鳴門『あそこ食堂』渦潮のあとは50年続く店で鯛やワカメでお昼酒

鳴門『あそこ食堂』渦潮のあとは50年続く店で鯛やワカメでお昼酒

2021年6月13日

昭和43年創業の老舗「あそこ食堂」。鳴門周辺で水揚げされた魚介類を手頃な価格で食べさせてくれます。通しで営業しているため、昼食時を逃した旅行者も安心してお昼酒が楽しめます。

徳島駅から列車で30分。徳島都市圏に含まれる鳴門市ですが、飲食店の雰囲気は徳島市中心街と大きく異なり、鳴門特有の食文化が存在します。

隣接する淡路島や、その先の本州・神戸や明石に向いた四国の玄関口として、独自の文化圏を形成した鳴門は、以前は海峡の街として今よりももっと栄えていたことでしょう。往時の名残は、JR鳴門線・鳴門駅周辺に広がる立派な商業地域と、そこで長く営業を続けてきた飲食店にみることができます。

今回ご紹介する「あそこ食堂」も、鳴門の歴史に浸れる一軒です。

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素通りできない鳴門海峡

鳴門(大毛島)と淡路島の間には、渦潮で知られる鳴門海峡があります。

潮の流れが激しいこの海を船で往来していた時代は過去のこと。1976年に着工した大鳴門橋は1985年に竣工。さらに1998年に明石海峡大橋の完成によって神戸淡路鳴門自動車道が全通し、公共交通の都市間輸送は鳴門市街を経由しない、直行の高速バスに置き換わりました。

ですが、こんなに絶景が広がる鳴門の自然や海峡グルメを素通りするのは実にもったいないです。

写真は鳴門公園・千畳敷 展望台からの眺め。風光明媚な四国にあって、ここからの景色は他に引けを取らない絶景でした。

大鳴門橋は自動車道路下部にある鉄道敷設用のスペースを使った、「渦の道展望室」という海が渦を巻くその直上まで近づける観光施設がありますが、筆者は高所が苦手なのでとてもではありませんが近づけません。

「花よりだんご。渦潮よりお酒」ということで、どんなに絶景でも喉は渇くので「あそこ食堂」に向かいます。鳴門公園からは、鳴門駅・鳴門市中心街方面に向かう路線バスが比較的利用しやすい頻度で発着しています。

路線バスは「あそこ食堂」と目と鼻の先にあるバス停に停まる系統がありますから、鳴門海峡観光とセットで巡るのがおすすめです。

アットホームな昭和食堂

遠くに鳴門のお城「撫養城(むやじょう)」の模擬天守を眺める場所。店の渋い雰囲気といい、旅情に満ちています。

雨の午後2時。暖簾をくぐると、遅めの夕飯を食べる家族連れや、お燗酒を飲むベテランのお父さんが静かな時間を楽しまれています。正面左は小さな小上がり、右手はテーブル席で合計20席ほど。

テレビの音と、ご家族経営のお店の皆さんの会話だけがBGMです。

玄関入ってすぐ。レトロな机の上にずらりと並べられた今日のおかず(150円~)が十種類以上並べられています。長く続く食堂ではよくある方式です。

ここから好きなものを選ぶわけですが、まずは女将さんの案内で席に付き、一息つきます。

食堂飲みっていいな。そうワクワクしながら店の空気に染まりつつ、まずはビールで乾杯!

瓶ビール(中びん550円)のみで、アサヒスーパードライキリンクラシックラガーから選べます。

鳴門の魚が揃い踏み

店内の品書きにあるように鳴門うどんが名物ですが、今日のおかずは街の大衆酒場顔負けの顔ぶれです。

創業から半世紀。地元漁師などがとる魚介類を提供し続けてきた「あそこ食堂」の料理はどれも非常に魅力的です。尾頭付きの鳴門鯛もあり、だいたい500円ほど。

ほかには、タチウオ塩焼きカレイ煮付けカワハギ煮付けガガネ(カサゴ)煮付け鯛刺したこ刺しなど。

食堂飲み好きにとって天国のような場所

鳴門鯛尾頭付き

お昼から鳴門鯛の塩焼きとは、まるでお祝いの席のようです。真鯛のなかでは小ぶりなのかもしれませんが、一人ならばこれで何杯でも飲めてしまいます。※お酒は適量で。

すだちが添えられているのが徳島らしいですね。

温かい料理は選んだあとにお店の人が再加熱してくれます。

身がつまっていてポクポク。ホホ肉や目玉の周辺まで隅々まで食べ続けたい、いい鯛でした。焼き立てにこだわらないならば、これでもう大満足です。

お酒をもらいましょうか。お燗酒はちろりでやってきます。飾らない感じ、お昼酒の背徳感、いろいろ合わさって心がふわふわ暖かい。

うどんの代わりにおでん

評判のうどんでお店こだわりのお出汁を楽しむのもよいのですが、まだ飲みたいのでおでんを選びました。セルフサービスです。

かつお、いりこ、昆布などの香りが漂う出汁には、牛すじねりもの焼き豆腐玉子などが浮かびます。

港町ですからやはり魚肉練り製品のまるてんを掬いました。もうひとつは、鳴門の特産品といえばわかめということで、茎わかめにしました。

北海道なら昆布のおでんですが、さすが鳴門は昆布のかわりにわかめなのですね。鳴門は三陸沿岸に次ぐわかめの一大産地です。

もう少し飲みたいということで、女将さんに焼酎を出してもらいました。いくつか選べますが、どれも九州で一般的な銘柄です。

麦焼酎のおともには、ぶた汁を。なんと1杯100円なのです。ほっとあったまる液体おつまみ。

のんびりとしたひととき。そろそろJR鳴門線の時間が近づいてきたのでお会計を。

すると、女将さんからお土産にと名産品のさつまいも「鳴門金時」をひとつわけてくれました。鳴門の街の人情と土地の味の思い出をつくってくれた「あそこ食堂」でした。

食堂飲みがお好きな方は、ぜひ一度立ち寄られてみてはいかがでしょうか。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名あそこ食堂
住所徳島県鳴門市撫養町南浜字東浜327
営業時間営業時間
11:00〜21:00
日曜営業
定休日
木曜日
開業年1968年