大田市『割烹天草』で味わう石見の旬の味覚：イカとカレイの煮付に舌鼓！

2007年、世界遺産に登録された「石見銀山」観光の玄関口、大田市。この街には老舗の大衆割烹がありません。店名は『割烹天草』。大田市内にある卸売市場で仕入れる名産「大穴子」や「カレイ」といった魚介類を手頃な価格で楽しませてくれます。

山陰には、この地にしかない旅情がある

神話のふるさとであり、日本の原風景が広がる山陰地方は、この地でしか感じられない侘び寂びがあります。日本海ギリギリをコトコトと走る山陰本線に乗って、寄せては返す波打ち際を眺めていると、心が穏やかになるように思いませんか。

島根県第二の都市、出雲市から石見銀山で知られる大田市までは、JR山陰本線の特急で約20分（普通列車で40分）です。雄大な日本海を眺めるダイナックな車窓が続くので、スマートフォンの画面ばかり眺めているのはもったいないです。

人口約3万の大田市の中心駅である「大田市駅」は、いかにも国鉄駅らしい無骨な駅舎です。静かな駅で、1時間に1～2本の列車が出発するため、人影はまばらで、静寂が支配しています。

駅員さんがおり、売店、観光案内所、そして石見銀山までの路線バスの発着もあるため、利便性は十分です。再び旅行客で賑わってほしいと思います。

大田市も全国の地方都市と同様に、JRの駅から市役所や飲食店が集まる街の中心まで1キロほど離れています。バスの本数はそこそこありますが、徒歩でも行けない距離ではありません。街の中心には三瓶川が流れています。

訪問した『割烹天草』は、中心街に構えるかなり大きな飲食店です。大田市市民会館の目の前にあります。この店の外観に一目惚れし、いつかここで飲みたいと思っていた筆者にとって、立派な佇まいに感動しました。

時刻は11時。お昼営業の口開けに訪ねます。

店は外観から分かる通り非常に立派で、右手にL字のカウンター、左に入れ込み座敷があり、宴会もできるようです。訪問した時間は11時でしたが、すでに昼食を楽しむ人で席の半数は埋まっていました。

お昼はほとんどの方がランチ定食を食べていますが、お酒、お料理は夜と変わらない程度で注文可能とのこと。

こうした旅先の老舗居酒屋では、より一層地酒が楽しみなのですが、まずはビールからはじめたい。

キンキンに芯まで冷えたスーパードライを頂きました。それでは乾杯！

年間水げ量約5千トンを誇る大田は島根を代表する漁師町で、小型底引き網、まき網、定置網などで漁が行われ、白イカ、ヒラメ、カレイ、甘鯛、アカムツ（ノドグロ）、鯛、白バイ貝、アワビ、穴子などが大田水産物地方卸売市場に並びます。そこから仕入れ、その日のうちにお客さんに提供するのが『割烹天草』の特徴です。

ホワイトボードに書かれた魚たちはそんな市場を映す鏡のように思えてきます。

名産のイカはお刺身でいただきました。鮮度がよく、コリコリとした食感がたまりません。山陰特有の甘い刺身醤油もあいまってほっぺが落ちそうになります。

「地魚には地元のお酒を」と決めています。ビールを飲み切る前ですが、刺身に誘われて日本酒を注文しました。お酒は隠岐の島の造り酒屋・隠岐酒造がつくる「高正宗佳撰」です。島根で広く飲まれている地元密着の定番酒。辛口のお酒なので、山陰の甘い醤油とのコントラストがあって、これがまたイイ！

もう一品は煮魚にしました。底曳網漁をおこなっいる大田らしい魚種のひとつ「カレイ」をいただきます。あ、子持ちですね！

非常に丁寧な煮付けで、飴色に染まった豆腐も嬉しいです。

よっぽど鮮度が良いのでしょう。味が染み込んでいるのにプリップリです。しっかり蓄えられた脂から出る上品な甘さがたまりません。骨の髄まで味わい尽くす勢いで、綺麗に完食しました。

「イカ」と「カレイ」はともに非常に美味しかったです。出雲から足を延ばした甲斐がありました。名産の大穴子も魅力的ですし、これだけ多くの魚種が揃うお店の「天草海鮮丼」も気になります。

次回、島根県を訪ねるときも、再び山陰本線を途中下車して訪れたくなるようなお店でした。店の雰囲気や店員さんの人柄も、旅先で酒場巡りを楽しむ方にはきっと気に入っていただけると思います。