京都初の公設市場である京都市中央卸売市場第一市場。1927年(昭和2年)に開設されました。関連棟にはなんと開設当時から続く創業95年になる『割烹マキノ』が今も営業中です。名物は中トロお造り。とっておきの京都朝酒スポットです。
目次
京都の朝食に市場という選択
京都の台所は錦市場というのがガイドブックの常套句ですが、実態としては京都市中央卸売市場が食品流通の要となっています。全国の主要都市に設置されている公設市場のひとつで、京都では1927年(昭和2年)に梅小路の北、千本五条と千本七条にかけての場所に誕生。以来、95年間、旺盛な京都の外食需要、食文化、家庭の食卓を支えてきました。
市場はかつての物流事情からJR山陰本線を挟むような立地にあり、列車でのアクセスが便利な場所にあります。
さて、中央卸売市場というとプロ専門で一般人の立ち入りは規制されているように思いますが、多くの市場では関連事業者が営業するスペースまでの入場を認めており、京都も同様です。関連事業者が集まる関連棟(呼び名は市場ごとに異なる)は、市場で働く人向けの食堂や梱包用品、乾物や精肉などの小売店が集まり、食べ物好きとしては見逃すことのできない施設です。
関連棟は特別な朝酒処
さて、市場の説明が長くなりましたが、ここからが本題。目指すは京都市中央卸売市場第一市場の関連施設。関連11号棟です。
深夜から全速力で稼働する市場。朝6時前後は「せり」が行われる一番忙しい時間帯です。仕事が一段落する朝8時頃になると、関連棟には仕事終わりの食事を楽しむ人の姿が多くなります。お酒を並べて、まるで晩酌のような人の姿も。
関連棟の飲食店はそんな市場関係者のスケジュールで営業するため、早朝に開いて昼頃には店じまいとなります。
時刻は10時頃。兵どもが夢の跡。静まりはじめた市場の食堂は、朝酒を楽しむのには最適な場所です。
『割烹マキノ』外観
目指すお店は割烹マキノ。なんと開場した昭和2年から営業し続けている、市場で最も古い飲食店です。暖簾を守るのは3代目。女将さんを中心に家族で切り盛りされています。
昔、もっと市場がにぎやかだった頃は店名の通り「割烹」として豪勢な料理やお酒を揃え、上り調子の市場の旦那衆をもてなしていたそうです。現在は食堂として営業しています。
内観
外観同様、店内も年季が入っているものの、隅々まで清潔にされています。この温かい雰囲気にどっぷりとはまると、お酒は瓶ビール1本というわけにはいかなくなりそう。女将さんに市場の話を教わりながら、のんびりとしたひとときを過ごしました。
乾杯は「キリンラガー」で
中瓶と大瓶があります。レトロな聖獣ロゴ入りのビアタンにトクトクとラガーを満たしたら、では乾杯。
品書き
お酒
日本酒(菊正宗)、ビール(キリンラガー)中瓶・大瓶。
料理
本まぐろ中トロ定食:1,150円、盛り合せ定食:1,050円、紋甲イカ定食:1,000円、鯖煮定食:750円、朝の定食:750円、うなぎ丼:750円、棒だら単品:800円など。
ずっしり重たい中トロに感激!
本まぐろ中トロ定食:1,150円
専門店を引けを取らない、驚くほど上物の本まぐろ中トロがでてきました。お豆腐、そしてお麩の味噌汁もしっかりとした美味しさです。
これほど上等な中トロを食べる機会はそうないかもしれません。大変に分厚く量もしっかり。
キメが細かくねっとりとした舌触り。じわじわと脂が溶け出して、これが笑ってしまうほど美味しいです。すりおろしたばかりの本わさびをちょんと載せ、これを一口。たまりません。
持ち上げてわかるのですが、一切れにずっしりと重量を感じます。
脂の甘さ、コクに誘われて、思わず日本酒を注文。昔ながらの湯煎でつけてくれた上燗の菊正宗が、そんなマグロの余韻をすっと米の旨味で上書きします。
次回も選びたい京都のとっておき朝ごはん
市場酒、老舗食堂好きにはたまらない一軒。雰囲気だけでなく、味とお値段も期待に応えてくれるものでした。
京都で朝から飲めるお店は個性派揃いです。次回の候補がさらに増えて、ますますお店選びが楽しくなりました。
ごちそうさま。ありがとうございました。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)