1950年(昭和25年)創業の老舗酒場「十字路」は、その店名の通り、三国街道と大手通が交差する長岡を代表する交差点に隣接するお店です。土日はお昼ごろから通しで営業し、昼食だけでなく早くから酒坏を口へ運ぶご隠居さんの姿があります。
開府400年を迎えた歴史ある街・長岡。東京からは上越新幹線で1時間40分の旅です。穏やかな平野に信濃川が流れ、一面に広がる美しい田園風景が楽しめます。酒造りが盛んな地で、吉乃川、越乃景虎、久保田・朝日山など、都心でもおなじみのお酒が造られています。街には数多くの清酒看板が目につきます。
賑わう駅前は、飲み屋も多く、角打ちから居酒屋、オーセンティックバーとはしご酒ができます。
十字路までは、駅前のメイン通りである大手通を真っ直ぐ進みます。
交差点周辺が繁華街の中心です。かつて越後長岡藩がおかれていた長岡は、新潟市街とはまた違った風情があります。
それでは暖簾をくぐりましょう。大箱ですが、時間によってはカウンター席がすべて埋まるほどの人気店です。
いらっしゃい!と元気に迎えてくれる給仕のお姉さん。カウンターの向かい側は調理場ではなく、ベテランのお姉さんたちが仕切る接客スペースです。料理は後ろの厨房で板前さんたちが用意します。
昭和ならばごくありふれた酒場の造りなのでしょうけれど、今の時代には珍しい飴色の空間が広がります。こんな空間がたまらなく好き。小上がりで鍋を肴に燗酒を注ぎあうお父さんたちが素敵です。
人懐こい感じの可愛らしいお姉さんが、いつの季節もビールが美味しいよねっ!と、生ビール(550円)を持ってきてくれました。アサヒスーパードライとキリン一番搾り、2社の樽生が用意されています。
丁寧に注がれた状態抜群の一杯にうっとり。では乾杯!
瓶ビール(690円)、日本酒は定番の吉乃川が徳利酒(320円)、酎ハイもありますが、ほぼすべての人が日本酒を飲んでいます。さすが酒の国。
長岡や上越など、近隣の銘酒が勢揃い。皆さんのお気に入りはここにありますか?
長岡に来たのだし、やはり土地の酒、吉乃川かな。なんて注文で話していたら、お姉さんが「厳選辛口吉乃川」を飲んでみて!とオススメいただきました。お姉さんもやはりお酒好きのようで、愛飲酒だそう。
そう聞けば、飲まずにはいられません。地元向けでもある定番酒・厳選辛口吉乃川(400円)。なみなみ注がれてにっこり。シャープな味わいにキレのよいあと味。これぞ淡麗辛口という味。燗をつければ、米の甘味がほどよく膨らみ、冷酒、燗酒で異なる表情が楽しめます。
料理は入荷によってかわるので、短冊や黒板をよーくみて。イカに南蛮えび、ひらめ、鯨などの刺身が気になります。しゅうまいや餃子から、岩もずく、ひげにんにくの天ぷらなどバラエティ豊かです。
日本海側でちびりとつまむならば、バイ貝煮(630円)は大定番。甘口で塩分控えめ、たっぷり昆布出汁を効かせたお汁に、ごろごろとたくさんのバイ貝が盛られています。
爪楊枝でくるくるとねじれば、肝までプルンっとでてきます。大人味の苦味が、淡麗辛口の吉乃川をさらに美味しくします。
お刺身盛り合わせ(1,200円)は数人でとりわける量だそうですが、1人で飲んでいる私は、お店の方のお心遣いで、一人前にアレンジしてくれました。
平目の身とえんがわ、ぶり、マグロにマス、ホタテ、南蛮えびと大変豪華な内容です。
包丁の入りがきれいでエッジがあり、盛り付けも美しい、板前さんの丁寧な仕事を感じます。
鮮度、質ともに申し分ないお刺身。甘く磯の爽やかな風味を楽しむホタテや南蛮エビ、ぷりぷりの平目など、来た甲斐があったというもの。
日本酒を続けて飲んでいると、途中で休憩したくなりませんか。お水もよいですが、ビールもチェイサーにいいですよね。※適量飲酒の範囲内で。
お隣さんやお姉さんたちとお酒談義をしつつ、美味しいお酒と肴を楽しむひととき。旅先の酒場のカウンターは、なにものにも代えがたい魅力があります。
「飲みに来てよかったな」、暖簾をくぐって外の冷たい空気に触れたときに、そう感じられるお店です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
十字路
0258-32-0911
新潟県長岡市東坂之上町1-4-8
15:00~23:00(土は14:00~・日は12:00~通し営業・不定休)
予算2,600円