当たり前ですが、焼鳥は鶏肉です。ですが「やきとり」とひらがなで書くと鶏ではなく豚、やきとんの意味になります。最近は区別なく使われるようになりましたが、そんな表記で別けるという文化ができるほど、東京は焼鳥・焼とん天国です。
池袋駅周辺も例外ではなく、”つぶしたて”でボリュームが魅力の店や、スタミナ焼きが看板料理の老舗暖簾店など、駅周辺で人気の店を数えるだけでも両手をこえるほど。
そんな激戦区に、ついに板橋の虎が登場。野方の人気もつ焼き「秋元屋」で修行をつんだ辻氏が東武東上線・上板橋駅の路地裏に立ち上げたやきとん「ひなた」。人気が人気を呼び、板橋区内で大山や志村坂上などに支店を開きました。
ひなたの魅力は、秋元屋譲りの独特な味噌ダレで焼き上げるカシラやチレと、辻さん自身で考案してきた秋元屋にはない一品メニューのコスパの良さ。手軽に美味しく楽しい酒場、それがひなたです。
池袋東口店は、ビックカメラの裏を北上した場所。地図がないと最初はわかりづらい場所かもしれません。古くからこの街で飲む人には、もともと笹屋という角打ちがあったと説明すると早い。
ひなたでは最大の席数で、厨房もひろびろ。テーブル席が60、カウンターが17席と大箱です。大山店など小さな箱を最大限活用してギチギチに飲んでいたのを思うとびっくりします。
飲み物は生樽がキリンハートランド、瓶ビールではサッポロラガーという顔ぶれ。甲類焼酎はみんな大好きキンミヤ、ホッピーや下町ハイボールが人気です。
やきとんひなたに来たら、まずは赤星で始めたい。東京のやきとん屋には赤星のもつラベルのイメージがしっくりきます。トトトと注いで乾杯。
ひなたは系列で板橋駅付近にピザをメインにしたイタリア酒場を開いています。え、あのひなたがピザ?と、最初は驚いたものですが、コストパフォーマンスが高く、赤星やキンミヤがある紛れもなく「ひなた」でした。
そんなピザ業態のノウハウをもってきて、やきとん屋なのにピザがある。浮いているようで浮いていない、不思議な感じ。ひなたらしいといえば、ひなたらしい。
やきとんは全品100円。盛り合わせにするとちょっと安い。塩、タレのほか、みんな大好きな味噌タレが選べます。バーニャカウダやレバーペースト、パテ・ド・カンパーニュも手作りでボリュームもあることから名物料理となりました。
日本酒は日替わりで、600円前後。刺身など、メニューを隅々みると結構なんでもござれのひななたは、日本酒もよく飲まれています。系列で、大山に「魚猫」という魚介版ひなたを開いていることから、刺身類や日本酒もこう見えてしっかりしています。
こちらは人気の焼きチーズカレーバケット付き。カレー煮込みではなく、カレーそのまま。やきとんの合間に、刺身の後にも、脈絡気にせず頼んじゃおう(笑)
下町ハイボールの名前で用意されている焼酎ハイボール。キンミヤ焼酎と魔法のエキス、ソーダを注いだ下町流。氷なしの正当スタイルが嬉しい。ちなみに、キンミヤに天羽の梅を垂らす「梅割り」も飲めます。がっつり酔いたい人へ、立石の雰囲気を池袋で。
※飲酒は適量で。
ボールにかしら味噌。これですよこれ。濃厚な味噌と脂のまざった味はインパクト大。ここに下町ハイボールがしっくりくるのです。チレにも味噌があいます。シロはタレがいいかな。
レモンサワーはレモンがこれでもかとたっぷり。まるで、同じジョッキでおかわりし続けてレモンで溢れてしまったかのようなビジュアル。酸味はさほど強くないですが、果実感たっぷり。やきとんの脂をすっと洗い流してくれます。
キリンハートランドは大ジョッキ。状態はばっちり。ハートランドといえば、六本木生まれのオシャレ系ですが、甘い香りなのにしっかり苦味のある引き締まった味はやきとんともよく合います。
ひなたは、これまでの老舗大衆とも、秋元屋やそこで修行した人たちが始めた城西のやきとん酒場とも違う、独特な雰囲気のお店。わちゃわちゃしているのに、それが楽しいのです。パワーのある酒場で飲みたいときにいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
やきとん ひなた 池袋東口店
03-5985-8910
東京都豊島区東池袋1-36-5 笹屋ビル1階
17:00~24:00(土日祝は16:00~・日は~23:00・無休)
予算2,000円