飛ぶ鳥を落とす勢いで出店を続ける晩杯屋の最新店舗が、上野駅浅草口すぐにオープン。勢いのある飲食店が入居する出来たての飲食店ビル「ファンデス」の5階に誕生しました。
新築のビルということもありますが、店の雰囲気は従来からの晩杯屋とは一線を画するものとなっていて、全席着席というだけでなく、椅子やテーブルのつくりも異なり、ゆったりとした雰囲気に仕上がっています。
エレベーターを降りると広がる店内にテーブルがずらり。8人テーブル、6人テーブル、4人テーブル、カウンターと様々な利用シーンに対応しています。
カウンターも奥行きがあり、椅子も軽いものではなくしっかりとしたもの。席料代わりの使われているおしぼり代70円がかかりますが、他の着席型の晩杯屋よりもゆとりがあり、都心で座れる晩杯屋ならどこでもよいという人ならば、一度上野を目指してみては。
東京建物がつくるファンデス上野に入るお店は、1階に有楽町のガード下でおなじみの有楽町産直飲食街を手がける株式会社浜倉的商店製作所の「上野産直飲食街」や、二階には神戸で大人気の高知県土佐清水市の店「土佐清水ワールド」が東京初進出、ほっとする定番焼鳥居酒屋「テング酒場」をはさみつつ、晩杯屋や上野イカセンターなど、広域ブランドのおもしろいところが揃っています。
晩杯屋も「晩杯屋北関東ふるさと編」という従来にないネーミングで、北関東にフォーカスするアンテナショップ要素を持った新業態で登場。無休でいつでも午前11時オープンというのは力強い。やっぱり上野のせんべろは午前中から始まらなくちゃ。
飲み物、食べ物のメニューが既存店とだいぶ異なっていて、アルコールは定番を残し、残りはご当地飲み物を導入しています。
北関東の日本酒が並びます。栃木は大田原の地酒「天鷹」、群馬から有名な赤城山と、マニアックな利根郡川場村の「谷川岳」という顔ぶれ。茨城からは常陸太田市で剛烈をつくる蔵の焼酎「龍の子」が参戦。
大洗海岸に北関東ワンツーツーなど、謎カクテルも登場。メロンサワーがなぜ茨城なのか、突っ込みたいけれど晩杯屋はそういうテキトーさは昔からですね。
生ビールで乾杯。状態の良い一杯が嬉しい。緑茶割りやゴールデンハイが人気とはいえ、500mlで410円のお得感がある生はコストパフォーマンスが高さを感じます。
フードメニューは北関東料理というタブのなかから県別や対抗料理を選ぶという趣向。
晩杯屋のメニューに最近遊びが少ないと思っていたそこのあなた!私も同じ思いでした。だからこそ、これにはびっくり。値段にも驚きますが、こんなに新メニューを導入するなんて、結構思い切っているように思いませんか。
小鉢系は従来通りの価格なので、不思議なメニューに手を出さなければ従来通り二千円でお釣りが来る仕上がり。
ゴルフ場のキャベツ漬け250円、いもフライにいも焼きそば、栃木はやっぱりおもしろい。そして、ステーキがさりげなく4ケタで混ざり込んできます。
群馬からはカツに謎のベスビオなる料理も。ベスビオはベスビオ風スパゲティのことで群馬県民心の味だそう。ペスカトーレを辛くしたというと想像がつきますか。基本メニューのモツ煮込みを群馬枠にはめ込んだその心は(笑)
たくあんをポリポリとつまみながら、待っていると…
次々やってきました。岩下の新生姜、刺身こんにゃく、そぼろ納豆。
生姜とこんにゃくは想像がつくとして、そぼろ納豆はあまり全国区になっていない郷土料理のひとつ。切り干し大根を和えた味付け納豆です。これが納豆だけにあと引く味で、ビールがよく進みます。そういえば普段から晩杯屋では納豆料理を食べていますが、ビールと合うんですよね。
ほとんど気づかれなさそうですが、ここのレモンサワーは既存店とはことなりポッカサッポロのエース級割り材「パンチレモン」を使用しています。ポッカとサッポロ飲料のシナジー効果を感じるレモンサワー専用ポッカレモンです。爽やかに酸っぱくて甘くはなく、レモンの強い刺激が喉をくすぐります。
茨城枠からは皮付きのカツオ刺しを注文。初ガツオの銀皮造りはおすすめの一品。
桐生名物のコロリンシュウマイ。なにも説明なしなので、個性的であってもシュウマイが出てくるのかと思っていたら、まさかのじゃがいも、玉ねぎ、でんぷんを主原料とした練り物でした。不思議な味。まだまだ日本には未知の食べ物が隠れています。
ご祝儀買いということで、超高級品のステーキを注文。1,500円という価格からどんなボリュームかと恐る恐る頼みましたが、案外小ぶり。茨城、栃木、群馬と3県別で牛肉が用意されていて、どれを選ぶか悩むところ。
続いて謎カクテルをご紹介。こちらは122(ワンツーツー)という名のカクテル。ネーミングはおそらく、埼玉、群馬を経由して栃木は日光へ抜ける国道122号からでしょう。580円と晩杯屋のなかでは高級ですが1Lジョッキなのでネタとしておもしろい。かき氷イチゴ味を想像して間違いはありません。
もうひとつのネタ系カクテル「大洗海岸」は、太平洋の青をイメージしたそうな。大洗のサンビーチ通りの眺めを感じるかどうかは別として、パイナップルも載っこった南国感漂う飲みものです。味は、かき氷ブルーハワイを想像しておけば、こちらも問題ないでしょう。
ちなみに青いアルコールの正体は、アムステルダムのデカイパー社が人工香料不使用で作るブルーキュラソーです。通常はカクテルチャイナブルーに使用するので、大洗海岸はチャイナブルーのジョッキ入りといったところでしょうか。
駅から傘いらずの近さでゆとりの配置。午前中からやっていて不思議なメニューが並ぶ晩杯屋。客層もコテコテなせんべろ酒場より少し落ち着いた感じがあり、全体的にのんびりとしたムードです。
安く飲める広域ブランドに成長した晩杯屋ですが、上野店の個性的な料理は一度覗いて見る価値がありそうです。ただし、ハムカツなどの定番料理の種類はかなり減っていますので、普通の晩杯屋と違うということを事前に知っておかないと、寂しくなるかも。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
大衆酒場晩杯屋北関東ふるさと編ファンデス上野店
03-5830-7829
東京都台東区上野7-2-4FUNDES上野5階
11:00~24:00(無休)
予算1,800円