八丁堀『かく山』路地裏で40年。毎朝豊洲に通うハキハキ女将の鯵フライ

八丁堀『かく山』路地裏で40年。毎朝豊洲に通うハキハキ女将の鯵フライ

2022年6月28日

八丁堀で40余年。毎朝豊洲市場へ仕入れに行く、下町口調のハキハキとした女将さんが切り盛りする路地裏の名酒場『かく山』。近隣の黒帯飲兵衛さんたちが集う、ビジネス街のオアシスです。刺身も揚げ物も美味しいですが、通い慣れた人が必ず頼む熱々のポテトサラダも絶品です。

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母娘で切り盛りする、飲み屋らしい飲み屋

早朝に市場へ行き、昼と夜営業をこなすパワフルな女将さん

八丁堀の『かく山』は路地裏にありながら近隣では名の通った酒場です。それでいて、店はカウンター8席と4人テーブルひとつとかなりコンパクトで、昼食時は行列ができることもあります。

店を切り盛りする女将さんは、お母さんとともに店に立ちます。店を始めてかれこれ40年以上になるそうです。店名はそれ以前からあったもので、物件をゆずりうける際に屋号も引き継いだといいます。小料理屋の佇まいに、一般的な大衆酒場にはない敷居を感じるかもしれませんが、「飲み屋好き」は勇気を出して暖簾をくぐりたい一軒です。

店のこだわりは、毎朝5時起きで起床し、3キロほど離れた豊洲市場へ買い付けに行くことだといいます。長く通っている鮮魚卸から旬の魚介類を調達しているそう。

女将さんは市場での仕入れから戻るとすぐにランチ営業の準備。ランチ営業ののち、中休みを挟んで、夜は16時30分から22時30分まで提灯を灯すという、かなりパワフルな働き方をされています。お店でお話するとわかりますが、まるで市場の仲買人さんのような声量で江戸っ子言葉を使う、とっても元気な方です。

外観

16時30分開店。地元の人や近隣勤めの人以外はまず足を踏み入れない細い路地にあります。鈴らん通りの丁字路から赤い提灯の明かりがみえたら営業中の合図です。

内観

店に入ると、「いらっしゃい!」と、威勢のよい声で女将さんが迎えてくれます。中央区の裏路地らしい使い込んだ建物ですが、隅々まで掃除が行き届いており、気持ちの良い空間です。

16時30分の口開けにあわせて訪ねてくる常連さんに続き、会社員グループなどがやってきて18時には満席(席間引き中の影響もあり)となりました。

品書き

日替わり

刺身は、まぐろ刺:900円、ホウボウうすづくり:850円、しまあじ:900円、真鯛刺:900円、真コチうすづくり:850円、カツオ刺:900円、白イカ刺:900円、白みる貝:950円、赤貝:950円、鯨ベーコン:1,300円。

そのほか、穴子天:850円、はも天:850円、アジフライ1枚:300円、めひかりから揚げ:850円など。やわらかさつま揚げ:850円は人気メニュー。

定番メニュー

常連さんが必ず頼むという名物料理はポテトサラダ:600円。あつあげ:450円、やきとり:650円、カキフライ:850円、納豆オムレツ:650円、水餃子:800円などが用意されています。

カウンターの店ならではの一体感がお酒を美味しくする

キリンクラッシックラガー中瓶

まずはビールから。亀島川の対岸にある新川にはかつてキリンの本社があったことも影響しているのか、この界隈の老舗はキリン率が高いです。こちらのビールは昔ながらの熱処理ビール、キリンクラッシックラガー。瓶ビールのみで樽生はありません。

ビアタンを満たして、それでは乾杯!

まぐろ刺(900円)

豊洲で仕入れる自慢の魚たち。もともと料理人ではなかったそうですが、食材の良さをみれば多くの常連さんがついている理由がわかります。

部位は中トロでしょうか。身のキメが細かくねっとりとした食感です。コクと旨味が口いっぱいに広がります。

ポテトサラダ(600円)

常連さんが店について一番に注文したものがポテトサラダで驚きました。ビールより先に注文されていたので、よっぽどポテトサラダがお好きなのか、はたまた「かく山」のポテトサラダが特別なのか…。答えは後者でした。

なんと、ポテトサラダは注文から15分もかかるのです。なぜかというと、女将さんのこだわりで注文を受けてからじゃがいもを茹で始めるから。茹で上がったらすばやく皮をむき、ハム、人参、キュウリをいれ、控えめのマヨネーズ味を整え、ワシワシと潰していきます。

見た目は普通のポテトサラダなのですが、まだホクホクの状態で供されます。これが実に美味。日本酒を飲んでいた筆者も、一旦ビールに戻り、ジャーマンポテトをビールで合わすように、もりもりといただきました。

アジフライ(300円)と菊正宗辛口

酒場めぐりの中で、好物のアジフライを日本各地で食べていますが、ここのアジフライは五本の指に入る美味しさです。その日の朝仕入れてきた近海物の刺身で食べられる鯵を、その日のうちにフライで提供するのが女将さんのこだわり。

あわせるお酒は、海鮮系の揚げ物と相性バツグンの菊正宗生酛辛口。店のお酒は菊正宗一筋とのこと。

揚げたての衣が、小さく「ジュッ」と音を立てるように、半分にウスターソース、もう半分にキッコーマン醤油をかけます。思わず、「へへっ」と心の声がこぼれてしまいそう。

身が厚くて、ふわふわです。どこにこれだけ水分が詰まっていたのかと驚くほど、ジュワっと汁が滲み出てきます。軽くうなずくのように堪能し、その余韻に菊正宗をおいかけます。あぁ、いいですね。かく山のアジフライは格別です。

八丁堀で魚が食べたくなったら、「かく山」がおすすめです。女将さんの人柄に惹かれて、ついついお銚子が1本増えてしまいました。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名かく山
住所東京都中央区八丁堀2丁目18-7
営業時間11:00~14:00 16:30~22:30(土日祝定休)
開業年1980年頃