お花茶屋駅前の交差点を中心に、南北に一直線に伸びる緑道があります。これは江戸の農地開拓のために通された葛西用水のあとで、この界隈では「曳舟川」と呼ばれていたそうです。現在は水は流れていないものの曳舟川親水公園として整備され、北は亀有駅付近の亀有一丁目から南は四ツ木まで緑道散策が楽しめます。
そんな曳舟川親水公園沿いに、ぽつんと一軒灯る赤ちょうちんがあります。大衆酒場「伊勢芳」は、この地で長年続く家族経営のお店。
最寄り駅となるお花茶屋や四ツ木、京成立石から徒歩で15分と離れていますが、それでも毎夜満卓になる地元の愛され酒場です。
魚料理が充実。あれもこれも食べたく感じる短冊メニューは、どれだけ見ていても見飽きません。
下町酒場で欠かすことの出来ない魅惑のピースが焼酎ハイボール(380円)。伊勢芳にももちろん美味しい一杯が黄金色に輝きます。氷なし、スライスレモン入り。強炭酸がパチパチ弾けます。では、乾杯!
色付きの酎ハイは、「ハイボール酎ハイ」という表記。白ハイボールはプレーンの酎ハイではなく、フルーツエキス入りの不思議な美味しさ。生ビールはアサヒスーパードライ(640円)、瓶ビールはキリンラガー(RL)、清酒(280円)、ふぐひれ酒(550円)など。
おつまみ、決まりました?まだ決まりません…。あれもこれも食べたいのですが、まずはお刺身盛り合わせからお願いしましょうか。
上さしみ盛り合わせ(970円)。活さざえや、肉厚ぷりぷりのマグロにカンパチの3点。焼酎ハイボールをぐっと飲んだあとに、気持ち多めに醤油に浸したまぐろを頬張る。あぁー、今日も幸せです。
ここで一杯、日本酒を。生駒の酒蔵、上田酒造がつくる嬉長がここの定番。コップにすりきりで注がれたにごり原酒(500円)は、ロックグラスがセットです。甘さは控えめ、爽やかさ感じる優しい酸味と米のコクが魚料理と相性ぴったり。
エビ天ぷら(550円)は割り箸ほどの長さがある立派なもの。花を咲かせたような花揚げの衣も美しく、食感はもちろんサクサク、そしてぷりぷりです。
箸休め焼きネギやもろきゅう。冷やしトマトなどこういった軽いつまみは300円前後から。
そろそろ一周回ってビールに帰ってくる頃でしょう。キリンラガーの大瓶をトトトと注いで、一呼吸おきます。時間は18時ころ、近隣のお父さんたちや家族で訪れる常連さんなどで、奥の宴会部屋も含め賑やかです。
あさりバター焼き(450円)は、西洋料理テイストの味付けでたっぷり登場。バター多めで濃厚、アサリの旨味が互いに味を染み込ませ、全体が”ぽくぽく”に仕上がっています。
親水公園の散歩とセットで、ふらりとくぐりたい老舗暖簾。家族経営のほっこりしたムードに癒やされて大満足です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
伊勢芳
03-3694-9023
東京都葛飾区宝町1-10-13
16:30~23:00(月定休)
予算2,500円