弘前「鳥ふじ」 旅情を肴に一献。縄のれんの先に、津軽の日常がある。

弘前「鳥ふじ」 旅情を肴に一献。縄のれんの先に、津軽の日常がある。

日本有数の大城郭・弘前城を中心に広がる弘前市。明治後期では仙台、盛岡に次ぐ東北3位の規模を誇った立派な街でした。現在は青森県第三位にまで縮小しましたが、それでも国立弘前大学をはじめ、立派な行政施設の数々に往時の風格を感じることができます。

街が立派ということは、つまりは飲み屋街も立派ということ。かつては遊郭が存在していた街は、いまだ歓楽街に特有の水っぽさがあります。

そんな弘前で飲み歩くならば、「鳥ふじ」を覗いてみてはいかがでしょう。地元の飲食店事情に詳しい”業者さん”のお墨付きで、かつ、街のノンベエさんにも評判高い一軒です。

 

弘前へは、秋田と青森の両方向からアクセス可能。奥羽本線の特急つがる号が快適に結んでいるので、両都市間の移動は難しくはありません。

 

弘前駅前から北を眺めた景色。正面が五所川原、左手のほうが弘前の中心街です。この街もまた、地方都市特有の繁華街と駅の間に距離があります。散策へは、駅前からでている周回バスがおすすめです。

 

また、弘前駅前には虹のマートという昔からの市場があり、海産物やお惣菜が売られています。例えば、握り寿司が400円からと庶民的で、ぜひ朝食がてら立ち寄られてみたは。ただし、市場内で購入したものを食事する雰囲気ではありません。食事は列車内でどうぞ。

 

夜の帳が下り、歴史ある街のあちこちで、ぼんやりと提灯が灯ります。目指す鳥ふじも17時にオープン。

開店すぐなのに、すでに縄のれんの向こうから、元気な津軽弁が漏れ聞こえてきます。さすがの人気店。

 

1本90円からの焼鳥、豚モツ串が看板です。お隣のご隠居が食べているコブクロのみそ炒め(550円)が、皿盛りの名物でボリューム満点。

 

今日は串ものにしておこうと注文。大学街だけあって、この街の飲食店は学生のアルバイトを見かけることが多く、注文をとってくれたお兄さんも弘前大学の学生さん。

とても古いようにみえますが、創業は1980年(昭和55年)です。内装は民芸調で味のあるつくり。ここで津軽弁が飛び交うのですから、絵に描いたような光景です。

 

お通しは山芋の千切りにうずらの卵黄のせ。醤油をたっぷりかけるんだよと、早速お隣のご隠居のアドバイス。

 

店先に珍しい氷彩サワーの立て看板があったので、つい惹かれて一杯目。そういえば、弘前はいたるところに氷彩の看板をみますが、サッポロ(氷彩はサッポロビールの樽詰チューハイ)の弘前担当さん、猛烈にがんばったのかしら。

など、考えるのは一瞬だけで、あとは楽しく乾杯!

瓶ビールはアサヒ、キリンあり。生樽は仙台工場のサッポロ黒ラベルが用意されていました。

 

盛り合わせもあるし、おすすめを聞くことも大丈夫。指定しなければ、おすすめの味付けは塩とのこと。もちろんタレも選択可能です。串は鰻用のサイズで、肉そのものは標準的な大きさ。野趣に富んだ味で、日本酒が欲しくなります。

 

お酒は地元弘前の酒蔵、玉田酒造の斬。一升瓶からコップへ豪快に注いでいきます。田酒など青森のお酒も揃っているので、日本酒好きにもおすすめできます。

 

キリっとして余韻にまるみがあり、香りは果物のよう。青森らしいすっきりした味のお酒です。

 

焼鳥はその日串打ちしたものを中心に、ネタケースにずらりと並んでいます。

もうひとつ、串かつも人気で、ネタケースから取り出し、このまま串をパン粉をつけて揚げ始めるので期待が高まるというもの。

テーブル席で落ち着いてグループで飲むのもよいですが、ここは次回もカウンターに座りたいです。調理風景を眺めつつ、周囲の方が醸し出す旅先酒場の雰囲気に浸れます。

歴史ある街、弘前の大衆酒場で一献、いいものです。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

鳥ふじ
0172-36-2697
青森県弘前市親方町1-9
17:00~23:00(日定休)
予算2,000円