自由が丘は若者溢れるおしゃれな街。セレクトショップやユーズドのデザイナーズアイテムを扱う店など、澄ました顔で並んでいます。筆者の人生には一度も絡むことがなかったジャンルです。
アンティークな雑貨屋さんを覗くよりは、アンティークな酒場に入るほうが好き。自由が丘駅は学生時代に遊んだ街なのに、その頃から飲み屋巡りばかりしていました。とほほ。
自由が丘のアンティークといえば、1952年創業の「鳥へい」を紹介しなくてはいけません。駅近くのほんの僅かな一画が酒場街になっていて、古いお店が地元のお父さんたちで賑わっています。
1階がカウンター12席、二階はグループで飲めるテーブル席で18ほどの定員です。カウンターでひとり串を摘むのは最高ですが、人気の席だけあって満員。今日は二階で始めましょう。
ビールはキリンとサッポロ。生樽はサッポロ黒ラベルで、瓶でキリンラガーを選ぶこともできます。赤星もあるので、日本を代表するレガシービールの飲み比べが楽しめます。酎ハイ類350円からで庶民的。
今日はキリンラガー(RL)で乾杯。歴史ある店は、大びんがとっても似合います。
1階の焼き場で社長が焼く串は1本100円、1本からの注文ができるので単騎遠征の人も色々食べ比べられます。野菜たっぷりの煮込みは、今の季節温まるのと栄養バランスもよくて空腹ならば頼みたい一品です。
さらに日替わりメニューでは焼き魚やヌタ、春巻きのかわでポテサラを巻いた”美味しいに決まってる”的な創作料理が加わります。
おつまみが豊富なので、串だけでなく色々食べたくなります。人気の品は、このポテトフライ。誰もが想像するものとは異なる形状で。ごろごろと大きくさいの目に切られたポテトが、コロッケのようにパン粉をまとって揚げられています。
これがとにかくビールとよく合うので、一人で大びん1本を空けてしまうのは容易なこと。
焼鳥は焼くからといって鮮度を疎かにしていいものではありません。できれば生でリードタイムを極力短く、串打ちしてその日に焼いて食べさせてほしい。ここの「鳥へい」の串はまさにそんな希望通りのものを食べさせてくれます。
肉汁したたり、旨味が強い鳥は、かわも砂肝もみんな美味。タレもいいですが、辛味噌をちょっとだけ風味付けで楽しむ塩がいい。
手羽は身が引き締まりもちもち。噛んだ瞬間、皮と身の間から肉汁が滴り落ちるほど。300円と割り高に感じるかもしれませんが、焼鳥好きならばこの違いはわかっていただけるはず。
昔は40半ばから60代くらいのお父さんたちがほとんどでしたが、最近はアパレル店員風のお姉さんたちのグループや、酒場の魅力に目覚めてくれた20代のグループを見かけることも多い。そんな層と混ざって、ロマンスグレーが似合う昔からの主様たちが人生の普遍的な時間を楽しんでいます。
幅広い世代に愛され続けている銘店。次の半世紀も、きっと続く酒場だと思います。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビールマーケティング株式会社)
鳥へい
東京都目黒区自由が丘1-12-4
16:00~24:00(日定休)
予算2,000円