阿佐ヶ谷「酒ノみつや」&「早川寿司」 シリーズ”攻める酒屋” P箱上の職人技

阿佐ヶ谷「酒ノみつや」&「早川寿司」 シリーズ”攻める酒屋” P箱上の職人技

dsc06105

いま、攻める酒屋が増えています。代変わりしてやる気に満ち溢れた若手店主が研究熱心で、いままでにない角打ちが全国に次々と誕生しています。コンビニと同じくらいの小さなサイズのスーパーの増加もその要因の一つだと話す酒販店も少なくありません。

大量流通品の価格差は大手流通チェーンにはかなわない。だからこそ、酒屋ができるお客さんとの関係性を研究しなくちゃいけない。そうして生まれた酒屋は、これまでにないほど、私たちお酒好きの心を掴みます。いま、酒屋がおもしろい。

 

今回ご紹介する1924年創業の阿佐ヶ谷を代表する町の酒屋「酒ノみつや」も、攻めている店の一つです。

商店街を飲みながら散策できる持ち帰りの生ビールを販売していたり、祭日には店先に各地の酒造会社の営業さんがたち試飲会を開催している、いまでも元気な酒屋です。

 

dsc06132

店内には大手系のほかにもこだわりの地酒やクラフトビールなどが並び、その顔ぶれは大手チェーンとは違う、「酒のプロ」の風格が感じられます。

 

dsc06130

全国でもここでしか見たことのない輸入ビールも多く、数年前に「酒ノみつや」でクラフトビールを基礎から教えてもらったものです。

 

dsc06133

レジでは、日本酒をコップ一杯250円から「もぎり」で販売しています。種類も多く、かなりニッチな銘柄も多いので、日本酒ファンの方も満足できるものと思います。

 

dsc06131

さて、ここは店の奥に怪しい通路があります。友人と梯子酒の合間に連れてきた際に、私がすすーっとこの通路に入っていくのを見て友人から「なゆさんは業者かもしれないけれど、勝手に入っちゃダメだよ」と言われたのを覚えています。

私は業者ではありません(笑)

で、この通路は誰でもはいってよくて、奥に倉庫のような別の空間が見えています。

 

dsc06112

もともと倉庫として使っていた8畳ほどの空間が、角打ちスペースとして整備されています。壁一面に日替わりのお酒が短冊に書かれていて、飲みたいものを入口のレジまでいって注文するという流れ。

 

dsc06107

輸入ビール、日本酒、ワインなどがありますが、一番人気なのは赤星ことサッポロラガー。国内大手のビールは角打ちスペースでは赤星とキリンのハートランドのみ許されています。中びんで350円、お安いでしょ。

杉並区で唯一の角打ちが楽しめる酒屋で、今宵も乾杯。

 

dsc06123

向かい側にある児童公園を借景に、涼しくなった今頃のビールが実に美味。店先で販売するビールも黒ラベルで、商店街のお祭りではサッポロのラグジュアリーブランド「白穂乃香」を臨時販売するなど、店主の三ツ矢さんはサッポロ推しです。

ハートランドが飲める角打ちも珍しいので、キリン派の方もぜひ。クラフトや輸入系ビールも小売価格に近い値段で、お財布に優しく色々味比べができるので楽しい。

 

dsc06129

さて、この写真をご覧いただきたい。

おわかりいただけたでしょうか。

 

dsc06110

そう、この角打ちスペースの隅で淡々と寿司を握る職人さんがいるのです。これが、『シリーズ”攻める酒屋”』たる光景です。

なんと、角打ちの中に、酒屋とは別形態として寿司屋が入っているのです。なんということでしょう!

P箱(ビールケースのこと)を重ねた上に板を渡して、その上で職人技が輝いているのです。寿司屋の名前は「早川寿司」で、握る職人さんが早川太輔さんです。

 

dsc06111

もとは酒ノみつやの常連さんで、2015年まで港区西麻布で修行していた本当の職人さんなのです。そんな早川さんが、2016年秋、なんと角打ちの中に店を作っちゃったのです。ちゃんと関係行政の認可をとっているのは言うまでもありません。

出張料理人としても活躍している早川さん、寿司屋営業は週に3回ほどなので、訪問日はご注意ください。早川寿司が営業していないときは普通の角打ちです。

 

dsc06128

日本酒はもちろん角打ちですので、250円で越乃景虎が飲めるなど小銭価格です。お通しやチャージももちろんない。

 

dsc06114

寿司屋のおつまみも8種類ほどあり、どれも丁寧な仕事で、このカットだけみていると寿司屋と間違えるレベルです。あじのなめろう(500円)をちびちびつまみつつ、お酒が進みます。

 

dsc06126

仕入れによってメニューが変わるのですが、この日はかつおのなめろうもありました。鯵よりもすっきりしていて、さわやかな風味。香川の金戎とあわせて、気分は四国の夜。

 

dsc06124

寿司は5貫で1,000円。ご覧の通り、なかなかの腕前です。酢飯は柔らかくふかふかで、寿司種とのバランスもよく、角打ちという空間とのいい意味でチグハグさがあり、楽しい。

 

dsc06127

杉並区唯一の角打ち「酒ノみつや」で、寿司をつまみにきゅっと一杯いかがですか。早川さんや三ツ矢さんのほっこりとした雰囲気の接客に癒やされますし、常連さんも初めての人に対してとても優しい方ばかりなので、角打ち入門にもぴったりです。

阿佐ヶ谷駅からパールセンター商店街を通って散策に行きましょう。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

酒ノみつや
03-3314-6151
東京都杉並区阿佐谷南1-13-17
12:00~22:30(土曜は12:00~20:00・日曜は16:00~19:00・無休)
予算1,800円

早川寿司の営業日は酒ノみつや公式Twitterでご確認ください。
営業時間は概ね18:00から22:00