江東区大島。京葉道路と小名木川に挟まれた一帯は、都営地下鉄新宿線がカバーしているとはいえ、あまり派手な地域ではありません。それなのに、なぜか不思議?と、駅の最寄りでもない場所に飲食店がぽつりぽつりと営業しています。どこのお店も流行りすぎず、寂しすぎず、地元の常連さんに支えられて程よいバランスで成り立っているのが興味深い。
駅周辺の酒場と違い、通りすぎる豊富な潜在顧客がいない”道端酒場”は、必然的に常連率が高く、そしてなにより通いたくなる何かをもっていることが多い。今回はそんな酒場を求めて”道端酒場”をめぐります。
今回ご紹介する酒場はこちら「鳥平」です。道端酒場を巡るときは前情報は持たずに自分の感性を信じて、えいやと引き戸に手をかける勇気だけでまわります。次々巡る中で、これぞアスファルトに咲くタンポポだ!というお店を見つけられたときの感動は大きい。
決して、お手洗いに行きたいから適当に飛び込んだわけではありません。(飲兵衛あるあるだけど…笑)
ファサードのテントには晩しゃく酒場・関西やきとりの文字。はて、酒場めぐりを仕事としてきましたが、関西やきとりとは。
ラーメン屋のような赤いカウンターで10数席。かっぷくのいい素敵な大将がひとりで切り盛りされているお店。界隈に酒場はなくぽつりと一軒だけ灯る酒場ながら、席は半分以上がうまり、女性一人の常連さんもいます。
カウンターの色や全体の作りからラーメン屋の居抜きのように誤解されるそうですが、45年続くやきとりの老舗酒場です。
さて、なにをつまみましょう。飲み物はビールにするとして、やきとりを数本焼いてもらい、あとは他のお客さんに合わせていくという方向で。
麻婆豆腐とかナス味噌炒めとか書いているから、ますますラーメン屋に間違えられるのでは(笑)
お通し(200円)とビールが登場。キリンのディスペンサーからでてくるから、てっきり一番搾りかとおもいきや、大将のこだわりでなんとハートランドだそう。おお、確かにハートランド。お通しもオシャレで、ここだけ見ればやきとり屋にも思えませんね。では乾杯。
串をおまかせで正肉など3本焼いてもらいました。とろっとした甘めのタレ、鶏肉は冷凍はせずにその日の分を串打ちして使い切るというこだわりで、こぶりながら満足のいく味です。
ハートランドはあっという間に飲んでしまい、次は瓶ビール(500円)へ。キリンの懐かしいビアタンがいまも現役なのが素敵。トトトっと注いで改めて乾杯。常連さんや店主さんとも打ち解けて、楽しい道端酒場コミュニケーション。
いまのご主人が二代目で今年で46年。野球好きで店内には高校野球の関連グッズがいろいろ。どこを応援しているのかは、酒場なのでまぁ話はせずに。洋食系で修行していた経緯もあって、お店を継いでからは焼き鳥だけでなくメニューバリエーションが次々と増えていると常連さんが教えてくださいました。
じゃあ私が頼んでみます。ちょうど食べたかったし。と話す隣の常連の女性。でてきたのは、立派なガーリックトーストとピザトースト。フランスパンを使う料理なんてどこにもメニューに書いていないのに、言うとちゃんとでてくる。常連さんが無理難題を次々と店主に投げて、希望の料理をだしてくれるようにしていたらこんなになったそうで。
エクストラな料理がおもしろく、やきとりを食べるどころではなく、常連さんたちが次々頼む料理を見るのにもう夢中。「ラーメンだってだしちゃうんだよ、それを見た通行人がラーメン屋と誤解して入ってきたこともあるんだから」と話す別の常連さん。
極めつけはオムライス。人気メニューだそうで、ときにはお酒も飲まずに夕飯を食堂がわりに食べていく常連さんもいるとか。酒場はお酒を飲んでなんぼなので、一杯は飲みましょう(笑)
それにしてもご飯も具が豊富でとても丁寧な作り。道端酒場は地元の人のダイニング的ポジションになっていることが多く、こういうご飯物が充実しているのがポイント。うんうん、久しぶりにオムライス食べた。
新しくなった富士山麓のハイボールをリピートしながら、気がつけば2時間以上。オムライスをつまみにハイボールを飲む夜になるとは。でも、そんなのもいいね。皆さんはご近所だそうですが、そろそろ私は帰らなくては。
関西やきとりとは?について聞き忘れてしまいましたが、普通の焼き鳥に今でも思えています。今度それを聞きにふただびの訪問をしなくてはですね。素敵な時間をありがとうございました。
やはり酒場は常連さんや店主さんとの出会いが最高の肴です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
鳥平
03-3684-3910
東京都江東区大島1-38-9
17:00~23:00(日定休)
予算2,000円