今回ご紹介するお店は、東京下町の定番ドリンク「ボール」の発祥の店と言われている老舗酒場「三河屋」です。戦後の復興を支えた働く男たちの安らぎの空間だった下町の酒場。それぞれお店の個性を競っていた中で、下町は特に焼酎ハイボールという独特なドリンクが店の差別化に繋がる看板商品として独自の進化を歩んでいきました。
いまではインターネットやテレビ番組の酒場紹介などにより存在が知られていますが、20年前はまだまだ地元の人と一部のマニアしか知らない幻のドリンクでした。
その頃を知る私からすれば、宝酒造から発売されたRTD(缶チューハイ)によってコンビニでも買えるようになった現代はまさに下町酒場の第二次大衆化だと思います。
さて余談が長くなりましたが、そんな焼酎ハイボールは元祖と言われるお店がいくつかあります。戦後の混乱期の甲類焼酎をおいしく飲むための店の努力とか、コカ・コーラ社の日本上陸による巷の中小ドリンクメーカーの生き残りをかけた割材開発など、語れば長くなるものですが、それは置いておいて、そんな販売努力によっていくつかの酒場に同時期に色付きの甲類炭酸割が誕生したため、元祖を名乗るお店が複数あるという訳。
ここもその一つ。八広駅から結構歩くのですが、住宅街にあっていつも賑わう地元密着型繁盛店です。
昔からの変わらぬ内装。ここには生きた昭和があります。
いらっしゃい。と迎えられたらすぐに「ボールを」と答えましょう。
こちらの焼酎ハイボールはキリンのジョッキに溢れそうなほどなみなみに入って出てきます。炭酸はドリンクニッポン。
うすはりグラスもよいけど、豪快にどんと出てくるのも良いものです。それでは乾杯!
テレビは夕方の情報番組。女将さんや常連さんはそんなテレビを共通の話題に穏やかに話しています。
焼酎ハイボールの度数が結構高い。飲んでいるとへろへろになりそうなのでトマト割りにシフトを。それでも、やっぱり度数は強い。でもトマトが守ってくれる、そんな気がするだけだけど(笑)
おつまみはなにかが凄いとか特別なものはないけれど、それがよいのです。空間を楽しむのに最低限の顔ぶれはそろっています。
お通しのピーナツのあとは酢だこをつまむ。ゆっくりとしたペースで。お絞りをコースター代わりにしたらそこに軽くジョッキを載せて、ここからがマイペースの酒場時間が始まります。
一杯、二杯と進むとだんだんペースが落ちるけれど、お酒を飲む間のぼーっとした時間がとてつもなく快適に感じてきます。
あぁ、やっぱり酒場っていいな。カウンターっていいな。隣のお父さんも奥のお爺さんもみんな幸せそう。
焼酎ハイボールがしっくり馴染む名酒場、いかがですか。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
三河屋
03-3611-1832
東京都墨田区東向島5-40-6
16:00~20:00
予算1,800円