お酒を愛するものとして、宇都宮に来たならば酒場だけで梯子を登りきるのはもったいない。
ここはカクテルの街、地方都市でありながらバーの数は非常に多く、多少大げさかもしれませんが、街を歩けば大衆飲み屋と同じくらいにバーに出会えるほど。
何軒か飲み歩いたあとにはぜひバーへ。お昼のごちそうは餃子でよいですが、夜の宇都宮ならばカクテルを飲まずして帰るのはもったいない。
宇都宮がカクテルの街としてしられるようになったのは、1998年頃のPR活動にはじまります。それ以前から素敵なオーセンティックバーが多い地域として、バーを愛するものからは宇都宮は特別な存在だったそうです。バーテンダーのコンペティションで宇都宮は全国優勝者を多数輩出しています。
現在、宇都宮カクテル倶楽部に加盟するバーの数は34店舗。その活動をきっかけとなった中心人物、1987年の全国バーテンダーズ技能競技大会で優勝された山野井氏が、現在も現役で腕を振るう店が「バー山野井」です。
県庁の前にまっすぐ伸びる中央通りの本町という立地で、JR宇都宮駅からは路線バスで数分、もしくはタクシーでワンメーターの距離です。それでも、絶対宇都宮からの帰りには、新幹線を遅くしてでも飲みに行くべきお店の一つ。
同ビルの二階には息子さんが経営する「BAR YAMANOI」があります。親子揃ってバーテンダー、同じビルで別々に店を持つなんて、とっても素敵。
7階ということもあり、バックバーからは街のネオンが美しく広がり、きらびやかな洋酒のボトルに光が入り実に幻想的な雰囲気です。バーは、なにより”心で酔う”場所ですから、カウンターに座るだけでとても気持ちがいい。
山野井 有三さんと、奥様で同じくバーテンダーの訓子さんのお二人がカウンターに立たれています。姿勢良く、視線はやわらかく、メリとハリがぴしっと効いた立ち振舞で、そこにはご夫婦の関係ではなくプロの信頼関係がみてとれます。
宇都宮カクテル倶楽部のバーでは、マロニエリーフ、ビッグツリー、かまがわプロムナードと宇都宮をイメージした3種類のカクテルが用意されていますので、それを頼むのも楽しい。
もちろん、王道のカクテルで磨かれた技を存分に味わいたいのは言うまでもなく。
2013年にオープンした現在の店舗は、地元の名物である大谷石を随所に配い、モダンでありながらも重厚感と大谷石ならではのやわらかさが感じられます。なんとコースターも大谷石です。
マティーニはタンカレーで。ヨーロピアンな家具で統一され、広くとられた椅子の配置や、バックバー越しの夜景から、大人の贅沢というものを改めて感じられる世界がここにあります。
それでいて、あまり格式張らずに普段使いできる優しさのようなものもあり、大変素晴らしいひとときを過ごせます。
バーテンダーの憧れの地で、大都市とはまた違ったやわらかな時間を過ごしてみませんか。
ごちそうさま。
【5月13日はカクテルの日】
5月13日は1806年北米でカクテルとは?と、言葉が定義された日であり、「カクテルの日」と言われています。カクテルの日を記念して宇都宮カクテル倶楽部ではイベントが開催されていますので、ご興味がございましたら足を運ばれてみてはいかがでしょう。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビール株式会社)
BAR 山野井
028-638-8456
栃木県宇都宮市江野町2-6 高橋ビル 7F
19:00~3:00(月定休)
予算3,500円