粋でお洒落なレストランやカフェが建ち並び、石畳の路地には小料理屋や料亭が敷居を高めに明かりを灯す街・神楽坂。ここにも知る人ぞ知るディープで庶民的な酒場は隠れています。
メインストリートの神楽坂通りから一本入るのがポイント。神楽小路は味わいある飲み屋横丁で、観光客はあまり立ち寄らない路地。
さらにそこからもう一本角を曲がります。どんつきの道「みちくさ横丁」にたどり着ければ、神楽坂の梯子酒も上級者でしょうか。
ほら、いい感じ。平日はもっと明かりが灯り、古き良き昭和のネオン街の佇まいがあります。
目指すは「鶴肴」。”若”と呼ばれる店主のお名前がつるこうさんなので、それでこの店名。
丸いすには白い座面カバー。天井から吊るされた懐かしい照明が照らす木造の店内。時間が昭和のまま止まっているような空間ですが、創業は2010年です。
以前は別の飲食店の厨房で腕をふるっていた店主さん。飲食畑一筋で料理が美味しいと評判です。それとともに、大の競馬ファンとして馬好きの常連さんからも慕われています。
お酒とおでんはセルフサービス。店の奥にある冷蔵ケースから好きなお酒を選び、自分好みの塩梅に煮込まているおでんを掬って、まずは乾杯です。
料理は300円から400円。季節替わりの料理も楽しみです。
おでんは全品80円。何個食べたかは自己管理で伝票へ。
沢の鶴を筆頭に瓶詰め日本酒がずらりと並びます。これに加えて燗酒も別にあり。甲類はキンミヤで店主さんもキンミヤファンなのだそう。
製氷機あり、割り材あり、焼酎を買って好きなように飲むことが出来ます。
ビールはサッポロ系3種類。黒ラベル、ヱビス、赤星。黒ラベルの小びんが430円(以下税別)、中びんが480円。自分で伝票記入だからこれ以上ない明朗会計・自己管理。予算内で楽しく飲めます。
おでんは色が濃くてしっかりした味。しっかり染み込んだ玉子は思わず生唾もの。赤星を傾けて、では乾杯。
日本酒は沢の鶴。生酒1合430円。
酒のツマミをおすすめからひとつ。うるめ干し(330円)、この組み合わせがわかる舌を持っていてよかったと思える瞬間です。
日本酒をいっぱい飲んでいってと、「すじこちゃんはどうです?」とのこと。店主さんの言い回しがひとつひとつが可愛らしくて、はんなりしたトークに不思議と癒やされます。
お燗酒をもらって、今宵は塩分を気にせずクイクイと。顔が火照ってきていい気分。
狭い店内、常連さんで早い時間から満員御礼。お酒やおでんをとるために店内を行き来するので自然とお客さん同士の会話もうまれて、まるで古くからの”居場所”だったような錯覚に。”ゴールデン街効果”とでも呼びましょうか、この感じ。
高級なお店ばかりではない神楽坂。鶴肴さんを目当てにふらりと立ち寄られてみてはいかがでしょう。土日も営業で15時オープン、千円ちょっとで一寸一杯を楽しめる素敵な小箱酒場です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
居酒屋 鶴肴
03-3268-4777
東京都新宿区神楽坂1-14
15:00~23:00(火定休)
予算1,600円