都会が砂漠というならば、酒屋はそこに湧き出す癒しのオアシスだ。どんなに街が殺伐としていても、升で角を打てば、そこは一瞬にして心地よい空間になる。なんだ、東京も結構いいじゃないか。仕事帰りにふらりと立ち寄って軽く飲めば気分も軽くなる。自宅と職場の往復に、一瞬の癒やしを角打ちに求めて生きていく。
まぁ、そんな感じで(笑)
会社と家の往復だけではなくて、間にクッションとして外で飲むというのはとても大切なことだと思います。間に挟まることで、職場のストレスをそこに置いてきて、プライベートの楽しい時間に一瞬にして切り替えることができる気がします。
池袋にある角打ち営業をしている「桝本屋酒店」もそんな立ち寄りに使える一軒。池袋の北口にあっても、しっかりと背筋を伸ばして飲む雰囲気になっているのは、ここの強面な大将の醸し出すオーラからかな。
縦長のカウンターはニスが分厚く塗られてテカテカ。その上にトンと置かれたビアタンブラーが渋くてたまりません。
なにを飲む?と聞かれたら、すかさず「清酒」をと。ビールはサッポロラガーもあり、焼酎やウィスキーなども一杯売りもあります。お酒は以前は新潟のお酒でしたが今は埼玉小川町の銘柄。大将自ら飲み歩いて決めた銘柄で自信作とのこと。
池袋と小川町、そういえば東上線で繋がっていますね。
これこれ、蛇の目の利き猪口も好きですが、角打ちにはビアタンで飲む日本酒が男前でカッコイイ。小銭とサキイカを横に揃えて、では乾杯です。
お客さんは皆さんとても渋い方ばかり。池袋北口特有のムードではなくて、下町の渋い酒屋で飲んでいるような気分になります。サービスして頂き過ぎて濁りがこぼれてしまいました(笑)
そういえばお子さんは北海道にいらっしゃるんでしたっけ。そんな話で盛り上がりながら、池袋のオアシスで肩のこりを酒場でほぐす時間が流れていきます。
酒場ブームで賑わう話題の人気店ももちろん楽しいとは思いますが、本当の飲み屋の心地よさってこういう空間にあるんじゃないのかな。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
桝本屋酒店
03-3971-2702
東京都豊島区西池袋1-23-6 桝本ビル
16:00~21:00(土日祝定休)