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本日は恵比寿を散策。言わずと知れたビールの街。代官山や原宿と並び、どことなくオシャレなイメージが強いエリアです。赤文字系の雑誌をみていても(そういうのも読むんですよ、歳相応に…)、「いま話題の自然派カフェで女子会しよう」なんてワードが飛び交っています。
恵比寿はいつからそんな街になったのでしょう。もともとは小高い丘があり自然豊かな場所。江戸時代、将軍様が鷹狩を楽しむ景勝地でした。現在のサッポロビール本社があるあたりにあった一軒の茶屋がお気に入りだった3代将軍家光は、ある日、家光お気に入りの茶屋で食事をした際に食べた秋刀魚に感動したことから、いまの「目黒の秋刀魚」という言葉が生まれました。
ある意味、食べ物との関係は400年以上あるわけですが、やはり逸話の食材は「秋刀魚」だし、その後の地名の由来となったのも「ヱビスビール」の商品名からとって「恵比寿」となったわけですから、ここは飲兵衛の街であってもおかしくありませんね。サッポロの工場が千葉県船橋市に移転し、跡地にできたガーデンプレイスがきっかけで、いまのお洒落タウンへと変貌していくのですが、それまではコテコテの飲み屋街でした。
そんな名残が探してみると随所に残っているのが恵比寿の裏の姿。いや、むしろ、いまの恵比寿はお化粧をしていて、メイクを落としたら、こっちが本当の姿なのかもしれません。
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恵比寿横丁という独特な飲み屋街が流行っているのも、街が昔の姿に戻ろうとするパワーが働いているのかも?ということで、今回は随分とスピリチュアルな導入話になりました(笑)
恵比寿という土地には酒場の精神が流れている、とか言い始めると、筆者は「エバンジェリスト」になってしまうので、ここらで止めておきましょう。
つまりは、恵比寿はキレイでオシャレな街ですが、朝からやっているもつ焼き屋や角打ちがあり、コテコテな大衆酒場もロハスなお店の脇で今も賑わっているよというお話。その集合体として、恵比寿横丁がおもしろい。横丁の仕掛け人の浜倉さんという方がプロデュースしたとか、飲食業界寄りの話は置いておいて、楽しくおいしく飲めるお店があるので楽しい横丁なので、一度は覗いてみてください。
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そんな恵比寿横丁に今の夏オープンした「まるや」へカシラ味噌焼きを食べに行ってきました。野方発の現代版大衆もつ焼き店の「秋元屋」で修行された方が始めた「まるや」が、中目黒に続き、こちらへ進出。秋元屋の派生のお店は、基本は忠実に、サイドメニューのアレンジも絶妙で、いいお店揃いなのですから今回も期待して訪問。
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JR恵比寿駅側から入ってすぐにあり、L字カウンターとテーブルで20席ほどの大きさ。炭火焼きと大きな煮込み鍋がカウンターの主役です。入り口直ぐなので早い時間は西日が差し込み、清々しい空気感があります。
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サッポロ本社のお膝元、メニューは当然こうあるべきで。生ビールが黒ラベル、赤星の大びんあり、今年から展開中のラムハイもしっかり置いています。甲類焼酎はサッポロ焼酎…とはいかずに、ここは秋元屋の流れをくんで、三重県四日市の酒造「宮崎本店」がつくる甲類キンミヤ焼酎です。冷凍庫でシャーベット状にしたシャリキンもあるので、暑い季節の駆け込み一杯目にシャリキンホッピーというのも心地よさそう。
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ホッピーもいいけれど、秋元屋の一杯目は必ずこれと決めています。139年目を迎えた日本のビールブランドで一番長生きしているビール、サッポロラガー愛称赤星です。
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今日も大先輩と乾杯!初めてのお店でも、赤星があれば馴染みの気分。赤星はいつでもそこを「ホーム」にしてくれるビールです。お通しのとろろ芋浅漬はゆずをつけていただきます。
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あぁー、今日も1日お疲れ様でした。
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赤星でひといきついて、さぁ今宵のおつまみをみてみましょう。恵比寿という場所で考えれば十分安い。横丁内のお店は比較的割高なのですが、まるやは二千円くらいでさくっと楽しめますね。
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まずは煮込みから。醤油ベースで旨味強め。下ごしらえがしっかりされていて脂は控えめ。根菜やこんにゃくが入っていますが、におい抑えではなく、味を染み込ませて美味しく食べられるから入れているような印象。たっぷりの薬味ネギもあって、すっきりした味に仕上がっています。
余韻にすかさずビールをぐいっと。
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おまちどう、焼き上がりましたよ、名物味噌タレで焼いたまるやのやきとん。かしら、はらみ、ばら。琥珀色に照り照りしていますでしょう。味噌と豚の組み合わせが合わないはずがありません。こってり濃厚、これでもかという旨味が口いっぱいに広がります。何度食べても、この味は「こりゃたまらん」です。
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キンミヤの瓶に入った謎のエキス発見。
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となれば、シャリキンをもらって大人のかき氷を楽しむしかないでしょう!シャリシャリのキンミヤに、ぽちょんの謎のエキスをたらして、子供は食べてはいけない大人専用かき氷の完成です。
はふはふ、頭にずーんと来た後、20度近いアルコールがお腹にじわじわしみてきます。ふへへ。
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シャリキンの梅割りはかき氷です。あっという間に食べ干してしまうのもしかたがないこと。次はラムハイといきましょうか。ウィスキーハイボール、焼酎ハイボールなど、炭酸で割った○○ハイが人気ですが、カリビアンなバカルティーラムで割ったら、ラムハイというわけ。結構濃い目で作るのが公式レシピで、酔いを感じるパワフルなカクテルです。
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レモンやラムならではの香味がこってりとしたやきとんと相性抜群。ラムハイを一口飲めば口の中はあら不思議、リセットされてまた食べたくなる。
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恵比寿にオープンの「まるや」。ご近所さんや日比谷線沿線を通勤で利用されていらっしゃる方はぜひ一度お試しあれ。スマートで程よい距離感ながら笑顔がチャーミングな店主さんや、この横丁そのものの独特な、「海外が想像する日本の酒場街」的な雰囲気がきっと好きになるはず。
恵比寿でまたひとつ、素敵な酒場が生まれました。こうして、いつかおしゃれな街から回帰していくのかしら。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
まるや恵比寿横丁店
03-5420-8506
東京都渋谷区 恵比寿1丁目7−4
17:00~24:00(日定休)
予算2,400円