鰹節・昆布の香りに誘われて、栄町のスナック街にある『おでん東大』にやってきました。沖縄の夜は〆にステーキを食べる習慣が有名ですが、梯子酒の末におでんにたどり着くことも多いです。どの歓楽街にも人気店があり、安里・栄町でおでんといえばココ。焼きテビチも名物です。
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ディープな栄町の街並みが、お酒を進ませる
沖縄県の県庁所在地、那覇。街の中心は県庁・市役所がある、国際通りの周辺です。島を隅々まで網羅する路線バスが発着する那覇バスターミナルや県内唯一のデパート「リウボウ」などがあり、行政、経済、そして観光の拠点的なエリアです。修学旅行生や家族連れが行き交う「お昼の観光地」といえます。
対する「夜の観光地(ナイトタイムエコノミー)」はといえば、国際通りの外周に散っており、とくにゆいレール・安里駅周辺は、お酒好きにとって那覇滞在中に一度は訪ねたい飲み屋街となっています。
外観
安里駅前には細い路地が入り組む栄町市場があります。夜は全国にある横丁のようにディープなムードに包まれますが、その周辺のスナック街にも地元密着の居酒屋が点在しています。そのひとつ、『おでん東大』は、約70年続いてきた界隈きっての老舗です。
女将さんが切り盛りしていて、入ってすぐの5席あるカウンターはなんとなくスナックのような雰囲気です。奥は入れ込み座敷となっていて、夜になるとほろ酔いになったお客さんたちがどこからともなく集まり、満卓になることも。
以前は21時30分オープンとかなり深い時間に営業していた同店ですが、昨今の状況の変化で、現在は17時ころ(目安)から扉が開きます。
海の家の畳敷きスペースに通されたような雰囲気で、壁にはポスターや短冊が所狭しと張られています。
品書き
お酒
瓶ビールはオリオン ザ・ドラフト(中瓶):660円、バドワイザー(小瓶):660円など。泡盛は菊之露、残波黒、さんご礁、請福など:各550円~。
料理
おでんは、ちきあげ(魚のすり身と野菜)、中身串、手羽先、てびち、ひじき巾着など:110円~。肉類が多いのは沖縄おでんの特徴のひとつです。一人前盛り合わせは770円。
単品では、名物の焼きてびちミニ:660円、正:770円、大:1,540円、ミミガー&マメ刺身:220円~、豆腐よう:330円、ローゼル:220円など。
焼きてびちを待ちながら、優しい沖縄おでんに舌鼓
オリオン ザ・ドラフト 中瓶(660円)
伊江島産の大麦を原料の一部に使用した、キリッとしたのどごしが美味しいオリオンビールで乾杯!
しいたけ、中身、大根、ちきあげ(各110円)
てびちやソーキ、手羽先などの動物系の旨味が染み出して、大根までもがコク深くなっています。ベースの出汁は、カツオと昆布。実は沖縄県の鰹節消費量は、カツオ大好き県民で知られる高知県を抑えて全国一位なのです。カツオの下味がしっかり効いているので、肉類のクセも整った味になるのだと思います。
中身(豚のモツ)のおでんなんて、実に沖縄らしいですね。オリオンビールが進みます。
琉球泡盛 請福(550円)
沖縄の肉料理には、やはり泡盛を合わせるのが一番しっくりきます。お願いしていた「焼きてびち」がまもなく出来上がるようなので、ここで石垣島の泡盛「請福」をロックでいただきます。地元の人にならって氷水で適度に割るなどして飲むこともできます。
焼きてびちミニ(660円)
火力の強いガス台でゴーゴーを火にかけられたフライパンで両面を焼き上げる、お店の人気メニュー「焼きてびち」です。焼くのに時間がかかるのも納得の分厚さです。これでミニサイズですから、一人飲みならばミニで十分すぎるほど。
なんだかお好み焼きのようにみえますが、てびち(豚足)をぎゅっと平たくなるまで潰したものです。餃子のようにフライパンの中で軽く揚げるように焼くことで、このようにつながった形状になっています。
外はカリカリ、中はトロトロ。箸で一口分を切り分けられるほどにスジはありません。てびちと言われなければ、豚の軟骨揚げのように思えそうです。シンプルな塩味ですが、豚の旨味がよく引き出されています。グラス一杯の泡盛では到底足りません。
手も口もアブラでテカテカになりながら頬張って完食です。一人客同士の会話もはじまるような皆さんの距離が近い店ですが、焼きてびちを食べるときは、カニを食べるようにみんなモクモクと口に運んでいました。
焼きてびちは沖縄の郷土料理ではなく、『おでん東大』の名物料理です。他では食べられないパリパリ、トロトロの美味しさが気になりましたら、ぜひ那覇へ。
ごちそうさま。
訪問日:2022年6月7日。最新の営業情報はご確認ください。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)