飲み屋巡りって本当に楽しい。知れば知るほど、その奥深さや、街の文化と酒場の雰囲気がリンクしていることに気づき、まだまだ知らない酒場をのぞいてみたくなります。そして、一見だけで終わらせるのではなく、何度も通って常連さんと会話をするようになると、もっともっと楽しくなるのです。
そんな酒場のコミュニケーションや文化を楽しみたいならば、まずは横浜の野毛がおすすめです。個性的で独特な雰囲気のお店がたくさんあるのではしごする楽しさもいっぱいあります。明るい雰囲気のお店が多く女性の一人客がはしごする光景もあたりまえなオープンな雰囲気の街。ぜひ飲み歩いてみてください。
その野毛から、今回ご紹介するお店は「ホッピー仙人」です。
大岡川の川沿いに弧を描くように細長く建つ歴史ある飲食店ビル「都橋商店街」。スナックや立ち飲みなど小さなお店がずらりと並んでいますが、ここにホッピー仙人もあります。
ホッピー仙人という個性的な名前、果たしてどんなお店なのか、気になりますよね。早速飲みに行きましょう。
いつきてもぎゅうぎゅうな店内。もともとはスナックだったお店なので造作はそのまま。カウンターに丸いすという典型的なスナック配置です。椅子だと8人しか座れない小さなお店ですが、壁に沿うように立ち飲みすることもできて、最大15人くらい、それはもう通勤ラッシュのような状態で飲むことができます。
そんなお店のカウンターで看板ドリンクのホッピーを注ぐのは「仙人」と呼ばれるマスター。仙人のいれるホッピーはとにかく美味しい。昨今、チェーン店も含めてどこの飲み屋でも飲めるようになったホッピーですが、仙人のところで飲むそれはまったくの別物。マイルドで程よい旨味、なにより香りがたっているのが素晴らしいのです。
おつまみはとくになく、飲むだけで立ち寄る人が大半。一応お煎餅などは200円で売られていて、自己申告でマスに100円玉二枚いれて駄菓子屋感覚でばりばりと食べましょう。仙人が開店前に普通の小売店で仕入れているのですが、なかなかのチョイスです。
ホッピーはその日の在庫状況で変わりまして、お店に入っていっぱい目を注文するときに、「今日は樽白黒、瓶白黒」などと教えてくれます。樽詰めホッピーは非常に珍しく、やはりここでは樽詰めの生ホッピーから始めるのが基本。
焼酎は甲類の金宮20°と25°を仙人の独特な配合で混ぜているスペシャルなもの。ここにビヤホールのマイスターのように丁寧にホッピーを注いで出来上がり。
よく冷えた専用ジョッキ、クリーミーな泡の美しい生ホッピー登場。それでは乾杯です。
この美味しさで1杯500円は大満足。女性の一杯目は泡の上にラテアートのように絵を書いてくれるんです。何が書かれるかはお店に行ってからのお楽しみということで。
ハーフアンドハーフも可能。私もこうして毎晩酒場に浸っているのでホッピーを飲む機会は人様より多いほうだと思いますが、いまだ仙人以上に美味しいホッピーは飲んだことがないかも。
仙人ご自身は一番好きなホッピーは瓶入りなのだそう。ふむ、極めると原点に帰るというわけですね。奥が深い。
常連さんが多く、お店全体の一体感が強く、隣り合ったらすぐにお話が始まるような空間。酒場コミュニケーションを楽しむ人も多く、お客さん同士でカメラを持ってお出かけする「ホッピー仙人写真部」なんて活動もされています。
野毛の多くのお店は、帰るときに「いってらっしゃい」と見送るのが多いです。街全体で梯子酒をして飲兵衛同士のそのときそのときの会話を楽しむような文化が街全体にありまして、実に飲んでいて楽しい街です。
仙人も「いってらっしゃい、まだ3軒は飲めるね」なんて言って明るくお見送りしてくれます。
さぁ、美味しいホッピーの後は少しご飯でも食べましょうか。梯子先はどこにしようかな。ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
ホッピー仙人
045-242-1731
神奈川県横浜市中区宮川町1-1-214 都橋商店街 2F
19:00~22:00(日曜・仙人指定日)
予算1,500円