東京から新幹線こだまで45分。旅と言うには、ちょっぴり近いくらいの熱海。だからこそ、普段の温泉旅行よりも滞在時間を伸ばして、ゆとりを楽しみたい。
バブルで巨大化したホテル群も、いまは適正化されて熱海の街は少しずつですが、穏やかで静かな、昔文豪たちが愛した姿に戻りつつあるようです。
ところで、熱海の歓楽街というと、熱海駅から坂を下ったなだらかな傾斜地帯の「銀座町」です。まさに、そのままずばりな地名ですが、坂の上の大湯(源泉)から傾斜を使って各温泉施設に温泉水を供給していたのは、熱海では有名な話。大正時代に源泉は枯れてしまい、その後はもっぱら、夜の街です。
お昼から飲みたいならば、熱海駅周辺のほうが選択肢は多い。
足湯・手湯や立ち寄り湯を楽しみつつ、散策の間に一献と行くなら「こばやし」を覗いてみてはいかがでしょう。
平和通り商店街の中ほどにあり、お土産物屋が連なります。何度も歩いている道ですが、以前よりも活気があるような。
こばやしは、同じ建物の一階で営業している「磯也ひもの店」の直営で、おもに相模湾の海の幸を食べさせてくれる和食処です。観光地にある定食屋のひとつではありますが、一昔前のバブル時代なつくりではなく、落ち着いてお昼酒を楽しむのにはちょうどいい。
ビールは生も瓶もキリン一番搾り。いまの季節は、全国47都道府県の一番搾りから「静岡に乾杯」がはいっています。イメージカラーは静岡茶から黄金色、アルコール分5.5%でホップ香が強め。
では乾杯!
逸品の料理には、桜えびのかき揚げやさざえつぼ焼きなど。定食で刺身や天ぷらが人気で、海鮮丼はランチ利用の人にとっては目玉となっているようです。
今日はまぐろ中おちがおすすめとのこと。お客さんは14時過ぎのアイドルタイムでも7割りほどの埋まり具合。観光客が多いですが、地元の人がちょっとした海鮮めし屋としても使っているようです。
なんだか、今日はちょっぴり上品です。それでは乾杯!
さて、ここでおすすめは、間違いなく「ひもの」です。生け簀があって鯵やタイ、伊勢海老なんかも活造りで提供してくれますが、なにせ贅沢品。せっかくひもの屋直営なのですから、昼酒はアジの開きやキンメダイの西京焼きくらいがちょうどいい。
肉厚でぷりぷり。脂が乗っているのに、しっかりと旨味がでています。かなり大きく、お腹がぼってりしている立派な鯵に満足。
純米酒あたみは、函南で収穫された酒米「アイチのかおり」を使用し、熱海の湧き水で加水した地域限定の日本酒。製造は富士錦でお馴染みの富士宮市・富士錦酒造です。南部杜氏の蔵なので、味もそれを感じます。
すっきりとした余韻で海鮮とあわせてちょうどいい。お燗酒で少し開かせるとより豊かに感じます。
夕方になると、銀座町の店が暖簾を掲げ始め、温泉街の夜らしい雰囲気になります。有名な餃子店や立ち飲み屋もおもしろい店があるので、いずれ紹介したい。
まずは熱海の昼酒に、ひもので一献傾けましょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
こばやし
0557-81-1686
静岡県熱海市田原本町3-8
11:00~20:00(火は15:00まで・基本無休)
予算2,300円