JR博多駅はここ数年で大きく変わりました。駅ビルの再開発、九州新幹線の開通や、最近は隣接する郵便局の跡地も含めた大規模開発によって誕生したKITTE博多やJRJPタワーも竣工し、大変な盛り上がりです。いま東京でも人気のアパレルブランドやファッション雑貨、東急ハンズなどが入っているはもちろん映画館まであるというのだからすごい。ほんと、いつのまに…という印象です。
そして、なんといってもレストラン街が広い広い。ご当地食材から最先端のスイーツ、ラーメンまでなんでもござれです。飲兵衛たちの心を鷲づかみする飲み屋街だってあります。
いえ、むしろそっちが半端なく素晴らしいと言いたい。酒場巡りの基本は駅から始まるわけで、駅ナカでもいい感じの飲み処があれば嬉しいのですが、博多駅ほど整っている場所は他にないかもしれません。
え、JR系のレストラン街で、そこまでやっちゃっていいの?と正直驚くレベル。さすが九州、お酒への愛情の深さを感じました。
たとえば、駅ナカにだって角打ちがあります。角打ちという言葉は北九州発祥ですから、日常的に酒屋で飲むというのが東京よりも遥かに根付いています。ご紹介する住吉酒販はただ販売するだけでなく、「お酒を楽しむ」ということをテーマにしている酒屋。堅苦しい解説もいいけれど、お酒は笑って飲むのが一番です。
九州の蔵を中心に共同開発するオリジナルの銘柄も揃えています。営業は朝8時から。角打ちも朝8時から。そう、朝イチで博多についたその瞬間から飲めるのです。JR博多駅の改札を抜けて中比恵公園のほうへ行く通路沿いにあるので、ここの前を通り通勤する人は飲みたい気持ちを毎朝抑えないといけませんね。
日本酒の味について、日本酒度や淡麗芳醇というベクトル表現ではなく住吉酒販ならではの独特な言い回しで紹介しています。ここから飲みたいジャンルを選ぶと、お店の方が用意してくれるというもの。日本酒は4方向のベクトルだけではなく、もっと幅広い感覚があるのだと改めて気付かされます。
小売スペースの奥が角打ちの一杯飲み屋のスペースです。日本酒だけでなくビールや焼酎、ワインも揃います。おつまみは九州産にこだわった食材で楽しむ飲兵衛好みの肴が並ぶ。店長の松窪氏もそうとうなお酒好きのよう。解説してくださる言葉の節々にお酒への愛が感じられます。
一枚300円の花札を購入し、これがチケット代わりになります。メニューには”花札何枚”という表記で値段が書かれています。
花札3枚、つまり900円のイロハ枡がこちらの定番。日本酒4種類飲み比べで、モダンとクラシックにわかれた日本酒から2種類ずつを選びます。順番はお店の方が選んでくれて、イロハの順で飲んでいくとお酒の変化や味の幅を楽しむことが出来ます。
枡にはイロハニと文字が書かれており、日本酒の上にも目印が載っているので、今何を飲んでいるのかということを見失うことなく、また、飲む順番もわかりやすい。あわせるおつまみもオススメを色々と教えてくださるので、まずは相談してみましょう。
ぬか漬け、もろみ冷奴、厚揚げといったちょっとしたものから、さばの燻製までメニューは20種類以上。角打ちのおつまみとしては大変充実しています。
この大きな枡に乗った猪口が最高にワクワクさせてくれます。長崎今里酒造の六十餘洲も、ここではオシャレなデザインのオリジナル商品です。九州の日本酒の新たな可能性をみせてくれるのには十分過ぎる内容で、これが九州の玄関・博多駅の駅ナカにあるというのはとても意義があると感じます。
旅の目的のひとつには、やはりお酒を含む「食」が大きい。とくに九州は海の幸から山の幸、そして里でつくられる日本酒・焼酎は個性豊かで魅力的なものばかりです。美味しいお酒とおつまみを求めて、この秋はふらりと九州を目指してみてはいかがでしょうか。
そして、まっすぐ目的の地域の空港まで行かず、あえて福岡空港から博多駅へでて、まずは一杯駅ナカで「序文」となる乾杯を楽しんでみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/住吉酒販有限会社 ・ 株式会社JR博多シティ ・ 九州旅客鉄道株式会社)
住吉酒販 博多駅店
092-473-7941
福岡県福岡市博多区博多駅中央街1-1 博多デイトス 1F
8:00~21:00 (無休)
予算1,500円