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千円札一枚でマグロ刺し、煮込み、ポテトサラダにチュウハイを二杯飲んで40円のお釣りが来る、いわゆるセンベロ酒場の晩杯屋は武蔵小山からはじまりました。闇市の名残が残る路地に数坪でオープンした晩杯屋は、地元の飲兵衛と一部の酒場マニアの間だけのナイショの立ち飲みでした。
友だちと豪遊しても一人2千円に届かない安さと、時間がない時でも立ち食いそば感覚でクイックな利用ができる気軽さがウケて、都内各地に次々とお店をオープン。その各店ともにかわらぬ安さと使いやすさから一躍人気店に。いまでは、酒場マニアでなくとも安く飲みたければ晩杯屋というのが東京の飲兵衛の共通の認識にもなってきています。
そんな晩杯屋がなんと渋谷にオープン。さっそく取材にお伺いしてきました。
場所は渋谷マークシティと国道246号の間のどっさりと酒場が軒を並べるエリア。小箱の建物ながら、上に高く晩杯屋発となる3フロアに別れる多層型立ち飲み店です。これは店員さん足が鍛えられますね(笑)
駅から近く人通りの多い場所、オープン直後でネット情報がないときでもお店は満員。入ってすぐが丸テーブル2つと一人用のカウンターがちょこっと。二階はニの字型のカウンターで、二人客を中心に入れています。三階はグループ用と使い分けているみたい。
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各階にドリ場(ドリンク類を提供する場所)があり、食べ物以外は各階で独立しています。壁にはお馴染みのドリンクが渋谷で一番安いのではないかという価格設定でずらり。
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どうもどうも。一階の厨房を見渡すカウンターに通していただき、まずは乾杯のビールを。最近の新店はキリン一番搾りで揃っています。嬉しい500ジョッキに適正量の泡、晩杯屋のビールは立ち飲みと侮れないきちっとした質の安定した生ビールが楽しめるんです。これで410円はサイズ・質を考えればとてもお得。
それでは、アロマの余韻が絶妙で後味すっきり、湿度の高い季節にぐいっと飲みたい一番搾りで乾杯!
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食べ物を見てみましょう。店舗限定はサザエの壺焼き。いやー、相変わらず攻めてますね。定番料理は各店とも基本的には共通です。ほや酢に生しらす、季節を感じます。赤魚粕漬け焼きは私のお気に入りでホワイトホースのハイボール「ウマハイ」との相性もいい。ボリュームではちくわ磯辺揚げが人気です。
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ドリンク類は、ビールが一番搾りでそれに追従するかたちで一部がキリン商品になっているほかは、ホッピーやバイス、ホイスにハイスキーなどの東京ローカル酎ハイ類が並び、ポッカサッポロのチュートニックに人気継続中の宝ゴールデンなどお馴染みの顔ぶれが並びます。
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今回はイカミミ焼きと生しらすを注文。生しらすの量はちょっと寂しいけれど、150円ならばこんなものでしょう。スーパーのお惣菜すら高く感じる晩杯屋のメニューは、「コスパ」という視点でみればある意味最強なのではないでしょうか。
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サザエの壺焼きはちょっぴり高い、といっても250円なのですが、新店のイチオシ商品なのでご祝儀買い。小さめのものを2個が基本ですが、「大きいのも一個というのも選べるよ」とのことで、そちらをチョイス。握りこぶしサイズの立派なサザエで、生しらすと合わせて気分は江ノ島の海鮮食堂です。
ビニールにごろごろと入った活きたサザエを、注文を受けてから網をかけたガス台で直火で焼き始めます。こういう遊びは店数が増えてもずっと大切にしてほしい。
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一番搾りからウマハイへ変更。スコッチソーダは数あれど、ウマハイというネーミングは立ち飲みにぴったりで大いにハマった飲み物です。相変わらず濃くて緑茶割りみたいな色合い。ホホ、濃いのは良いことです。
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スコッチにはチーズでしょう!ということで、晩杯屋の隠れた名物「チーズカリカリ」を。常連さんからの支持が高いおつまみで、海鮮メインの晩杯屋においていつまでもメニューから消えない安定評判品。チーズを餃子の皮で包んだ状態で販売されているNB品かとおもいきや、なんと晩杯屋にて手作業で作っているのだと聞きます。
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皆さんはどの飲み物が好き?宝のゴールデンに一刻者、富久娘に源氏、男梅やリンゴ酢などのポッカサッポロ系、コダマから博水社まで、多店舗展開をしている酒場とは思えない、各社入り交じった楽しいメニューになっています。
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客層はやはり若い人が多く、すでに晩杯屋人気を知ったうえで飲みに来ている人がほとんど。これからはきっと界隈で飲んでいる地場のお父さんたちにも噂が広まっていくことでしょう。
渋谷は立ち飲みがあまりなかっただけに、激安酒場の晩杯屋はこの街になくてはならないポジションとして育っていくものと思います。
ごちそうさま。