目次
移転しました。移転後の記事はこちら
以下は移転前の店舗の記事です
大井町に老舗のおでん屋があります。『八幸』の創業は昭和48年。初代は新宿のお多幸で修行した方で、現在は息子さんたち二代目が暖簾を守っています。おでんと並ぶ二枚看板の鶏料理も絶品で、界隈の飲み慣れたお客さんたちで連日賑わう一軒です。
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大井町でおでんといえば、『八幸』です。店名の『幸』は、初代が修行したおでんの名店、「お多幸」由来のもの。独立で修行先の名前から一部を受け継ぐのは当たり前でしたが、最近は少なくなりました。
創業当初は大井町・光学通り沿いに店を構えていたそうでうです。昨今整備が進められている品川区内の道路拡幅の影響を受け、2004年に現在の場所へ移転しました。
ちなみに光学通りの名前はニコンの旧社名「日本光学工業」から来ており、現在八幸がある場所も少し前まで東芝の関連施設があったエリア。近くには三菱鉛筆の本社があるなど、再開発された今も多い街にも、かつての工業地帯の名残が随所に感じられます。大井町に酒場が多いのもそうした街の記憶が関係していそうです。
話を戻しまして、八幸は現在2店舗体制で、大井町・すずらん通りにも2010年より支店を構えています。近年、珍しいパワフルなおでん屋です。店を受け継いだ、初代夫婦の息子さん兄弟の家業を守ろうという気概が感じられます。
外観
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今回は本店を訪ねました。2004年の店舗といってもいい塩梅に味が出てきており、飲み慣れたお客さんも納得して入れる雰囲気ではないでしょうか。
内観
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開店直後の店内。おでんの香りに包まれており、思わずホッと小さなため息がでます。カウンター、テーブルを配した酒場の王道の造りです。18時頃には満卓になる賑わいで、近隣の会社に勤めていそうな会社員や長く通っている常連さんの姿でいっぱいになります。
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カウンターの前に鎮座するおでん鍋。先代から受け継いできた八幸の味が、今日もお客さんを待っています。醤油はマルキン、薄口を使うのがこだわりだといいます。
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9月になると、途端におでんが恋しくなります。秋の訪れを一足先に楽しみたいという気持ちでしょうか。
品書き
お酒
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樽生ビールはサッポロ生ビール黒ラベル:550円、瓶ビールはサッポロラガービール中瓶:600円。
日本酒は沢の鶴 大鳳:500円、浦霞辛口:750円、刈穂山廃純米:850円、酔鯨純米吟醸:850円。
酎ハイ類は、北海道産コーン茶割り:500円、緑茶割り:400円など。
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ホッピーセット:500円、白水:500円、八重丸:500円、七田酒粕焼酎:650円など。
黒板メニュー
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あじ刺身:600円、焼き魚:550円、白レバー炙り:780円、よだれ鶏:700円、鶏ユッケ:750円、いぶりがっこポテサラ:450円など。
地養鶏料理
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鶏刺身三種盛り:1,150円、地養鶏の岩塩焼:750円、せせりのねぎ塩焼き:650円、鶏の唐揚げ葱ソース:650円、とり天:750円など。
一品料理
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焼きブタ:750円、たまご焼き:600円、アボカド梅キュー:550円など。
おでん
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おまかせ盛り合わせ:750円、だいこん:190円、ちくわぶ:170円、あつあげ:190円、がんも:190円、はんぺん:230円、練りフカすじ:230円、つみれ:230円、牛すじ:350円、東京揚げ:350円など。
揚げ物
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ハムカツ:500円、ちくわ磯辺揚げ:500円、鶏の唐揚げ葱ソース:650円など。
鶏料理とおでん、どちらも必ず頼みたい
サッポロ生ビール黒ラベル(550円)
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なにはともあれビールから。サッポロ生ビール黒ラベルで乾杯。
ビールの注ぎ方が非常に丁寧で、ガス圧、冷え具合、泡のクリーミーさも完璧です。お多幸各店もそうですが、東京の老舗おでん店には黒ラベルが似合います。
鶏刺身三種盛り(1,150円)
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先代の頃からおでんと並び力をいれている看板料理が、鳥料理。地養鶏を使用しているそうで、引き締まった肉質とクサミがなく上品な香りが特長です。
そして、とくにお店でオススメしているのが鶏刺身盛り合わせです。
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みてください、このプリッとしていて鮮やかな刺身。レバーはごま油、刺身は濃い目の醤油とワサビでいただきます。
地養鶏の岩塩焼(750円)
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長年の人気料理、岩塩焼き。皮はパリッと、中は歯ごたえがありつつもジューシーです。
サッポロラガー中瓶(600円)
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滋味深い鳥料理を肴にスイスイと黒ラベルをいただいたあとは、おでんを迎えてじっくり飲みましょうか。しみじみと美味しい、サッポロのラガービールを1本。
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なんと、いまも水冷式です。最近は新規に開業した酒場もあえて瓶ビールを水冷にしてこだわりをみせていますが、同店は昔からずっと水冷にこだわってきたそうです。
おでん盛り合わせ(750円/1人前)※写真は2人前
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出汁のいい香りがさっきよりも一層感じられます。飴色になった大根、とろとろで口に入れると溶けていく昆布、きつね色の玉子もいい。ほんのり甘めの味が心地よく、優しい気持ちになります。
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中央にある具は練り物と豆腐の間の子のような「東京揚げ」。おいている店は少なく、老舗のおでん屋らしさを感じる一品です。
練りフカすじ(230円)
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東京のスジは、魚のスジ。ちくわぶなどと並ぶ、東京ならではの具材です。
大鳳(500円)
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おでんの出汁を味わったあとは、やはり日本酒が欲しくなります。店の定番は、兵庫の沢の鶴がつくる「大鳳」です。キリッとしていて飲み飽きない味わい。
コーン茶割り(500円)
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お茶ハイ類も優しい味の料理によくあいます。北海道産のとうもろこしを原料にしたコーン茶割りをいただきました。
今の時代だからこそ、くつろげる正統派のおでん酒場を守りたい
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店に活気がでてきました。駅から近く人通りの多いエリアに支店がありますが、やはり小路の本店を選ぶ人も多いようです。二代目の弟さんの丁寧な接客もあり、いつにもまして心地よくほろ酔いになれました。
ごちそうさま。
八幸の代表であるお兄さんは、洋食で研鑽を積んだ方。最初は家業の手伝いからはじまり、飲食業界一筋できたそうです。インタビューでは「自分自身も年齢を重ねてきて、しずかにゆっくり飲める場所の大切さがよくわかるようになりました。なるべく無くさないように守っていきたいです。」と話してくれました。
新店情報
八幸は、三店舗目を大田区大森の京急大森海岸駅付近に2022年9月下旬頃に開業予定とのこと。大森でも正統派のおでんが楽しめます。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)
店名 | 八幸 |
住所 | 東京都品川区東大井6-1-5 |
営業時間 | 17:00~23:00(祝日は16:00~・日定休) |
開業年 | 1973年(現在の店舗は2004年から) |
公式サイト | https://www.go-tanda.jp/hachiko.htm |