JR東神奈川駅からすぐ、京急電鉄の仲木戸駅からも近い場所に、横浜を代表する老舗酒場があります。戦後すぐに酒場として営業を始めたそうですが、商売としては古く家電や雑貨などを扱う商売もされていました。市民酒場の組合にも入っていた横浜酒場の正統派です。
2004年までは昔の建物で営業されていましたが界隈の再開発もあり、現在の駅前複合施設の一階に移転。外観は新しいですが、中に座ってみると老舗酒場特有のほっこりとしたムードに包まれます。
入口の藍色の暖簾にも書かれていますが、ここの定番酒は京都伏見の銘酒「日出盛」を扱う関東では珍しいお店。そしてなにより、ここは豊富な魚がどれも大衆価格なところが魅力。安くて美味しくて雰囲気がいい、これぞ大衆酒場の姿です。
お店はカウンターとテーブル席が少し、団体で使える小さめな座敷もあります。一番はやはりカウンターに座って一人杯を傾けるのが楽しいのですが、今日はテーブル席で。
おつまみは40種類ほどあり、どれも注文したくてたまらない名前ばかり。これでこの価格!?と二度見してしまいます。
お肉系は皆無に等しく、長年の営業で付き合いを深めている横浜の市場の卸しから仕入れる豊富な海鮮で統一されています。この品書きだけで飲めてしまいますね。
カウンター席だと壁から掛かる短冊で今日の献立を組み立てることが出来ますが、テーブル席はこのように別途手元にメニューを持ってきてもらえます。
お酒は日出盛、そしてビールは横浜発祥のビールメーカーがつくる一番搾りです。まずはともあれ、生ビールを飲みながら注文を考えましょう、乾杯!
無料の突き出しはところてん。老舗酒場を愛する人ならば、ここで「ところてん」というところに感動するのでは?
やはり老舗にはところてんがよく似合う。そして、日出盛をきゅっと。至福のひとときが始まります。
ひらめの昆布締めは丁寧な仕事がされていて、こういう酒場でないと食せない贅沢な逸品。昆布締めにすることで、鮃の味がより強まりねっとりとした旨味がお酒を誘います。
誘われついでに頼んだ「桃の滴」。私の愛飲する銘柄で、日出盛と同じ伏見で1791年創業の松本酒造がつくる純米吟醸酒です。米から溶け出すコクと果物のような香りが楽しいバランスのすぐれた銘酒です。おもに洛中の料亭などで愛用されているものですが、こうして東神奈川の酒場で味わえることに感謝しながら、きゅっと一口。あぁ、幸せ。
脂がのっていることで魚好きから愛されている八角(トクビレ)。冬の八角は超高級魚ですが今の時期は比較的市場に出やすいと聞いたことがあります。捌きにくい甲殻類のような魚ですが、さすが老舗の海鮮酒場はさらりと供するから素晴らしい。ねっとりした旨味が広がります。
さっきから肴やお酒を見ているとまるで割烹のような気分ですが、ここは大衆酒場。手に届く価格で揃うので次々頼んでしまいます。そうですねー、もうハモの季節ですか。なかなかの盛りの良さで420円、大好物なので終始にやけっぱなし。
最後は手のひらサイズの巨大な岩牡蠣を。一口で食べられるものではなく何度かに分けてつるりと。、旨味しかなく雑味は一切感じない、のどごしと余韻で残る磯の風味まですべてが素敵。それに追いかけるように日出盛をきゅっと。
チェイサーを飲みながら満足気分でのんびりしていると大女将がご挨拶に来てくださりました。大将のお母様、御年96歳。それでも店に立つというのだから驚きます。根岸家というお店を造り今に至るまでやってきた苦労話などをお聞かせいただき、とても有意義なお話ができて感激しています。
建物は新しくなってもそこで働く人とその店を愛する人が変わらなければ酒場の雰囲気は変わりませんね!歴史があって、ここには酒場文化があって、そしてなにより魚が安くて美味しい。まさに銘店中の銘店です。
一巡目はいっぱいになるけれど、しばらくしたら落ち着くからそれを狙ってくるのがオススメ!
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
根岸家
045-451-0700
神奈川県横浜市神奈川区東神奈川1丁目10-1 ザ・ステーションタワー1F
16:00~23:00(日祝定休)
予算2,000円