炭鉱や第二次産業で発展した労働者の街・北九州市。仕事終わりにいっぱい引っ掛ける場所を求めて彼らが集ったお店は酒屋でした。
酒屋の片隅でお酒が飲める角打ちは全国的にありますが、「角打ち」という言葉の発祥はここ北九州と言われています。いまも老舗の角打ちが類を見ない密度で営業中で、酒屋飲みを愛する人にとってはまさに楽園です。
北九州市の中心、小倉駅は駅舎こそきれいになりましたが、少し歩けばまだまだ活気のある歓楽街が広がり、エネルギーあふれるムードが漂います。
今回ご紹介する角打ちはそんな小倉駅に近い「平尾酒店」。ザ・角打ちという風情たっぷり佇まいが人気です。
昔は近所にこんなお酒屋さんはいっぱいあったのに、気がつけば…。幼いころ、お買い物に付き添って酒屋さんで買ってもらうエイヒレが好きでした。
平尾酒店はそんな往時の角打ちの雰囲気そのまま。
角打ちと小売は入り口が別れており、飲む人はカウンターの向こう側へ。店内で売っているお酒をそのまま飲めますので、ビールは4社揃い。
缶ビール、発泡酒、新ジャンルとビールテイストも揃うので軽く缶1本という飲み方も可能。
酎ハイ類も一通り。背の低いタカラ缶酎ハイは割高なのにキライになれない不思議な飲み物。
こんな懐かしの栓抜きも現役です。
角打ち価格表。大瓶370円はさすがの安さ。日本酒は260円、焼酎がいも、麦、コメ、そして田苑、五代は銘柄記載の特別版。それでも210円。氷、水、お湯はサービスなのですから素晴らしい。
おつまみはソーセージ玉ねぎサラダ(200円)、冷奴(一丁140円)、たまごドーフ(100円)、乾物(110円)と数は限られています。あとは缶詰や駄菓子がずらっとあるので一献引っ掛けるには十分な内容。
立派なキリンの栓抜きに誘われ、キリンのクラシックラガーをチョイス。あえて中びんにしてみました。
常連のご隠居さんと談笑しながら、トトトと注いではい乾杯!
小さなL字カウンターと差し込む日差し。楽園とはこれのこと。
ここの冷奴はなぜか美味しい。空間とのマッチが絶妙で、角打ちという空間そのものが特別な薬味のように感じられます。
一人なので半丁70円がいいよとおすすめいただきました。
角打ちって薄暗いところが多いですが、ここはそんなこと微塵もない清々しい空間。ぴしっと飲んでいく大先輩たち、常連さんもお店の方もとても素敵なのです。
せっかくですから麦焼酎をもらいましょう。大分は宇佐の焼酎で、お湯割りでください。
古くとも清潔で現役ばりばりの雰囲気がまたいいじゃないですか。古典的な酒屋さんの佇まいが好き人にはたまらない空間です。小倉駅で途中下車してふらりと飲みに行く価値、あります。
ソトノミは空間を味わうもの。それを改めて感じさせてくれる「平尾酒店」です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/九州旅客鉄道株式会社)
平尾酒店
093-521-3268
福岡県北九州市小倉北区紺屋町6-14
12:00~21:00(日祝定休)