旅先では思いも寄らない不思議な酒場に出会うことがあります。今回ご紹介する宇部市昭和町にある『もつそば亭』もそのひとつ。韓国料理と地元食材でもてなしてくれる酒場で、店の名物が「もつ鍋・もつそば」です。
離陸前の一杯に
多くの都道府県は中心都市や主要都市に新幹線や在来線の本線が通っていて、よほど遠方でなければJRの利用が便利ですが、山口は不思議なもので、県の代表駅である山口駅や県下3位の宇部市の玄関口である宇部新川駅にやってくる列車は非常に少なく、公共交通が不便な地域です。
ただ、宇部新川は独特で、市中心部からバスで数分の場所に、東京行きの航空機が頻繁に発着する宇部空港があります。公共交通を利用するという視点では、山口市や下関市に行くよりも東京へ行く方が便利と言っても過言ではない街です。
そんな宇部市で、地元の人が贔屓にする空港に近接する韓国料理をメインにした大衆酒場をご紹介します。
店の名は『もつそば亭』。まるで蕎麦か焼きそばを提供する食堂のような店名ですが、17時開店の完全な飲み屋さんです。
空港が近いため、今回私は山口県取材の帰り、航空機の最終便搭乗前に立ち寄りました。そういう利用ができる便利な立地なんです。
店を切り盛りすのは、ベテランの女将さん。朝鮮半島に縁のある方でご本人は日本生まれ。家庭の味を食べてらおうと数十年前に創業し、お手伝いの学生さんとともに店を切り盛りされています。
このお店を紹介してくれたのは、宇部市中央町(県下最大級の飲み屋街)にある『YURIN’S BEER』のマスター。その後、宇部に詳しい方に話を聞く機会がありましたが、ここ『もつそば亭』はやはり宇部の人の間では有名な酒場のようです。店内には、市長や山口出身の首相経験者との記念写真が飾られていました。
品書き
お酒
- 生ビール アサヒスーパードライ:650円
- 瓶ビール アサヒスーパードライ:650円
- マッコリ:550円
- チャミスル:800円
- もつ鍋・ぶた鍋:各1,400円
- 追加そば:300円
- チヂミ:900円
- 馬刺:1,100円
- 豚足:450円
- 地ダコ刺:750円
人気の理由がわかる複雑で深い味のモツ鍋
宇部新川駅と、街を代表する企業UBE株式会社(旧宇部興産)の間に巨大な飲み屋街があり、今回はそこから市営バスで『もつそば亭』に向かいました。事前に飲んでいるとはいえ、知らない街のバスに乗ったあとはやっぱり喉が渇きます。
まずはアサヒスーパードライで乾杯!
ちょうど飲みはじめたタイミングで、ご近所の方が大量の魚介類をもって店にやってきました。どうやら地ダコ刺しやチヂミの具材となる鮮魚を届けに来たようです。。
そんな中にとれたてのイカがあったそうで「これはサービスね」と、直前まで活きていたイカを刺身でだしてくれました。居合わせた常連さんやもつそばを食べに来た若いグループとともにスルスルと。コリコリしていて甘い!と意気投合しました。
店名が『もつそば亭』ですからメインディッシュはもちろんモツ鍋なのですが、それまで、女将さん手作りの大皿料理をいただきます。旨味たっぷりのニラ入り卵焼きです。
こちらは手作りの卵入りポテトサラダです。甘辛いタレの手羽先や魚介系の冷菜もありました。
それに合わせるお酒は、眞露チャミスル。大皿料理の味付けは普通の大衆酒場のそれそのものですが、これから食べるピリ辛のモツ鍋にあわせて辛さを抑えてくれるお酒を選びました。
ボリュームが多いかなと心配しましたが、ほとんどがキャベツ、ニラ、もやしなので、火を通せば一人でも食べられるよと女将さん。
当初は、焼肉や様々なキムチは置かず、ポピュラーな韓国家庭料理を提供しようとはじめたそうです。なかなかヒット商品がなくて困っていた頃に、このモツ鍋を提供したら大ヒットとなったそう。〆にそばをいれるため、やがて店名も『もつそば亭』に変更したそうです。
本場で販売されているえごまなど、本格食材をふんだんに使うのが女将さんのこだわり。輸入価格も高騰する中、簡単に手に入るもので代用できないかと色々試したそうですが、長年使っている高価なものからは変えられなかったとのことです。
目が覚めるほどの美味しさ。辛味と旨味が織りなす、複雑で深みのある味わい。スープは真っ赤に輝いていますが、見た目ほど辛くはありません。しっかりとした甘みと旨味が溶け込んだスープは、箸が止まらない美味しさです。
ごちそうさま
山口宇部空港を利用される際は、ぜひ訪れていただきたいお店です。地元の方でゆったりと盛り上がっている店内は、最近の都市部の酒場とは一線を画す、優しいムードに包まれていました。
一見さんでも、きっと温かく迎えてくれると思います。
店名 | もつそば亭 |
住所 | 山口県宇部市昭和町1-5-6 |
営業時間 | 17:00~23:00(木定休) |