武蔵境駅の周辺はあまり飲み屋は多くないのですが、この街にはなんといっても「ときわ食堂」があります。この名前でピンと来た方、あなたは食堂飲みがお好きですね。
東京の下町に点在するときわ食堂は墨田区業平で1922年創業の大衆食堂です。その後、浅草雷門横に移転し多くの暖簾分けで都内各地に広がりました。経営はそれぞれ別でも「東京ときわ会」という組織で横のつながりは維持されていて、浅草ときわ食堂によると19店が登録されています。
武蔵境のときわ食堂もその一軒で、創業は1973年(昭和48年)と古く、今はなき泪橋ときわからの暖簾分けにあたるお店です。
武蔵境の駅も最近の中央線高架化の流れで一新、昔の面影はなくなりました。
ただ、駅から少し離れると「あの頃」が残っていて、中央線沿線生まれの筆者には落ち着く町並みが広がっています。ときわ食堂はその中の一軒で、他のときわ食堂とは全く異なる洋風な店構えになっています。昔、熱海でみかけたような不思議な柱も、一周回って楽しい要素。
店内も「ここ、本当にときわ食堂?」と初めての人は慌ててしまいそうなバーやスナック風のつくり。背もたれが低くてくるくる廻る椅子に赤いベンチシート。その中に当たり前に溶け込む短冊とキリンラガーのポスターは、「いい意味で中央線沿線らしい」と思えてきます。
居抜き物件というわけではありません。創業時は普通の食堂として営業していたそうですが、もっとお酒を飲んで欲しいという想いから改装、バー風ときわの誕生となったそう。
物腰柔らかで笑顔が素敵な女将さんが丁寧に接してくれるのが嬉しい。まずはビールから。キリンラガーで乾杯!
瓶ビール大びんで590円。中びん、小びんも並びます。酎ハイは320円でグラスワインは260円とお値打ち価格。
ボトルキープでよかいちを入れることもできます。近所に居たらぜひ一本キープしたいところ。
お酒もそうですが料理はもっと良心的。小鉢から炒め物、天ぷらまでほとんどが200円~400円。数人できてあれこれとお財布気にせず頼み続けてもきっと3千円は越えられません。
しかも懐かしい料理ばかり。最近の外食は個性的で写真映えするものが山ほどありますが、食堂飲みに求めるのはこういう内容でしょう。
ウインナエッグ(290円)。私は醤油派。半熟の黄身を溶かして、キャベツもいっしょにごちゃごちゃっとして食べるのが好きです。そしてビアタンのラガーをぐいっと飲み干す。はぁー、やっぱり食堂飲みはほっとするなぁ。
酎ハイの割り材は目黒うまれの酸っぱいやつ「ハイサワー」です。割るならハイサワー。氷がかなり控えめでそして甲類たっぷり。一杯で結構顔が火照ってくることを感じつつ、おつまみには茄子味噌を。
すべて料理は息子さん手作りで、注文を受けたらなんでも手際よくささっと仕上げてくれます。揚げたてほくほくの茄子味噌は酎ハイ1杯を余裕で進ませます。
厨房のまな板や揚げものの音と夕方の情報番組のゆるい街紹介特集をBGMに、ゆっくりと心地よい時間が過ぎていくのでした。
武蔵境の飲み処として、お近くでしたら一度のぞいてみてはいかがですか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
ときわ食堂
0422-33-2465
東京都武蔵野市境南町3-11-13
17:00~25:00(日定休)
予算1,600円