本日は岐阜の酒場めぐり。名鉄岐阜駅とJR岐阜駅の間がここらの繁華街で、昼間こそ寝静まっていますが、平日の夜は由緒正しき赤ちょうちんから怪しいネオンまで、カラフルに灯る光に吸い寄せられるように多くの人々が集います。JRで30分くらいの位置にある名古屋とは異なり、どこか懐かしい昭和の風情を感じる飲み屋街といった印象です。派手派手しく飲むのもいいけれど、たまにはしっぽりこんな街で飲むのも楽しい。
お昼からやっているお店はチェーン店を除くとほとんどなく、中華屋の丸椅子でザーサイと紹興酒という組み合わせにするか、もしくは街一番のたまり場を目指すかという選択になります。今回は後者のほう、岐阜市民以外の方にもぜひ知っていただきたい名物酒場をご紹介します。
「ホルモン水谷」は貴重な昼酒スポットで14時ごろのオープン。ぽつんと一軒だけのスタートダッシュなのですが、平日にもかかわらず口開けと同時に満席となるほどの賑わいになる人気店です。
中部では珍しいもつ焼き(やきとん)が看板料理。豚もつという表現ではなく、「ホルモン」と表記しているあたりに、東京のそれとはことなる文化を感じ興味深い。串料理がほとんどで、どて煮、串かつなども揃います。おつけものにも串がついてきて、伝票の代わりに串の本数で確認するスタイルです。
飲み物は生ビールの扱いはなく、キリンラガーの瓶ビール(大びん・小びん)と、日本酒、あとは缶酎ハイだけ。若い人はビールをぐいぐいと飲み、年配の常連さんはいつものように日本酒をちびちびと飲みながら知った顔の人たちと井戸端会議を楽しんでいます。日本酒は石川の酒「金紋」で、なかなか珍しいもの。特選、上撰、普通酒と3種類あり、注文すると一升瓶から女将が景気よく注いでくれます。
大びん(580円)をもらって、まずは乾杯!
創業60年、昔からずっとキリンとホルモンの組み合わせ。変わらないって素敵ですね。
店内中央のテーブルに埋め込まれるように配置されている大鍋に「どて」があり、慣れている人は自分で好きなようにとって食べていきます。比較的辛めの味付けでさらっとしたタレで煮こまれているシロは、練りがらしをちょっとつけ、口に含むとほろほろと溶けていくほどやわらかい。余韻にぐいっとビールが美味しい。
店で漬けている漬物・お新香が絶品。きゅうりや茄子など、昔は家庭でも当たり前のように漬けられていたものですが、我が家をはじめ、いまはぬか床を持つ家庭はなくなりつつありますよね。だからこそ、こういう女将さんの漬けたものがどこか懐かしく、ほっこりした美味しさを感じます。
とん焼き、焼鳥、イカ焼きなど、次々はいる注文に間違えることなく淡々と接客をしながら焼いていく若女将。ちゃきちゃきした対応が心地よく、年配のお父さんたちのあしらいも上手。お店の方の雰囲気がいいと、いいお客さんが集まり、いい店になる、まさに水谷はその通り。
開店から30分もすれば店先のテーブルまでも埋まるほど、大人気のお店。それでもお客さんの回転は早く、毎日日課のように立ち寄ってラガー1本に日本酒1合飲んでいかれるというような使い方が多い。
ホタテやホタルイカ、エビなどの海鮮串は仕入の状況で変わり、「今日は何があるかな?」と楽しそうに来る常連さんをみているとほんわかした気持ちになります。若い女性一人客の常連さんもいて、幅広い層から「岐阜の誇り」として愛されていることがよく伝わってきます。
串は一本120円、2本240円と、串の本数でカウントするからわかりやすい。小箱ながら存在感の大きい大変素敵な酒場です。ご当地の愛され酒場っていいな。通って常連さんと仲良くなれば、きっと人生になくてはならない存在にするはず。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
水谷 本店
058-264-9368
岐阜県岐阜市長住町4-2
14:00~21:00(日祝定休)
予算1,200円