蒲田は鰻を看板に掲げる酒場や、鰻やどじょうの専門店が多い。呑川が今のようにおとしくなる前は、蒲田はさぞかし水害に悩んだことだと思います。河川名の由来も、「田畑を呑み込む川」から呑川とついたと言われています。けっして呑兵衛の街・蒲田からついた名ではないです。
いまのように護岸工事で固められる以前は、おそらく汽水域にも近く呑川と上手な付き合いをしていた地域に違いありません。そんなこともあって、戦後まで鰻の街として多数のお店がありました。
いまもその名残で、鰻専門の立ち飲みだって何軒かあります。たとえばここ「うなぎ家」。そのままの名前です。
15時のオープンと他の酒場よりもひと足早く開くので、スタートダッシュの地元の呑兵衛さんや、意外にも学生のファンも多いお店です。1,280円の「とくだねセット」があるなど、千円台で楽しめる「せんべろ立ち飲み」です。
カウンターだけのつくりで、焼台を入口側に向けた厨房を囲むL字カウンターの構成。十数人で満員になる個人酒場のほどよいサイズ感です。
ビールは生がアサヒスーパードライ、瓶では黒ラベルを置いています。少し前は生もサッポロでしたが切り替わりました。中ジョッキで380円は、嬉しい立ち飲み価格です。
それでは、乾杯!
サービスのうざくは220円。焼串だけでなく、うざくやうなとろなど、鰻専門店の小鉢メニューも揃う本格系。
注文を受けてから焼台で炙りはじめ、染み出してきた脂がまだじゅくじゅくと音を立てながらきゅうりに盛られてやってきます。さすがライバル多き蒲田で長年やっているだけのことはあります。
ビールを飲み干したら、ぜひおすすめしたいのが「シークワーサーサワー」です。ラベルのないペットボトルに詰められた特製の割材をたっぷり入れて、軽く炭酸でバランスを整えたお店の人気サワー。常連さんも「これが飲みたいから来る」という方が多く、早い時間から集う常連さんたちも、皆さんこれを飲まれていました。
すっきりかすかに甘く酸味と心地よい苦味がわずかに残る余韻。鰻とあうのかというと。
これがまた合うのです。
鰻はこんなにしっかりした正肉の冊が300円。もちろん焼き置きではなく、蒸した状態から焼き始めてくれます。山椒を軽くふって熱々のうちにいただきます。柔らかく優しいあまさ、余韻のタレの風味にシークワーサーが心地いい。
梅ちゃんハイボール(320円)という謎酎ハイもお試しあれ。ほのかに甘酸っぱい不思議なチューハイ。酒場ごとに違うオリジナルチューハイの世界は楽しいです。結構濃いので飲み過ぎ注意。
梅ちゃんにはうなぎ肝。ぼっか串にぐるぐる巻にされた肝は、生の状態から重ね付けを繰り返し、タレが焦げてぱりっとした状態までゆっくり焼き上げていきます。
焼きの風景がみえるのが立ち飲みカウンターのよいところ。店内に広がる香ばしい香りで、思わず他のお客さんもつられてしまう?
うなぎ屋の焼鳥が美味しいと以前から書いていますが、こちらの焼鳥もタレが共通なので鰻の風味がありおすすめ。一本120円とリーズナブルなので、予算控えめのときはそちらで満たすのもよろしいかと。他にも一般的なおつまみ多数。蒲田の梯子酒の際にご興味あればぜひ。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
うなぎ家
03-3734-0228
東京都大田区西蒲田7-64-6
15:00~23:00(第一三日定休)
予算1,300円