八王子は駅の南北で街の表情が大きくことなります。たくさんのバスやタクシーが発着するバスターミナルと、そこから放射状に広がる商店街。駅前には東急スクエアなどの商業施設が立ち並び、京王八王子駅も近く、まさに西東京のコアといった賑わいです。
それに比べ、南口はかなり落ち着いた様子。これでも、ビックカメラやサザンスカイタワー八王子などの駅前再開発による大型施設の誕生で変わりつつありますが、どこか寂しい雰囲気のまま。ここはかつて貨物ヤードなどの鉄道施設が巨大に広がっていた鉄道用地でした。現在もJR八王子支社社屋や現業施設があるからか、南口の居酒屋に貼られているカレンダーはJR系列のものが多いです。居酒屋は街を写す鏡のようなもの。つまり、こっち側は鉄道マンの酒場と言えますね。田端や大宮などに雰囲気が似ています。
そんな八王子の南側で半世紀続く中華食堂「萬友亭」は、旧八王子機関区から目と鼻の先にあります。笑顔が素敵な優しいご年配のご夫婦が切り盛りするアットホームなお店で、いまではあまり見かけなくなった街の中華らしさがたっぷり。まるで動態保存(鉄道産業で栄えたエリアなのであえて、機械的な表現として)されているかのよう。
中華屋でありながら、営業は夕方からというのは珍しい。しかも18時30分と遅めに暖簾がかかります。かなり渋い雰囲気ながら、混雑時は満席になるほどの賑わい。ラーメンでささっと夕飯を済ませていく人もいますが、大ぶりの名物餃子をつまみに飲んでいく人が中心です。カレー餃子という変化球も見逃せない。目玉焼きが200円だったりと、普通の中華屋とちょっと違う飲み処的なメニューです。
ビールは瓶だけ。大びんのキリンラガー(600円)が実にしっくり来る空間です。目の前で王冠をシュポっとあけてもらい、トトトと注いで乾杯。ちょっとした小鉢はサービスででてきます。
苦味とコク、これぞ麒麟味。
餃子が人気ですが、ここで食べるべきは鶏チャーシュー(並600円)です。チャーシューって叉焼(焼豚)って書くので、鶏だと言葉に違和感がありますが、そんなことはどうでも良くなる美味しさ。肉らしさが残りつつも甘く独特な風味で本格的な味。たっぷりのネギに七味をふりかけて食べると、これが最高にビールとよく合うんです。
街の中華屋とあなどるなかれの、個性派おつまみです。
具だくさんの野菜炒めも、しっかり味でお酒のおつまみにぴったり。炒め物の種類が多くて、ニラ炒め→肉入りニラ炒め→レバ炒め→ニラレバ炒めと、なんだか連想ゲームのようにメニューに並んでいます。
ここは完全な「お疲れ様」酒場。しっかり働いたあとのビールは最高ですね!
八王子北口の華やかさを支える南側の雰囲気、いかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビール株式会社)
萬友亭
042-642-4989
東京都八王子市子安町1-1-1
18:30~様子を見て(日定休)
予算1,500円