそちらもおすすめ。酎ハイ類は350円から。

日替わりのメニューを御覧ください。お昼からパワフル過ぎる魚介料理の数々。大箱で回転が良いからできる品揃えです。水戸の市場にあわせて海鮮類は日々変化するそう。

きんき(水戸ではアカジと呼びます)が1700円。2~3人前と書かれているということは、かなりのボリュームとみた。いいなー、魚喰いなので家の近所にこういうお店がほしいです。

これぞ水戸!あんこうと納豆。あんこうのフルコースは今の時期がまさに食べごろ。お昼ごはんならば「ねばり丼」など納豆づくしが楽しそう。納豆御膳という言葉、なかなかインパクトがあります。

料理は100種類ほど。刺身あり、焼鳥から煮込みまで。でも「納豆料理」というカテゴリーが一番大きい。

純米系の地酒は一合600円から。定番酒は280円とお手頃価格。

水戸の海産物といえば「かつお」は外せません。かつおの銀造りは郷土料理のひとつ。とくに秋から冬にかけての戻り鰹は最高です。鰹にも背中とお腹があり、お腹の部分は皮が柔らかく脂を蓄えていることから、皮ごとお刺身にするのが水戸の風習。

かつおをちょっと載せて、キッコーマンのお醤油をたっぷりつけて頬張れば、それはもうえびす顔。厚切りで口いっぱいに美味しさが広がります。これで600円は安い。

そこにすかさず土地のお酒を。筑波の伏流水でつくった地元のお酒と、その水が注ぎ込む海でとれた海産物。美味しいに決まっているじゃないですか。

納豆料理からイカ、まぐろ、たこが載った三色納豆をチョイス。くせのない納豆で、飽きの来ない美味しさ。日本酒と納豆の組み合わせもいいものです。

開市日は欠かさず青柳町の公設地方卸売市場に仕入れに行くのだそう。鮮度のいい地元の食材をつかって美味しい手料理でもてなしてくれる駅前酒場「てんまさ」。水戸へお出かけの際は一献いかがでしょう。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

てんまさ
050-5869-7537
茨城県水戸市宮町2-2-31 三友ビル B1F
11:00~23:00(無休)
予算2,100円