池袋『たちのみや喜平』酒卸営業マンから角打ちマスターへ、16時前開店

池袋『たちのみや喜平』酒卸営業マンから角打ちマスターへ、16時前開店

平日16時ごろから営業。明るいベテラン大将が切り盛りする小さな立ち飲み『たちのみや喜平(きっぺい)』。実は、池袋に拠点を構える酒卸「平喜屋」の社員が独立し、同社の倉庫を改装し2000年に開業した広義の意味での角打ちです。

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ベテラン大将、元は敏腕酒卸営業マン

静岡で「お酒の平喜」と呼ばれるほど高いシェアを誇る業務用酒卸、大正8年創業の株式会社平喜。同社のグループ企業で、豊島区、板橋区を中心に酒卸を行う業務用酒店「株式会社平喜屋」が、今回ご紹介する立ち飲みのルーツです。

JR池袋駅からは徒歩7分ほど、豊島区役所に近いオフィス街にあります。酒屋さんの名前が「平喜屋(ひらきや)」。立ち飲みが「喜平」。お店で売る定番酒は、平喜グループの平喜酒造(岡山)がつくる清酒「喜平」と、製造、卸、立ち飲みまでが一貫している珍しい店舗です。

外観

お店はもともと酒卸の倉庫だった場所。空きスペースになっていた場所の活用を模索していたところ、酒卸の平喜屋の営業マンだった元マスターが立ち飲み屋を提案。酒卸系列の立ち飲み、いわゆる「角打ち」が誕生しました。

マスターが同社を退職後も『たちのみや喜平』を個人店として続けています。卸の平喜屋で働く皆さんも仕事帰りに飲みに来る良好な関係です。

内観

営業開始は16時頃ですが、15時過ぎにマスターが出勤したら、その時点でお酒を飲ませてくれます。料理は仕込み途中なので缶詰などがおつまみです。

つめれば15人以上入れる空間。2019年まではピーク時間帯、通勤電車かのような密集具合で、皆さん思い思いに立ち飲みを楽しんでいました。同店のファンも多く、タレントさんや酒類関係の仕事にされている方もふらりとやってきます。

所狭しと酒瓶やグッズ、ポスターなどが飾られています。たくさん張られたマラソンのゼッケンはお客さんたちが張り出したもの。「いつの間にかたくさん集まりました」とマスター。

店の魅力はなんといってもマスターの人柄で、笑顔を絶やさず気遣いをされる、「酒飲みの大ベテラン」というタイプ。「一生分飲んだからもう飲まないけど、酒飲みの気持ちはよく分かる」と笑って接してくれます。

「お客さんが喜んでくれると、こっちらも嬉しいの!だから頑張れちゃう」

マスターはいつまでの酒とともに現役なのですね。

接待や客先訪問などで酒を飲み、そして酒を届けるのが専門で、料理は全くの素人だったそう。いまでこそ名物となったおでんも、当初は作り方がわからず苦労したそう。「お客さんに教わりました」と言うものの、料理の腕は立ち飲みマスター歴20余年の技を感じる確かなもの。

品書き

  • 一番搾り生ビール:ジョッキ500円
  • クラフトビール(タップマルシェSPRING VALLEYほか):600円
  • ハイネケン:600円
  • 喜平しぼりたて:400円
  • ホッピーセット:500円
  • 角ハイボール:350円
  • 麹もろみ酢割:350円
  • みかんサワー:400円
  • 酎ハイボール:350円

小皿料理:全品250円均一

マスターの思い入れがある酒『喜平』はぜひ飲んで

キリン一番搾り生ビール(500円)

現在の樽生ビールは、キリン一番搾り。すーっとジョッキを満たし、泡は少なめ。サービス旺盛なのです。それでは乾杯

喜平 たる酒(450円)

店名の由来でもある日本酒・喜平が店を代表するお酒。喜平は岡山だけでなく静岡でも系列企業がつくっており、あわせるとバリエーションは実に豊富。マスターはグループの社員だったこともあり、聞けば詳しく教えてくれます。

タイミング次第ですが、菰樽の樽酒を提供されることもあります。杉樽特有の風味がついた格別な一杯、これぞ製造・販売、そして角打ちまで繋がる喜平の味。

樽酒には漬物が合うよ、とマスター。さすが、わかっていらっしゃる。

いも煮(250円)

毎日1時間かけ、お一人で大量のおつまみを仕込んでいます。「喜んでくれるから嬉しいんだよ」と笑顔でつくるマスター。その想いがつまったような優しい味でした。

麹もろみ酢割(350円)

ホッピーやハイボールなどの定番もよいですが、珍しい酎ハイ「麹もろみ酢」をつかったサワーは珍しいのでおすすめ。甘酸っぱくて爽快な味です。

ごちそうさま

池袋はかつて都内のターミナル駅でも有数の角打ち密集エリアでしたが、次第に姿を消していき、今はわずかに残るのみ。『たちのみや喜平』は平成の立ち飲みブームの頃のにぎやかなムードを残す貴重な一軒です。

有力な業務用卸を系譜とはいっても、ここは実に味わい深い。それでいてマスターの人柄もあり、はじめての人でも安心して飲める気軽な止まり木です。お近くにお越しの際は立ち寄られてみてはいかがでしょう。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/株式会社喜平屋・東京小売酒販組合)

店名たちのみや喜平
住所東京都豊島区南池袋2-29-16
営業時間営業時間
[火~日]
16:00~21:00
日曜営業
定休日
月曜日
開業年1956年(角打ちは2000年から)