新宿駅から京王線で20分の街、府中。利便性のよさからベッドタウンとして栄え、駅の南に東京競馬場やサントリービール府中工場などがあることで知られています。その地名の由来は、大化の改新で制定された律令体制によって武蔵の国の国府(現在で言う県庁・都庁)が置かれたことから、府中とつけられました。
武蔵国総社である大國魂神社の存在が当時の面影であり、千年を超える時の中で府中の街を見守り続けています。
駅前の百貨店の隣という場所にありながら、大國魂神社は荘厳な雰囲気です。
この大國魂神社の脇の道を少し進んだところに直会スタンド宮という小さな立ち飲み屋が誕生しました。繁華街から少し離れているため、知る人ぞ知るという飲み屋です。
国分寺の人気立ち飲みの常連さんが開いたお店で、女性店主の酒場です。小箱とお宮脇でありながらも、明るく清潔感のある店内は女性のお一人様も入りやすい。
キャッシュオン、頼みすぎない、小銭で飲んでねという一般的な”お願い事”が書かれています。
10人も入ればいっぱいになるサイズで、店主とマスターの二人で切り盛りされています。お客さん同士や店の人との距離も近く、イチゲン様でも帰るときはほっこりした気分になるに違いありません。
サントリー府中工場は南に1キロの場所。ここ府中はサントリービールを飲むには最高の地域のひとつでしょう。スタンド宮は立ち飲みでは大変珍しい香るエールの生が味わえます。
薄針のビアグラスで乾杯!
フルーティーな香りと甘みがあります。ディスペンサーも良好な状態で美味しい生が楽しめます。
ニョッキやトマトチーズ焼きなど少しだけ洋風の要素を取り入れたオシャレメニューと、天ぷらや豚汁などの和食も並びます。料理は200円前後がほとんどで、小銭でちょいちょい摘んでせんべろが楽しめます。
自家製でさらっとしたマヨネーズで和えたマカロニサラダは200円。大きくきられたハムと赤ピーマンがオシャレ。ひとりでつまむのにちょうどいいボリュームになっているので、色々食べられて嬉しい。
天ぷらが充実。たけのこ、新生姜、こごみなど脇役が多くて試してみたくなります。あさりの天ぷら(250円)は、注文してから小麦粉をといてかき揚げにしてくれます。天ぷらは、出来たてに勝る調味料はないですね。
酎ハイ類は280円からとお手軽。内緒のエキス(飲んでみれば詳しい方なら答えが見つかるかも)を垂らした下町の焼酎ハイボールも人気です。
神社の横にあるということで、神社拝(ジンジヤハイ)・ジンジャーハイなんてドリンクもおもしろい。
店主が通う国分寺の立ち飲み屋が赤星を置いているからか、こちらも立ち飲みの人気もの・サッポロラガーを置いています。
まず始めにどうしようかな、というときには豚汁と生ビールのセット(500円)はいかがでしょう。具だくさんで食べごたえ十分、店の看板料理のひとつです。
お隣、調布はホッピーのふるさとです。ホッピーは三冷(シャリキンなので正確には1凍2冷かな)で味わえます。
府中駅から徒歩数分、神社の近くで静かに、そして笑顔で飲める立ち飲み「スタンド宮」。女性店主の柔らかさは感じつつも、芯はしっかりとキャッシュオン立ち飲みの形を崩しておらず、硬派なノンベエさんも楽しめるものと思います。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)