南九州『おれんじ食堂』祝、運転再開!八代海の絶景、走る”食堂飲み”

南九州『おれんじ食堂』祝、運転再開!八代海の絶景、走る”食堂飲み”

2020年11月2日

列車で飲むお酒は好きですか?

旅にお酒と列車はセットだという方は多いはず。私もそのひとりです。かつて日本中で食堂車が連結されていて、列車の中で本格的な食事をおつまみにお酒が飲めた時代がありました。いまは食堂車を連結した列車は数えるほどしかありません。

あぁ、憧れの食堂車…

ということで、やってきました、南九州・新八代駅。熊本県八代と鹿児島県薩摩川内を結ぶ「肥薩おれんじ鉄道線」(旧JR鹿児島本線)では、その名も「快速おれんじ食堂」というレストラントレインが運行されています。

今回は「おれんじ食堂」約3時間45分の飲み旅の様子をご紹介します。これも一種の食堂飲みです。

(※コロナ禍以前に取材しました)

肥薩おれんじ鉄道線は、令和2年(2020年)7月豪雨より鉄路が寸断。長期に渡り八代・出水(いずみ)間で運休が続いてきましたが、2020年11月1日、全線で運転を再開。おれんじ食堂も全線運行をはじめました。

列車は3便あり、今回乗車した列車は「2便(スペシャルランチ)」というもの。新八代で九州新幹線と接続し、新幹線に乗り継げる川内(せんだい)駅を目指します。

おれんじ食堂は2013年3月24日から運転をはじめた「元祖レストラントレイン」。この列車の成功によって、いまでは全国で観光向けレストラントレインが運行中です。

列車は2両編成。2両とも食堂車の扱いです。木目調の内装に旅の楽しさを盛り上げてくるデザインは、九州ではお馴染み、工業デザイナーの水戸岡鋭治氏によるもの。

店に並ぶ本格焼酎を要チェック。お酒の棚がこれだけ充実している列車は珍しいです。

海側(西側)の展望を考慮したつくり。どの座席…、いえ、どのテーブルからも八代湾から東シナ海の絶景を眺めることができます。

列車は新八代に続き、八代市の中心街に近い八代駅に停車。球磨川を渡ると、いよいよ沿岸ぎりぎりを走る区間へと入ります。

乗客の皆さんが落ち着いたところで、まずは一杯目。列車でもお店でも、一杯目はビールから。八代にはキリングループのメルシャンの工場がありますし、まずはキリン一番搾りで乾杯!

ビールはナショナルビールがアサヒスーパードライとキリン一番搾り(小びん500円)。水俣でつくるクラフトビール「ソレイユ」と「ケセラセラ」(330ml・800円)が土地の味。焼酎のコーナーが/4ほどしめており500円均一です。

ワインは熊本ワイン、ブレンデッドウイスキーは「HHAE(はえ)」(本坊酒造)など、観光列車らしい品揃えです。

ビールのお供にぴったり、「日奈久ちくわ」。ハモ・グチ・エソ・イトヨリダイ・スケソウタラでつくる、明治時代から続く地元のおつまみです。

食事とセットになったきっぷで利用しています。(お酒などの飲み物は別売)

季節感のある食材を使用しているため、料理は取材時と現在では内容が異なります。料理は全体的にはフレンチのコース仕立てになっています。

列車の車窓というよりは、船旅をしているような眺め。別名不知火海と呼ばれる八代湾の海岸線に沿ってゆっくりと九州本島を南下します。

列車はところどころの駅に停車し、一部の駅では10分とまり、駅構内では列車に合わせて「駅マルシェ」という地元の皆さんによる直売コーナーが開かれています。

(写真の佐敷駅では現在開催されていません)

対向列車とすれ違ったら、再び列車は南へ向けて出発。こころなしか、景色が穏やかでより南国の雰囲気がでてきたように思います。そんな眺めを最後部の展望席で、アサヒスーパードライを飲みながらのんびりと楽しみます。

走る食堂飲みのつもりが、すっかり走る角打ち感覚に。列車は通勤路線でもない限りお酒は飲めるものですが、これだけ風光明媚な車窓と豊富なお酒のラインナップがある環境での「飲み鉄」は貴重な体験です。

不知火海浪漫麦酒の「ソレイユ」はヴァイツェンビールです。薄濁した黄金色、なめらかな泡と苦味を抑えた華やかな味わい。

天草の島々を望む車窓を飲みながら楽しんでいた頃に、列車は水俣駅に到着。

人口2万3千人の水俣市の玄関口。駅はこちらも水戸岡鋭治氏のデザインでリニューアルされており、列車を降りて駅舎を軽く散策するのも楽しいです。

再び動き始めたころ、時刻は12時台。いよいよメインの食事がはじまります。

料理は沿線の飲食店から積み込まれる方式となっています。2便は水俣、出水の飲食店によるもの。

もちろん、お弁当やレトルトではありません。シルバーのカトラリー、白磁などをつかった見た目も楽しい器を使用。

東シナ海でとれた魚介の燻製など、地元食材をつかったオードブル。

あわせるのは、沿線の芋焼酎をロックで。

ヒオウギ貝に海老、いずれも不知火海でとれる地元食材です。

メインディッシュは鹿児島県産黒毛和牛バラ肉のシチュー。温かい料理がしっかり提供されるのはこだわりのポイント。

列車は再び海のぎりぎりに近づいてきました。八代湾の穏やかな海とは一変して、白波が岩肌に打ち付けます。

駅のホームからも海が眺められる展望台が設置された薩摩高城駅に停車。停車時間10分の間に海岸まで散策することもできます。

私はもうすこしおつまみを。駅マルシェがこちらでも開催されており、プラットホームの待合いスペースではさつま揚げやウルメイワシ(250円)を焼いてくれます。

熱々、新鮮なウルメイワシ焼き。これはもっと焼酎が必要ではありませんか。

などと飲んで食べて、景色を眺めて…と楽しんでいたら、あっという間にダイヤ通り3時間45分ほどで終点の川内駅に到着です。

絶景続きの車窓と土地の肴は、お酒が進むこと間違いありません。旅のいい思い出になりました。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/九州旅客鉄道株式会社)

おれんじ食堂 / 肥薩おれんじ鉄道
2便 スペシャルランチ 新八代11時10分発→川内14時56分着
大人:21,000円
小人:14,000円
https://www.hs-orange.com/
八代(新八代)駅~川内駅
おれんじ食堂・旅行商品に関するお問い合わせ
0996-63-6861