溝の口「大衆酒場ただいま」 正統派の酒場を現代の形で。入門編にも最適です。

溝の口「大衆酒場ただいま」 正統派の酒場を現代の形で。入門編にも最適です。

昨今新店が相次ぐ大衆酒場。おなじみのチェーン居酒屋の次は個性をアピールしたお店が登場し、ネオ大衆酒場と呼ばれるお店も増えてきた2010年代。これがさらに次の流れとして、いま「正統派大衆酒場」がブームです。

L字カウンターに煮込みや刺身といった定番料理に瓶ビールや昔ながらの酎ハイを並べる基本形でありつつも、酒場に不慣れな方でも気軽に楽しめるフランクな感じが特長です。

その魅力を探るべく、溝の口で開業1週年を迎えた「大衆酒場ただいま」を取材してきました。なんと毎日11:30から通しで営業している昼酒処です。

 

オープンキッチンで厨房の調理風景がすべてみえるつくり。タイル張りの敷居がカウンターをより華やかに見せています。

 

テーブル席は大衆酒場であっても居心地重心が考えられています。ガード下ならばビールケースに座る非日常感が楽しいですが、正統派ならばちゃんと落ち着いて飲みたいというニーズのほうが高いのは言うまでもありません。

 

お酒は生ビールがサッポロ黒ラベル、瓶ではすっかり酒場の顔として浸透した赤星。老舗の大衆酒場で愛される割り材が豊富に揃い、ビールテイスト飲料のホッピーからバイスやハイサワー、ラムネまで一昔前に流行ったものが一周して今の人に受け入れられているようです。

 

乾杯は生ビール。通常は340円とそれでも安い生ですが、周年のお祝いとしてしばらくは210円で楽しめるとのこと。フレッシュで管理状態のよい樽生がこの価格は素直に嬉しい。では乾杯です。

 

手書きのメニューで季節食材やリーズナブルに提供できるものを並べるのも酒場の魅力です。こちらの「ただいま」は世田谷区を中心に「ひゃくてん」という焼肉屋を数軒展開する会社が運営していますが、メニューはバランス良く魚介類も充実しています。

 

看板料理は串かつ、唐揚げ、そして刺身の3項目。串揚げは5本で980円。400円から500円の価格帯で、数人で食べに来て一人2,000円台という値付けです。

 

築地仕入れの魚を使う刺身盛り合わせ(980円)。銚子の鯵に久慈のたこ、一本釣りの真鯛と丁寧に説明してくれました。見るからに鮮度がいいです。

 

お刺身と合わせるならば、定番の緑すぎるお茶割りで知られる「玉露割り」やガリをたっぷりいれたガリサワー(380円)がおすすめ。お寿司屋のガリをつかったガリサワーが刺身に合わないはずがありません。

 

東急沿線生まれの割り材・ハイサワーがずらりと並ぶ棚。定番だけでなく青りんごや梅まで揃えているのはなかなかのこだわり。ホッピーもプレミアムな赤ホッピーもあり、ボトルキープできるキンミヤと合わせて楽しむ常連さんの姿も。

 

名物の唐揚げを前にして、ここはやっぱり「割るならハイサワー」です。揚げ物には酎ハイ、これは戦後の大衆食堂からの定番ペアでしょう。

 

厨房の一段高いところに揚げ場があり、肉類専門の職人がひたすら揚げ続けています。刺身や野菜を扱う板場と担当を別けているのも注目したい。カリっと仕上がった皮と湧き出る肉汁。揚げたての唐揚げに食レポは不要です。

 

冷やしトマトが大好物なので、最後にデザート感覚でトマトとハイサワー。

カウンターで一人で飲むお父さんの姿、奥では会社帰りの「今夜、どう?」という感じで結成したであろう即席宴会と、近隣に建設が進む高層マンションに暮らしていそうな家族連れなど客層は様々。

今日はあの有名店を目指すぞ!という食べ歩き趣味で向かうお店の真逆の存在と言えそうです。それくらいがちょうどいい、なんとなく立ち寄って「ただいま」といえるお店はいいですよね。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/大衆酒場ただいま)

 

大衆酒場 溝の口 ただいま
050-5592-8577
神奈川県川崎市高津区溝口1-17-7 橋本ビル 1F
11:30~23:00(不定休)
予算2,000円