小鳴門橋のたもとで50年続く大衆食堂「うずしお」。二代目夫婦が切り盛りする店で、朝6時から営業。市場で仕入れた地元産の新鮮な魚介類を、地酒やビールを添えて楽しませてくれます。
目次
バスで飲みに行こう!潮風ふきつける食堂へ
都市部の飲食店街を除けば、地方の食堂へは自家用車でのアクセスが圧倒的に便利。だから旅先で車を利用する人が多いことはよくわかりますが、それでは店の楽しみの半分を失ってしまいます。
地元の人たちが利用するローカル列車や路線バスに揺られ、ゆったりと大きな窓から土地の風景を眺め、目的の店に向かうというのは、実はとっても楽しいことです。そうして着いた先で、地元の酒の肴で一杯やれれば、より一層地域の魅力に触れられます。
目指すは、鳴門市の小鳴門橋のたもと、ボートレース(鳴門競艇場)の近くにあるロードサイドの店「うずしお食堂」です。
徳島駅からJR鳴門線、鳴門駅から路線バスに乗り継いで「小鳴門橋バスストップ」にやってきました。ここはかつて地方都市によく見られた、街から離れたバスの転回場兼営業所があり、各方面から路線バスが集まる発着場の役割が残されています。そうしたことから、モータリゼーションが進むエリアでありながらも、まだまだバスでのアクセスは良好です。
そんな大型バス停の向かい側にあるのがうずしお食堂。創業は1970年、きっと昔はバス利用者や乗務員で賑わったのでしょう。
バス停の先は海。潮風がふきつけるような場所。黄色いテントとアルミサッシがいい雰囲気をだしています。店頭に積まれたP箱や清酒通函が飲める証です。
二代目ご夫婦が切り盛りする家庭的な店
会議机にパイプ椅子。板張りの小上がりは座布団が敷かれています。絵に描いたような海辺の食堂の雰囲気ではないでしょうか。
二代目のご夫婦が切り盛りされていて、まだ小さなお子さんたちが店内にも顔をだしています。
朝の瓶ビールは最高です
朝6時から営業開始。早朝の取材です。うどんを目的にしたライダーや、手頃な朝定食を食べに来た学生の姿がみられました。私は魅惑の朝酒タイム。
ビールはアサヒとサッポロから選べるそうで、今日の気分でサッポロ黒ラベルを選びました。それでは乾杯。
ショーケースに並ぶ地魚・地酒
19時までしか営業しないため、一般的な「夜の飲み屋時間」はないはずですが、冷蔵庫には鳴門鯛(鳴門市)や御殿桜(徳島市)などの地酒がはいっています。女将さんによると、ご主人が日本酒好きで揃えているとのこと。もちろん家庭消費用ではなく、売り物の様子。これは、鯛の塩焼きと地酒で一献やらなくてはいけませんね。
鳴門の漁師さんや、地域の市場から仕入れた地元の食材を中心にした献立。皿料理から好きなものを選べます。魚介類は季節で当然かわっていきますが、取材時はメバル、鯛、カレイ、コチ、かつお、アカニシなどが刺身用で準備されていました。刺身は天候の影響もあり、海がシケると提供できなくなってしまうこともあるそうです。
穴子、カワハギ、舌平目(ゲタ)、ホウボウ、スズキ、イワシなど、焼き魚・煮魚・天ぷらも魅力的な顔ぶれです。
じゃこは徳島名物、釜揚げしらす丼(800円)も気になってしまいます。
ベイカやアカニシ貝。小皿は200円程度でお手頃価格。
副菜も美味しい、地元食材を中心にした料理
鳴門のわかめと淡路島の玉ねぎ
地物で煮魚が食べたいと相談し、ご主人のおすすめからメイタガレイの煮付け定食(1,400円・取材時税別表記)をお願いしました。軽くつまみながらまっていてね、と小皿2つ。さすがにホタルイカは日本海産ですが、淡路の玉ねぎと鳴門のわかめ、なんてことない海藻サラダが印象に残る味でした。
カレイの煮付け
潮の音、かもめの鳴き声、朝の陽が降り注ぐ食堂でビールと煮魚。
徳島や鳴門の味付けは、同じ四国内でも他の地域と異なり、ほとんど関西風といっていいでしょう。この店以外でもそう感じました。
ほんのりと甘く、脂の旨味をよく引き出した味。隅々まで身を残さずに食べてしまいたい美味しさです。これは、地酒を1合もらわないと、せっかく飲める公共交通でやってきたのですから。
定食のお味噌汁のわかめもしっかり美味しい。品書きにある「わかめうどん」は、うどん好きの間で「うずしお食堂」の名物とされているようです。
うどんの店、定食の店、どんな利用をするかで感想は様々でしょう。酒場好きにとっては、朝酒の店としてここは最高の一軒です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | うずしお食堂 |
住所 | 徳島県鳴門市撫養町大桑島字濘岩浜48-34 |
営業時間 | 営業時間 6:00~19:00 日曜営業 定休日 不定休 |
開業年 | 1970年 |