大正期創業、変化が続く高島で親しまれてきた大衆酒場「もりや」。昭和に入り市民酒場組合に加わり、組合が解散したあとも名残りを留めています。地元に暮らす長年通ってきたような紳士淑女が集う、良き雰囲気の酒場です。
食糧難が進行した昭和初期に、安定した外食と飲酒を維持するために横浜で結成された飲食店組合「市民酒場組合」。
戦後も加盟店は増え、約100店舗存在しましたが、組合は2000年代に組合は解散しています。それでも、旧市民酒場組合の加盟店は、今も横浜の老舗酒場を代表する存在で、横浜市内各地でまだまだ複数の店舗が営業中です。
横浜の旺盛な飲酒ニーズを作り出した巨大事業所、三菱横浜造船所が平成を前に閉鎖。跡地はみなとみらいの高層ビル街になりましたが、同地区に隣接する場所には往時の名残りともいえる市民酒場が存在します。そうした歴史の上に、「大衆酒場もりや」はあります。
高島の変化をみてきた市民酒場
JR横浜駅から徒歩10分。最寄りは市営地下鉄の高島町、もしくは京急の戸部駅です。店は交通量の多い東海道に面しています。昔ながらのネオン管の光が営業中のサインです。
着席と同時に飲み始めたい、キンキンに冷えた樽生ビール(550円)。横浜のビール、生麦うまれの樽詰キリンラガーで乾杯!
カウンター、テーブル席に小上がり、二階には宴会用の広間も完備した、個人店としては大きなつくり。経済成長期、造船所などで働く人々が集ったことでしょう。ベテランの先代と大将が厨房を仕切り、女将さんたちが元気よく接客で駆け回っています。駅から離れているものの、常連さんが多く賑わっています。※間隔をあけてそれぞれ小人数で
瓶ビール(中びん)はキリンラガーのほかにアサヒスーパードライも置いています。ハイボールはキリン・ディアジオのホワイトホース、酎ハイ類は350円から、日本酒の定番は大関です。
お通しは日替わりです。ぽくぽくの温かなひじきを頂きます。
まぐろ刺しと河豚、さらに中華まである
お刺身からはじまり、焼き物、揚げ物、中華までなんでも揃う。焼鳥は注文を受けてから串打ちをするもので、それでも1本100円と手頃。つくねは鴨肉を使用しています。
やっぱり顔ぶれは他の市民酒場に似たものを感じます。ふぐ料理を置いているのもそのひとつ。
絶品と評判のまぐろ赤身(750円)もよいですが、ホワイトボードに書かれたその日の魚介もチェックしておきたい。刺身はアジ、トロイワシ、イカ、タコ、いなだなど。こういうご時世でもあしの早いイワシを仕入れているのがいいですね。カキバタ焼きやカキフライにもそそられます。
市場仕入れの新鮮魚介
赤貝刺(700円※)。ピンとたってハリとツヤがある肉厚の赤貝。コリコリとした食感がたまりません。※お店の在庫がなく、通常より1個少ない盛りつけです。
メゴチ天(550円)。
江戸前天麩羅の種の定番、めごち。東京湾や相模湾でも水揚げがある魚ですし、それを市民酒場で食べられるというのは風情があります。クサミなど皆無で上品な甘さが心地よいです。衣はサクというよりは、パリッという具合に仕上げられています。
天ぷら盛り合わせかと思わせるような、肉厚しいたけや人参などが付け合せとして加わります。
中華も洋食も人気
レモンサワー(350円)。少し甘めのシロップ系の味です。
レモンサワーを飲んで、料理も割烹系料理からがらりとかえて、ニラギョウザ(350円)。
お店の手づくりで、もちもち系の皮に包まれた餡は旨味の主張がしっかり。あとひく味です。他には牡蠣グラタンやハムステーキ、串カツなんていったメニュー、和洋折衷さまざまな料理が人気です。食べたいものは、お店の席についてからでも見つけられる、そんなタイプのお店です。
カウンターで常連さんと並んで一人飲みをすれば、気分は浜っ子。横浜の老舗で一献、いかがですか。
ごちそうさま。
市民酒場について
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | もりや酒場 |
静岡 | 神奈川県横浜市西区戸部本町38-9 |
営業時間 | 営業時間 [月~土]/16:00~23:00/[日・祝]/16:00~22:30 定休日 隔週日曜日 |
開業時期 | 大正期 |