都内各地に点在する和田屋。原点となった港区のお店は惜しまれながらも閉店してしまいましたが、和田屋の暖簾を受け継いだ酒場はどこも名店ぞろい。昭和ムードを色濃く残す飴色の空間は、本サイトをご覧の方にはきっとたまらない空間のはずです。
JR中央線高円寺駅から徒歩1分。駅北口の飲み屋街の一画でひときわ渋い店構えの酒場が、和田屋高円寺店です。
「そういえば昔あったよね」なんて言われるウイスキー・ロバートブラウンが書かれた白看板が目印。キリンの洋酒参入初期に誕生した富士御殿場蒸溜所第一号ウイスキー「ロバートブラウン」は、昭和50年頃のヒット商品。店の歴史と重なる銘柄です。
店先に並ぶ酒瓶や発泡スチロール函、そしてぼんやり灯る赤ちょうちんは、ある程度酒場に一人で飲みに行けるような方でも、もしかしたらちょっと気が引ける雰囲気かもしれません。ですが、ここは勇気を出して暖簾をくぐってみて。
17時30分の開店と同時に次々と常連さんがやってきて、あっという間に満卓になるほどの賑わい。小さなカウンターにはつっかけサンダルで飲みにいらしているような若い常連さんの姿も。
ここの魅力は、なんといっても、通常の居酒屋の3倍はあるであろうかという膨大な献立です。
メニューが多すぎて、全部を見渡し理解するまで5分は掛かりそう。ということで、まずは悩まず頼める瓶ビール。ロバートブラウンの看板がある通り、ここの和田屋はキリン系が充実しています。瓶ビールは酒場好きにファンが多い銘柄のひとつ、キリンクラシックラガー(大瓶590円)です。
トトトと注いで、では乾杯。
樽生ビールはキリンのレギュラーラガー(RL460円)、大瓶ではサッポロ黒ラベルも用意あり。
ホッピーセットの下にある気になる「コッピーセット」は、甲類焼酎のかわりにコーヒー焼酎を入れたもの。ビターな味が楽しめます。
定番酒の千葉県神崎の仁勇。都内の大衆酒場で定番に置いているのはここくらいではないでしょうか。非常に珍しいです。ウイスキーはもちろんキリン系、ロバートブラウンの系譜にある富士山麓です。
さあ、メニューを見始めましょうか。まずはホワイトボード。200円から300円ですぐでる料理があるのは嬉しいですね。
こちらが店のパワーを最も感じる、鮮魚メニュー。町の比較的コンパクトな酒場で、こんなに刺身が揃っているのは驚くべきこと。しかもリーズナブル、キンメダイ刺身だって480円。
まだまだあります。裏面は焼きもの、炒めものなど。寒ブリ塩焼き、かわはぎひもの、ウニクリームコロッケってなんですか(笑)
刺身で並ぶ”本日の鮮魚”はフライお唐揚げにできるそう。
さらに、ここからは定番メニューの部。焼鳥、やきとん(1本100円から)はじまり、さり気なく煮物カテゴリーにワンタンが紛れ込んでいます。
すぐでる一品、甘えびの沖漬け(250円)。見た目ほど塩が強くなく、甘さひきたつ一品。これはビールもよいですが、本格焼酎がより合いそうです。
三重産 活マハタ刺身(500円)。晩秋からが脂がのって美味しくなると言われています。美味しさ、盛り、そして手頃な値段に、和田屋が賑わう理由がよくわかります。
鰆の塩焼き(390円)。だんだん高円寺で飲んでいることを忘れてしまいそうな豊富な魚介類たち。
しらすおろしお茎わかめ佃煮など、小鉢の品数が多いのもよいですね。箸休めにちびちびとつまみながら、ビールや酎ハイをきゅっと。
和田屋は料理だけでなくお酒も選択肢は100以上あるのですが、その大半は本格焼酎です。日替わりのブレンドが380円と手頃で、毎月一部の銘柄がサービス価格になります。
新入荷やおすすめがあって…
さらに表・裏のメニューで焼酎ミュージアムかのごとく、様々な銘柄がずらりと書かれています。九州地方だけでなく、鳥取や新潟などもあって興味深いです。
本格焼酎にはやっぱりさつま揚げ/つき揚げ(320円)でしょう。どの料理も手頃ながら薬味たっぷりで盛りもお得に感じます。
店内も歴史を感じる雰囲気で、人気店ゆえわちゃわちゃした感じはあります。落ち着いて飲むというよりは魚料理をお手頃価格でたっぷり味わいたい!というときにおすすめしたい酒場です。
お店を出てすぐ横。高架を走るオレンジ色の電車をみて、「あぁ、杉並区だった!」と思い出しました。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
和田屋
Twitter: https://twitter.com/dylanryo90210
03-3336-6889
東京都杉並区高円寺北3-2-19
17:00~25:00(日定休)
予算2,500円