四ツ谷には、かつて惜しまれつつ閉店し、従業員の手によって復活を遂げた老舗とんかつ店があります。創業はなんと80年前。『とんかつ三金』です。お昼から名店でビール片手に、正統派のとんかつを満喫してきました。今どきの映えるものではない、続いてきた理由がわかる絶品とんかつが楽しめます。
階段の先にある、職人たちが守り抜いた「のれん」

四ツ谷駅から新宿方面へ歩くこと数分。飲食店が並ぶ通り沿い、ビルの2階に『とんかつ三金』はあります。実はこのお店、2010年に一度幕を下ろしています。しかし、長年厨房で腕を振るっていた元料理長を中心とした従業員たちが再結集し、場所を変えて復活させたドラマがあります。大手資本ではなく、現場の職人たちが「のれん」を守ったのです。

2階という立地もあり、ここを目指して来るお客さんばかり。店内は明るく清潔感があり、女性一人でも入りやすい雰囲気です。それでいて、テーブルにはスポーツ新聞が置かれていたりと、古き良き定食屋の風情もしっかり残っています。カウンター席に腰を下ろせば、厨房の活気ある様子が伝わってきます。お店の皆さんが本当に楽しそうに仕事をされていて、料理を待つ間も心地よい時間が流れます。
林SPFポークの甘みとヱビス。正統派とんかつで一献

まずはヱビスビールの中瓶(700円)で乾杯。よく冷えたラガーの苦味が、仕事終わりの体に染み渡ります。カツ丼も人気ですが、今夜は王道の「ロースかつ定食 150g」(2,000円)をお願いしました。

卓上にはソースだけでなく、岩塩やドレッシングなど調味料が豊富に揃っています。自分好みの味で楽しめるのが嬉しいところ。

お待ちかねのロースカツが出来上がりました。

昨今はSNS映えする分厚いカツも話題ですが、こちらは衣が細かく、肉としっかり密着した正統派。80年続いてきた歴史を感じさせる佇まいです。

使用しているのは千葉県の銘柄豚「林SPF」。パン粉はお店オリジナルです。

一口頬張ると、サクッとした軽やかな食感のあとに、豚肉の脂の甘みが口いっぱいに広がります。まずはソースをかけず、岩塩だけで肉の旨味をダイレクトに味わうのがおすすめ。

続いて、特製のソースをたっぷりとかけて。濃厚なソースの風味が加わると、ビールを持つ手が止まりません。

定食のご飯は、新潟県魚沼産のコシヒカリを直送してもらっているそう。ふっくらと炊きあがった白飯は、それだけでご馳走です。
そして、味噌汁がシジミの赤だし。シジミの滋味深い味わいが、揚げ物とアルコールで満たされたお腹を優しく整えてくれます。キャベツ、味噌汁はおかわり自由。お腹いっぱい食べてほしいお店の心意気が伝わってきます。
四ツ谷の街に灯り続ける、温かい食卓
カウンター越しに見える職人さんたちのキビキビとした動き。常連さんが次々と来店し、「いつもの」と注文する光景。一度は消えかけた灯火を、人の想いが繋いだ奇跡のお店です。ここには、流行に左右されない、実直な美味しさと温かいおもてなしがあります。
| 店名 | とんかつ 三金(さんきん) |
| 住所 | 東京都新宿区四谷1丁目8−3 四ツ谷三信ビル 2F |
| 営業時間 | 11時30分~14時30分 17時00分~21時30分 基本無休 |
| 創業 | 1946年 新宿で創業 1956年 四ツ谷店開店 ※新宿本店は閉店 2010年 オーナー引退で一時閉店後、現在の体制で再開 |
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