ミルウォーキー「メイダーズ レストラン(Mader’s)」 創業は1902年。ドイツ系移民の街を代表するビヤホール。

ミルウォーキー「メイダーズ レストラン(Mader’s)」 創業は1902年。ドイツ系移民の街を代表するビヤホール。

「ミュンヘン、サッポロ、ミルウォーキー、これが世界の三大ビール名産地です。」というキャッチフレーズをご存知でしょうか。日本麦酒(現サッポロビール)が「本場の味・サッポロ」のイメージ浸透のため、1958年に打った広告です。

世界のビールの本場であるドイツのミュンヘンやアメリカ・ミルウォーキーが札幌と同じ北緯45°付近にあることを謳っています。

このキャッチフレーズから興味をもって、実際にミルウォーキーへ行ってきました。アメリカ合衆国北部の州であるウィスコンシン州における最大の都市であり、ミシガン湖に接する自然と農業・工業が調和する街です。

ミルウォーキーは1840年代にドイツ系移民が多くやってきたことから、街の雰囲気はどこかドイツの旧市街に似ています。また、ドイツの主要産業といえばやっぱりビール。アメリカを代表するビール銘柄のひとつ、1855年創業の「ミラー」の基幹工場をはじめ、大小様々なブルワリーが市内に点在しています。まさにビールの街。

 

市内中心部を流れるミルウォーキー川と、整然と立ち並ぶ中層建築物。おとなりシカゴの摩天楼との対比がおもしろいです。

 

そんなミルウォーキー川沿いの一画にあるオールドワールド サード ストリートは、19世紀の建物が多く残り、まるでヨーロッパのダウンタウンのよう。ドイツ系住民が多く暮らすこの界隈は、狭い範囲にいくつものビヤホールがあり、明るいうちから地元客の姿がみられます。

 

オールドワールド サード ストリートでひときわ風格漂う建物。ここが今回ご紹介するビヤホール「メイダーズ レストラン(Mader’s)」です。創業は1902年。ミルウォーキーで最も伝統のあるレストランと言われています。

 

石造りの塔がアイコン的な存在で、中世のお城のようです。

 

店内はカジュアルなカウンターもあるパブと、絨毯敷きのホールにテーブルクロスをセットした大きなテーブルが並ぶ高級レストランのふたつに別れています。カジュアルに楽しみたいので、選んだのはもちろんパブエリア。

11時過ぎの口開けながら、すでに手ぶらで軽装のお父さんたちがカウンターでビールを傾けていました。「どこから来たの?」「日本!珍しい」「ビールを飲むためだけに来たのか」なんていう一期一会の会話を交わしましたが、酒場の常連さんとのコミュニケーションは万国共通ですね。ここも、カウンターはコの字ですし(笑)

 

店内の装飾はプロイセンをモチーフにしたもの、ビールをテーマにしたものが多く、一世紀以上の歴史とともに、その重厚感は非常に素晴らしく、博物館にいるような錯覚すら感じます。

 

ビッグサイズで!とオーダー。銘柄はビール大好きと話すウエイトレスの方のチョイスで、世界最古のビール、創業から1000年以上にもなる銘柄「Weihenstephan」をもらいました。それでは乾杯!

 

ミルウォーキーでビールを飲む。何度も夢見た瞬間に喜びを感じつつ、このビールのことを考えてみます。これ、ミルウォーキー産ではなく、ドイツ・ミュンヘンの銘柄です。むむ、二杯目は地元のビールをお願いしなくては。

 

Spaten Lagerなどドイツの有名銘柄が多いのは、いまも常連さんがドイツ系が中心だからだそう。ファミリーで飲んできた銘柄はそうそう変わらないのだとお昼からほろ酔いのお父さん。

もちろんレイクフロントIPAなど、ミルウォーキーのビールも用意されています。ドラフトだけで14種類。ボトルビールは50銘柄近くあり、皆さんのビール愛を感じます。(メニュー詳細はオフィシャルサイトを御覧ください。)

 

料理は1人だと一品でお腹いっぱいになってしまうほどのボリューム。そこでまた常連さんに習って、GERMAN SAMPLERという、名物料理をワンプレートにまとめたセットをオーダー。ランチタイムはスープとプレッツェル風の硬いパンがついてくるそう。

 

スープは安定のクラムチャウダー。日本のお味噌汁のように、どこのレストランにいっても置いてある大定番です。

 

炭水化物はビールのおつまみにならない…と思っていたのに、このパンが程よい塩気もあって、めちゃくちゃビールと好相性。メインディッシュの前に食べきってしまいそうです。

 

はーい、おまちどうさま!そんな明るいテンションで持ってきてくれました。

左からカツレツのようなウインナーシュニッツェル、奥は牛肉を赤ワインといっしょにマリネしそれをロースト、さらに煮込むというライニッシャーザウアーブラーテン(Rheinischer Sauerbraten)、右にはビーフグーラッシュ。小皿にはドイツの牛肉料理に添える伝統的な赤キャベツのピクルス、そして大量のザワークラウトです。

食べごたえ十分。最初は食べ切れないかもと思っていましたが、これがなかなかどうして、ビールと交互に口へ運んでいるうちに、完食してしまいそう。

 

陶器のマグで供されるビールはウィスコンシン州のビールメーカー・New Glarus Brewing社がつくる農村エール。フルーティーな味わいが心地よく、マグでちびちび飲むのにぴったりです。

 

ミルウォーキーでビールを飲むならばまずはここ!と言われるだけある名店です。観光客はさほど多くなく、地元の方の社交場感があります。フレンドリーなスタッフの皆さんもとても丁寧で楽しいひと時を過ごさせてくれました。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

Mader’s Restaurant
madersrestaurant.com
+1 414-271-3377
1041 N Old World 3rd St, Milwaukee, WI 53203 アメリカ合衆国
11:30~22:00(基本無休)