阿波池田『とんちゃん』山間部の町でお昼酒、60年続くホルモン焼き

阿波池田『とんちゃん』山間部の町でお昼酒、60年続くホルモン焼き

2021年5月4日

畜産が盛んな三好市の池田には、創業から60年をこえるホルモン焼き店があります。しかも、お昼から営業しており、昼食利用者だけでなく、日中からビール片手にホルモンをつつく人々で賑わいます。四国の狸に化かされたような、不思議で素敵な一軒です。

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四国縦断の休憩地点・池田

四国有数の宿場町として栄えた池田(現在の徳島県三好市)。四国山地の中で吉野川が削った僅かな平地に住居や商店が密集しています。いまも昔もお遍路さんを迎えてきた宿場町であり、中心部には歴史ある旅館も多いです。

かつて、たばこの集積地だったこともあり、往時の町の賑わいを感じさせる立派な中心市街地は旅情も感じられます。

とんちゃん」は中心部、三好市役所のすぐ近くにあるお店。周囲に飲食店はほとんどなく、たったひとつの藍色の暖簾がお昼からお酒好きを誘惑しています。

三好市池田は、今も昔も四国縦断の拠点です。中心にある阿波池田駅は、香川県の丸亀・多度津から高知をつなぐJR土讃線と、徳島をつなぐJR徳島線の接続駅。

大歩危峡の車窓。

この先、高知方面には難所の大歩危小歩危(大歩危峡)があり、鉄道も道路もすり抜けていくことになります。高知平野と讃岐平野の間、四国山地で唯一開けた町といえるでしょう。

駅を抜けると、正面が商店街。町の規模と比較しても、驚くほど立派なアーケード商店街が現存しています。

旅館や郷土料理店、地元名物の三好蕎麦の店などが並び、営業している店はすくないものの歩いて楽しい通りでした。

界隈では珍しい大きな建物がとんちゃん

そうして歩くこと7分ほど。3階建ての大きな紅色の建物がみえてきました。ここが目的の店「とんちゃん」。一階でのみ営業しているものの、店は広く天井は高いです。

学校の教室ほどある空間は、店の奥半分が厨房、カウンターで仕切られた手前側が客席という配置。ガス台が各テーブルにセットされています。ちなみにエアコンはありません。

店を切り盛りするのは、まさに職人といった雰囲気の実直そうな大将を中心に、物腰柔らかな接客のお姉さんやお兄さん。家族商売の店です。

ビールは伊予西条でつくるアサヒスーパードライ

ホルモン焼きにビールは欠かせません。大型のサーバーでキンキンに冷やしたアサヒスーパードライ(473円)をさーっと注いでもらって、それでは乾杯。

シンプルな品書き

A4両面一枚だけのシンプルなメニュー。長年品揃えは変わっていないそうで、常連さんは品書きを確認することなく次々とオーダーを通していました。

ビールは瓶ビールもアサヒスーパードライ(大びん682円)、酎ハイ類(440円)はアサヒの樽ハイ倶楽部で、各種コンクで味をかえていす。

ホルモンなどの肉は12種類。店名の「とんちゃん」の通り、一番人気は豚ホルモンの「とんちゃん」です。でも、イラストは牛の絵なのですね。

盛り合わせはありません。だいたい一人2品くらい頼むとちょうどいいボリューム。

ここはやはり「とんちゃん」と、もうひとつの人気部位「ハラミ」を選びたい。にんにくはサービスで、いるかどうか聞かれます。徳島・高知はともにニンニクの名産地ですし、せっかくなら本場の味を楽しみたいです。

追加したキムチ(165円)は、酸味とコクが強い自家製のもの。箸休めにぴったりでビールも誘ういい味です。

名物のとんちゃんはクセがなく只々美味しい

とんちゃんは予め熱が通されていてるものの、ぷりっぷりの脂がついています。ハラミは切りたてで供されます。

カウンターでひとり焼肉

さあ、楽しい一人焼肉タイム。いろんなテーブルから濛々と煙があがり、すでに店内はもくもく。こちらもまけてはいられません。とはいえ、煙が大きくでないように気をつけて…。

ぼっと火柱があがるのは、常連のお客さんもいっしょ。とんちゃんの脂の塊に引火します。適度に脂をおとしてパリパリにして食べるか、それともジューシーな食感を楽しむか。

平日の昼間から、高知と香川の中間地点の山間部で、贅沢にお昼焼肉。まだ、狸のしわざに若干思えてならないほど、素晴らしく楽しい時間です。

地酒・三芳菊は湯煎で燗をつける

ホルモン焼きの店でありながら、お燗酒専用のお燗鍋に常時火が入っていることに気が付きました。店名の看板にも書かれていた「三芳菊」が味わえます。店から蔵元まではわずか200m。ここで地元のお酒を飲まないのはもったいないのです。

標高1,955m、徳島県最高峰の「剣山」の伏流水で仕込む地酒。甘口のお酒でふくよかな余韻が続きます。燗酒の温度がいいのか、アルコール感は抑えめですいすいと飲めてしまいます。※お酒は適量で。

そうして口の中をお燗酒でリセットしたら、引き続きとんちゃんを焼いていこう。最後まで不思議な気分が続き、楽しいひとときを過ごしました。

飲んでいる間もつぎつぎと地元の人が自宅用でテイクアウトをしていきます。町では有名な一軒なのですね。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名とんちゃん
住所徳島県三好市池田町シンマチ1504-4
営業時間営業時間
11:00~21:00(L.O.20:30)
※ 14:00-16:00は昼休憩
日曜営業
定休日
月曜(祝日の場合は営業)
開業年1959年